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おじさんの召還

 ある山のふもとに、リザ、リジ、リズ、リゼ、リゾの五人姉妹が住んでいた。リザは本物の魔術師だったが、他の四人も手習い程度に魔法が使えた。

「お姉さま、お客が来ましたよ」

 とリゾがいう。リゾはリザのことだけをお姉さまと呼ぶ。他の三人はお姉さんだ。リゾはリザが怖いのだ。そして、同時に魔術師として敬意を払っていた。リザはリゾの知る限り、唯一、自分より優れているかもしれない人だった。

 そんなリザだが、私生活は研究に没頭している。ただ、研究。ひたすら研究である。教えてくれることも、何やら背徳的なことばかりで、大人しくいうことを聞いていたら、絶対に人生を踏み外してしまうような悪いことばかり教えている。

「いらっしゃいませ」

 リザはお客さまを見た時、なんて野暮ったい人なんだろうと思った。身なりが貧相で、弱弱しい。態度もぎこちなく、お辞儀するのが精一杯の社交辞令のようだった。

 そんなリザだが、お客の次のひとことで、態度が豹変した。

「ここに魔術師がいると聞いてきたのだがね。悪いが、その魔術師と魔法の勝負がしたい」

 リザは速攻で戦闘体制に入り、姉妹を家から遠くに逃げるように命じた。

「あなた、何者?」

「むかし、きみに会って、忘れられた人だよ。覚えていないのかな。すべての赤ん坊に魂を吹きこんでいるのに」

「あなたの命を生贄に捧げる。悪魔アモンよ、この者を食らいつくせ」

 アモンはまちがいなくやってきた。しかし、悪魔アモンの力をもってしても、この敵に傷をつけることはできなかった。

「どうやら、敵と戦うような人生を生きてしまったのだね。悲しいことだ。どんな敵とも仲良くなれる、そんな不思議なからくりを子供の頃に学んだのではなかったのかな。それをもう忘れてしまったのか」

 リザは思った。この人は誰だろう。ひょっとして、リザがまだ十歳になる前に魔法を教えてもらった旅の人たちの一人だろうか。リザの師匠か誰かだろうか。

「子供の頃の夢を叶えてあげるよ。きみの命令を一回だけ聞いてあげる」


 子供の頃、昔話で聞いたことがある。この世界は神さまが造ったもので、神さまは宇宙のあらゆるところに遍在しているのだと。


 リザは自分が生まれる前のまだ胎児だった頃の記憶を思い出していた。

 おぎゃあ、とリザが泣いたのだ。

 その時、神さまがリザをあやしてくれたのだ。

 将来、きみの願いを一回だけ叶えてあげるよ。

 そう神さまはいった。

「ひょっとして、あのおじさんですか」

「そうだ、そのおじさんだよ」

「あだじが、どんな酷いことをいうかもしれないのに、いうことをきいてぐれるのですが」

 目の前の敵はいった。

「世界のすべてを自由にできる。そんなチャンスに、きみはどれだけのことができるかな。その一回のチャンスがきみの人生の器を決めるんだよ」

「わかってます。わだじがこれがらじなければならないことを」

 リザは呪文を詠唱した。

「偽善の魔術師リザが命じる。神よ、チョコレートを腹いっぱい食べさせてください」

「その願いを叶えよう」

 そして、魔術師リザはチョコレートを腹いっぱい食べた。リザの器はチョコレートを机に積み上げる程度のものだった。

 チョコレートを置いて帰っていったのが、神さまなのか、ただのおじさんなのかは、誰にもわからない。

結局、いきおいで書いてしまった。

打倒スレイヤーズ8巻だったけど、やっぱり勝つのは無理みたい。

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