第九話
……私たちは装甲車に乗って帝国支配下地域まで来た。
「ここで一旦止めよっか。帝国領近いし」
そう言って装甲車をとめる。
「そうですね……帝国は警戒が厳しいですし」
とエリが言う。
私たちは車から外に出る。
以前降っていた雪は溶けてなくなっていた。
「ルシフェルはここで装甲車を守っててくれないかな? いざって時に足が無いと怖いし」
「そうですね……隠密行動は私もあまり得意では無いですし……良いですよ」
「ありがとう。じゃエリ、行こっか」
「了解です。ルシフェルさん、頑張ってください」
「はい、エリ様もお気をつけて」
私とエリは地肌の見えてる地面を歩き始めた。
「エリ、敵は居る?」
「11時方向、3000先に敵歩兵3。恐らく巡回中かと」
「ここで発砲音はちょっとまずいかな……迂回しよっか」
「そうですね」
私たちは遠回りになってしまうが安全を考慮して迂回する。
「3時方向にスナイパー、数1!周りに他の敵は居ません」
スナイパーか……バレそうだしここでやっとくか。
私は地面に伏せ、バイポットを立て、カラドボルグのスコープを覗く。
距離は1200か……
引き金を引く。
「エネミーダウン……っと」
敵の頭に20ミリ炸裂徹甲弾がヒットし、首から先が消し飛ぶ。
「うっ……えげつないなぁ」
「私の観測手してればこんなの日常茶飯事よ」
「慣れ……ますかね?」
「慣れるでしょ……さ、行きましょ」
私はバイポットを折り畳み、立ち上がって歩き始める。
「了解……」
にしても観測手が居るだけで楽だなぁ。
私はライフルのボルトを引くと大きめな空薬莢が飛び出して地面に落ち、鈍い金属音が鳴る。
使った分の炸裂徹甲弾を補充し、ボルトを戻す。
装弾数が3発しか無いのでこまめに装弾しないと苦い目を見る……私は学んだ。
「距離500に巡回中の敵歩兵2、ここから道が狭いので回避は難しいかと」
「了解……」
私は再び地面に伏せ、ライフルを構える。
まず一人目に狙いを定めて……胴体に着弾。
身体が綺麗に真っ二つになり、茶色い地面が真紅に染まり、臓器が飛び散る。
2人目が腰を抜かす。
頭に狙いを定めて、吹き飛ばす。
2人目の兵士の頭が吹き飛び、首から血が吹き出す。
「……エネミーダウン。エリ、大丈夫」
「大丈夫……です」
(兵士としてかなり覚悟はしてだけど……ここまでグロテスクだとは思わなかった。早く……慣れないと)
「まぁホントはあなたの反応が人として正しいと思うけど……それを許さないから戦争って残酷よね」
私の髪が風でなびいた。
次話は明後日に
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バイポット
二本の脚を持つ支持装置。銃を安定させるのに使う。