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ざまあとかさせてもらえないみたいです

ざまあとかさせてもらえないみたいです

作者: 大貞ハル
掲載日:2021/03/18

ここはオーティスタリア帝国の帝都オーティスにある地下迷宮アビスの最深部。


魔物が徘徊する危険なダンジョンのそばになぜ帝都があるかと言えば、そもそもはこのダンジョンを攻略するために作られた村から発展して帝国と呼ばれるまでになった、と言う事らしい。ダンジョンに生息する魔物から取れる素材やコア、それに古代の秘宝などが見つかるのだ。そのまま力として利用できる物もあれば、売ってお金になる物もある、それらを用いて築き上げた、と言うわけだ。


この地下迷宮アビスにも普通のダンジョンと同様に階層があり、階層ボスなども存在するが、他の迷宮と大きな違いがあった。それは中央に地獄へと続くのではないかと言われるほど深い縦穴が貫かれているところだ。今のところ、最下層までたどり着くどころか、どこまで続いているか確認できたものすらいないほど深い穴だ。


 つまり私はその縦穴をここまで落ちてきたわけですね…


彼女、アンナ・ミラーズは聖女と言う職業を持ち、それなりの地位にあった、と言うことになっているが、実際には国や教会、勇者パーティに搾取される存在であった。それでもとりあえず困らない生活はさせて貰っていたので特にそこまで不満はなかったのだが、ある日冤罪をかけられた上にこの縦穴に落とされた、と言うことらしい。


1階層、床の厚みを入れて10mとして数百階層、正確に何階層あるかは分かっていない、を一気に落下した。幸い、人間にその加速に耐えられる根性はないので下に着く前に意識を失っていたし、最終的にどうなったのかも分からないが、聖女の必殺技【自動復活】によって身体だけでなく服やアクセサリーに至る全てが元の状態に復元されて目を覚ましたわけである。


 流石の神クオリティー


アレから何年の月日がたっただろうか。地下深く、最下層の脇にあった穴を進んだ先にあった地底湖のほとりで生活していた。この世界の魔物は基本的に食べられないので口にしているのは水だけなのだが、痩せるでもなく普通に暮らしていた。神の加護だと思われる。聖なる光がこの湖のある空洞を一定周期で照らしてくれるので特に困ることもない。


 安心の神クオリティー


もともと職業柄贅沢な暮らしはしていなかったとは言え、ここで出来る事といえば神に祈りを捧げるか湖畔を散歩するくらい。正直かなり退屈だ。一応、上ではアンナのことは重罪人と言うことになっているため熱りを冷ます意味もあっておとなしくしていたが、そろそろ出て行っても大丈夫ではないだろうかと言う考えが浮かんだのだった。


アビスは中央が吹き抜けになっているので、空を飛べるなら直線距離で数kmといったところだと思われるが、実際には壁面を螺旋状に登る坂道だったり、地中、迷宮を抜けたりしなければならないので、地上までは何百kmとかそういう距離になるだろう。ひたすら歩いても数週間から場合によっては数ヶ月、結構な旅が予想される。


とはいえ、そもそも今生きているのが神の奇跡のおかげである。不安に思っても仕方がないと言うことで、住み慣れた湖畔を後にした


湖畔を照らしていたなんちゃって太陽的な丸いものは光量を下げて道案内をするかのようにふわふわと飛び始めた。登り坂になった洞窟風の通路を歩いていくと、縦穴の壁に作られた道に出た。下は暗闇で見えないが思った以上にスリリングだ。道幅は余裕があるが、落ちたら大変だと思うと意味もなく緊張する。もっと上から落ちてきて生きているわけだが。


道案内の光は魔物からは見えないどころか、むしろアンナの姿を隠してくれるらしく、見つかることもなく進むことが出来た。ボスエリアは本来はボスを倒さなければ出入り口が霧のような物で塞がれ通れなくなるはずだが、反対側から来たからと言うのもあるのか普通に通過できた。


途中置かれていた宝箱には水と食料が入っていた。本来はポーションや武器、それに金品が入っているのではないかと首を傾げるが、これも神様の何かなのだろうと解釈することにする。


案内の光はむしろ過保護なくらいなので、食事も睡眠もしっかりととり、ゆっくりと地上を目指した。


最下層を出発して二ヶ月、上から落とされてから3年掛かって聖女は地上へと帰ってきた。何故かダンジョンの上層はおろか地上にも人影はなかった。もしもに備えて水と食料を残しておいて良かったと1人なっとくして帝都を目指す。


帝都を囲む防壁にある正門は硬く閉ざされていたが、脇の通用門は開いていた。正門は巨人でも通れるのではと言うサイズだが、通用門はアンナでも小さいのではないかと思うような可愛らしいサイズだ。敵兵や魔物が突入しにくいようにだろう。


中は見慣れた景色が広がっていたが、どこか寂れている。そしてなにより人がいなかった。正門前の広場を抜けると宿屋や商店が建ち並ぶ。そこを抜けると再び広場があり、その中央には銅像が立っている。見栄えの問題もあるが、正門から真っ直ぐ城に攻め込ませないための障害だ。それを迂回すると城が見える。


広い敷地を持つ貴族の屋敷が散見されるエリアを抜けると城にたどり着く。正面の橋は降りていて中に入れた。正門から入ってここまで来るのに2泊ほどしており、今は3日目の昼前だ。城には衛兵もいなければ侍女たちが歩き回っていたりもしない。すっかり空っぽだ。厨房を見るにかなり前に使われなくなっていたようだった。


荒れ果てた庭園で一休み。手入れをされていないため、庭園として考えると酷いあり様だが、花が咲き乱れ、これはこれで悪くない。風も爽やかだ。白い雲が流れていく。城の庭園は高台になっているので、まるで空中に浮かんでいるかのようだった。


城壁で囲まれた区画の奥へと進むと城内にしては比較的こじんまりとした宮殿が見えてくる。ここだけは何故か綺麗に整えられていた。花壇も芝生も当時のままだ。


「聖女様!!」


メイドが飛び出して来て駆け寄る。


「ただいま帰りました」

「お帰りなさいませ」


2人の、主にメイドの声に気づいた庭師や、他のメイドたちが集まってくる。

みんなそれぞれ歳を取ってはいるが見覚えのある顔だ。

この宮殿は聖女のためにあてがわれた物だった。



「あの、お帰りになった時も思ったのですが、聖女様はもしかしてあの頃のままなのですか?」

「え?」

帰宅後、周りの勧めもあってとりあえず入浴して汚れを落とすことに。何しろ地底湖のほとりでは多少身体を洗ったりもしたが、ここまでの道のりはずっと野外でそれどころではなかったからそれなりに草臥れている。


身体を洗い上げられマッサージまでしてもらい、身に付けた服は当時の物で、誂えたようにピッタリだった。いや、間違いなく誂えたのだが、それは何年も前の話で、10代のアンナに取っては衝撃の事実だった。


「ま、全く成長していない?」

「いえ、そうじゃなくて、もしかしてダンジョンにいらした間はなかった事になっているのではないかと」


 ここでも神様クオリティー


「つまり、肉体的には15のままだと?!」

自分の身体を触って確認する。

「見た目はそうみえます」


メイドたちが皆頷く。



屋敷に残った者たちの話をまとめると、あの日、アンナが行方不明になった直後から疫病やら天変地異が荒れ狂った。一部の、この離宮を含む聖女に味方した者の拠点を除いて。


誰が見てもあからさまなその現象に神の怒りだと大騒ぎになったらしい。


帝都が壊滅して後片付けが済み、生き残った者たちが帝都を離れたのが最近だと言う。

残った彼らは近くに畑を作り家畜を飼って自給自足していたらしい。


「苦労をかけましたね」

「いえ、聖女様が帰ってきてくれた事で全ては報われました」

「また、我々に仕えさせてください」

メイドや執事が口々に喜びを伝え、再び仕えることの許しを乞うのだった。


しばらくしてその屋敷からも人が居なくなり、廃都は砂漠に沈む事になるのだった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 帝都に起こった天変地異や疫病が、実は聖女にふりかかるものだった飢え、病気、怪我、精神摩耗だったもので、帝都の不届き者に神の御加護で移されたのかもって思って、とても面白かったです! けれど、聖…
[気になる点] どんな冤罪をかけられたか、冤罪ははれたか、この冤罪の黒幕は誰だったのか等が書かれていなくて不完全燃焼気味ですね。 でもこれは聖女視点の一人称であるし、他者への恨み憎しみの言葉が無かった…
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