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デート③

先日は投稿できなくてすいません。


照明が落ちるとシアターは静寂を作り出した。本編前のCMが流れるだす。彼女は先程まで食べていたポップコーンには見向きもしていない。たかがCMだが、彼女はそれすらも夢中になっているようだ。


本編が始まり主人公がでてくると彼女はこちらを向いて頭を小さく縦に振っている。声を出さすに「見たことがある!」とアピールしているようだ。これも先程教えた映画館マナーの『静かに見る』を実行しているのだろう。


小さな声で一言二言なら話しても周囲から何も言われないのに……。


池田さんはもう既に映像の虜ようだ。こちらを見る気配すらない。俺は横顔を見ているのに彼女は映画に夢中なのだから少し妬ける。だが、目をキラキラと輝かせてスクリーンを見る彼女に対してこの気持ちは野暮だと察する。俺は少し多めにポップコーンを掴み口に放り込んだ。


クライマックスに差し掛かるとヒロインが主人公のために体を張って、拳銃で撃たれるシーンが流れている。シアター内の何人かは涙を流していることだろう。かくいう彼女もその1人だ。顔を歪ませることなく泣いている姿は申し訳ないが綺麗だ。


「綺麗……」


あまりにも綺麗に泣くものだから俺は思わず小さくつぶやいてしまった。彼女はスクーリーンを見続けている。


聞こえてなくてよかった……。ヒロインの体から血が流れてるシーンで綺麗なんて言ってたら、ただのサイコパスだ。


20年以上やってるアニメでずっと同じヒロイン。死ぬわけがないし、ハッピーエンドで終わることを俺は理解している。もちろんシアター内のほとんどの人もそれを分かった上で涙を流すのだろう。俺も感動はしている。だが映画で泣くまでに至ったことはない。


失恋ですら泣いたことはない。そもそも最後に泣いたのは小学校6年生だ。きっと冷めた性格なのだろう。昔から感情表現は苦手だが、よく言えば冷静なので長所とも言える。


だが、今だけは彼女と同じ温度感で見たかった。涙を流せない自分に悔やみながらポップコーンを口に入れる。


2人用に大きめのサイズを買ったが彼女が全く手をつけないのでかなり余っている。映画館出た後に食べる気にはなれないし、捨てるのももったいない。今のうちに食べてしまおう。



エンドロールが流れ始めるとシアター内の人たちが少しずつ話し始めた。


「面白かったね」


「すごく良かったです」


エンドロールが流れ終わり照明がつくと少しずつ人がシアターから出ていく。俺たちもその流れに乗った。


映画館を出た俺たちは観覧車のあるデパート近くの公園に行き、ベンチに腰をかけた。公園にはいくつか桜の木が立っており、花びらが絨毯を模している。


「本当に面白かったです。また行きたいです。」


「それはデートに? 映画館に?」


「んー、デートにですかね!」


彼女は少し照れ笑いしながら答える。


「映画に夢中だったろ」


俺も笑いながら指摘するが少しだけ本音である。野暮だと片付けた感情が今更になって帰ってきたようだ。


彼女立ち上がり僕の前に立つ。照れくさそうに視線を逸らすと今度は背中を向けて言った。


「映画に夢中だったのは否定しませんけど私は藤井さんのことが好きなんですから本音ですよ」


いや、メッセージでは言われたけど急な発言に動揺を隠せない。俺もすきだ。だけど女子高生だぞ……。いや、でも年齢なんて愛があれば関係ない……。でも俺、実質ニートだし……。いやいや、これからちゃんとすれば……。いやいやいや、そもそも女なんて信用できないし……。


これまでにない程の種類の俺が脳の中で言い争っていて返答はすぐには出てこない。


「私って一途なんですよ?一途の証拠は10年以上藤井さんのことを好きでした」


彼女の"10年間"と言うワードで今日聞きたかったことを思い出す。


「ご、ごめん少し話ずれるんだけど、そういえば池田さんってもしかして俺が6年生の時のペアの子?」


彼女はこちらを振り返ると嬉しそう顔をしている。


「思い出してくれたんですか……?」


「そ、そう! 思い出したんだよ!」


苦笑しながら俺は答える。その表情でその聞かれ方をされると写真を見て思い出したなんて言えない……。


「嬉しいです! それに両思いになれるなんて……」


……そうか。そういえば俺は体調を崩した時に好意を伝えてしまったのだ。つまり彼女は両思いと分かった上で好きであることを伝えてる。これで今更「俺は好きじゃない」なんて言ったらそれこそ思わせぶりな男だ。付き合うしかない。


いや、違う。彼女はとても純粋で綺麗な心を持っている。そんな彼女のことが本当に好きだし付き合えるなら付き合いたいと思っている。これが本心だ。ただ……いや、現状は後から変えればいいか。


「俺も池田さんのことが好きです。付き合ってくれますか?」


彼女の目からは涙がこぼれている。10年も想っていてくれたのに忘れていたことに後ろめたさが残る。


「……はい!」


泣いている彼女を自身への後ろめたさも包み隠すように俺は優しく抱きしめる。


「本当に……本当に嬉しいです。一生一緒に居てください」


若い頃の恋愛の"一生"なんてその時だけの思いだと分かっている。それでもギュッと抱きしめ返す彼女がどれだけ俺のことを想っているかが伝わってくる。嬉しい反面、心臓を針でつつかれた気持ちになった。


毎日投稿!と言ったのですが中々多忙で毎日投稿は厳しいかもしれません。1話ごとに思った以上に時間がかかってます。とはいえ、できる限りします!投稿できない時は申し訳ありません。

日曜には時間があるのでストックを貯めて更新し続けれるよう努力いたします。

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