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越冬

作者: KN

 勉強の息抜きに。

 冬を越す準備が必要だ。もう数日したら辺り一面真っ白に染められる。毎朝、ここを通る子に挨拶をすることが日課であった。しかし、葉が赤くなり、落ちてしまうと、みんなして家に引きこもってしまった。全く軟弱な連中である。連中と比べても特別小さな私が起きているのに、奴らは寝てばかりいる。春になるまで会えないと思うと、少しだけではあるが寂しいとも感じるが。


 暖をとる方法を考えねばならない。ストーブはあるにはあるが使えない粗悪品である。必要のないときによく働き、こちらが望むときには使えないガラクタである。そもそも、私には雪を凌ぐ屋根のある家すらないだが。家を求めて身を切ろうとしても、切る身すら残っていない。寒いのは身体だけではない。


 あれこれと考えているうちに雪が降ってきてしまった。始めはどんぐりほどの粒であった。それから、徐々に大きくなり松ぼっくりまで大きくなってしまった。その大きな白が私を容赦なく凍えさせる。雪を固めて作ったかまくらなるものがあると聞いて、それはすごい、と感心したものだが今はとても信じられない。寒さの原因である雪で暖をとるとはなんて馬鹿げた話である。


 悪態をついても状況は変わらないどころかひどくなる一方である。ほんの少し先すらも見えなくなっている。私が今どこに立っているのかもわからない。背中にのしかかる雪の重さに思わず目を瞑りながら頭を下げる。このまま寝てしまってもよいのではないかと弱気な心が頭をよぎった。あいつらも気持ちよく寝ているのだから私が眠ることを咎められるいわれはないはずである。


 眠りにつく前に最期に景色を拝んでやろうと目を開く。ああ、忘れていたことに気づいた。そうだ! 私には大きな布団があるではないか! 容易に私を包み、暖めてくれる布団が。これで大丈夫だ。安心して私も休憩できる。


 ひとまずは少し眠るとする――。


 雪も溶けて暖かくなったある日、私は久しぶりに外に顔を出した。他の連中ももう元気動いているころだろう。ほら、声が聞こえる。私も負けてはいられない。


 そうだ。まずは、芽を出す。


 そして、花を咲かせよう――。


 

 冬を越す植物の話です。

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