6. 妬かせたいんですか
題名変更しました!
「そう、もっとそうやって……うまいうまい!」
「アクア先生ー、これであってるー?」
「アクアー、俺の方も見ろー」
「ちょっと2人とも落ち着いて」
今日も中庭でエリスとレオンに魔法の指導。
2人とも勉強熱心なのは全然いいんだけれども、私の体力が持たないわ。若いって素晴らしいわね。
「今日も楽しそうですね」
「あ、レヴォル様。2人とも勉強熱心ですごいんですよ」
レヴォルにこの話をしたところ、毎日顔を出してくれるようになった。私の隣に寄り添うように立つのだが、もうその距離感に慣れてきた。慣れって怖い。
「アクア、この後……」
「アクア先生ー! ビビがものすっごく可愛いです!」
「本当ー!? もふもふしてもいいーー!?」
エリスの呼びかけに私はわっと駆け寄る。
レヴォルが何か言いかけてた気がするけれど、まあいいか。芝生の上に寝転んで日向ぼっこをするビビを眺めてもふもふする。
あ、これすっごい癒し。もしこの先辛いことがあったらビビにもふもふすーはーさせて頂こう。
「あの、アクア……」
「おーい、この前の虫撃退魔法はどうやってやるんだー?」
「その件はもう蒸し返すなって言ったでしょう」
とぼけて「俺はそんなこと聞いてないなあ」とか言うレオンにギャーギャー反論していると。
ぐいっと手首を掴まれて、強制的に私はレオンから引き剥がされた。割と強い力に振り向くとレヴォルが不機嫌そうにこちらを凝視していた。
「アクア、お話が」
「は、はい」
いまいち感情の読み取れない表情に私は内心汗だらだらになりそうになりながら頷いた。
「俺を妬かせたいんですか」
「え?」
一歩前を歩いていたレヴォルは振り返らずにその場で立ち止まってそう呟いた。その声はゲームでよく聞いていた声に似ていた。
異性と分け隔てなく接するヒロインに向けて彼は切ないような、怒ったようなそんな声でヒロインに迫るのだ。
一瞬、どきりとしたのはただの気のせいよ。この人に恋してしまったら、ゲーム通りになってしまう。
そんなことはない、と言おうと思ったがなんだか逆効果な気がして私はそのセリフを飲み込む。
「教え子が、あまりにも可愛かったものですから」
エリスやレオンとの会話を優先したことに怒っていることはなんとなく分かっている。でもそれはあくまでも師弟関係のようなものだから。
「……妬いてるんですか? こんな私に?」
レヴォルはゆっくり振り返る。それから口角を上げ、笑みを湛える。
「そうですよ」
「でも私とレヴォル様は友達ですよ。それって、十分特別だと思いません?」
「君は……憎たらしいくらいに、俺の心を乱すんですね」
ふわりと笑った私にレヴォルはため息まじりにそう言う。素で言っただけだったが、レヴォルの表情から不機嫌さは消えていた。
「そういえば、結局お話って何ですか?」
ふと思い出して私はレヴォルに尋ねた。するとレヴォルは「そうでした、それを伝えようと思っていたんですよ」と前置きする。
「2週間後、魔法試験を行います。俺達講師陣は、試験監督を務めるのですが……どのように試験を行うか説明しておきたいと思いまして」
「魔法……試験?」
魔法試験、と何度も心の中で復唱する。そして、あっと声を上げた。
ゲームの第2のイベント、魔法試験。
授業をこなしていくと魔法試験が定期的に行われる。点数次第で貰えるアイテムや経験値が変わってくるゲームを進める上で大切なイベント。
しかし一回目の試験だけは強制的に追試となってしまう。追試となってしまったヒロインは攻略キャラに勉強を教わるはずだが……
このままいくとレオンルートかな。エリスはいつも頑張って授業を受けているのに、なんだか可哀想だわ……
「アクア?」
「え、あ、はい」
「……聞いてなかったでしょう」
「…………はい」
ごめんなさい、と謝るとレヴォルは「指導もほどほどに休んでくださいね」と気遣う。
それから、
「じゃあ先ほども言いましたが、今から2人きりで、試験内容を考えましょうか」
とニッコリ底知れない笑みを浮かべた。
「え、そんなこと言ってたんですか、絶対言ってませんよね」
「さあ、どうでしょう」
ぱたぱたとレヴォルの前に回り込む私にレヴォルはくすくすと楽しそうに笑いながら歩いていく。
そして、初めての試験内容を2人で考えるだけでも大変なのに、レヴォルは「アクアともっといたいので」とか言いながら思考の妨害をした。おかげで全く手につかなかった。
仮にも講師、なんですけど……ね。