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chapter 2 − recollection − 大学2年 7月10日

 ――― 7月10日


 またとんでもないことが起こってしまった。

 いったい何でこんなことになってしまったんだ。


 今日もまた学校に行けず家にこもってたんだ。何をするわけでもなくテレビの前に座り込んでボーっと画面を眺めてた。


 今日も亜美来るのかな


 のんきにそんなこと考えてた。


 夕方6時過ぎ

 いつもならもう来てもいい頃に玄関のチャイムが鳴った。


 やっぱり来たか


 憂鬱な思いに動く気にもなれずに

「開いてるよー」

誰が来たのか確認もせずに答えた。だいたい今の僕の家に来るのなんて亜美しかいなかったから。

 ドアの開く音がして足音がこちらへ近づいてきた。振り返りもせずにテレビを見つめてた。真後ろで足音が止まったかと思った次の瞬間、両手で目隠しされたんだ。


 なにやってんだよ亜美のやつ・・・


 冷め切った思いを抑えることができなかった。そんな突然のじゃれ合いにも応える気がせず

「何かいいことでもあったの?」

軽くかわそうとすると、僕の顔を覆い隠してる手に痛みを伴うほどの力が加わったんだ。

「不用心だねー、裕矢くん」

 寒気が走った。


 亜美じゃない!?


 慌てて手を振り払い振り返ったそこには由紀さんが立ってたんだ。

「な、なんで?どうして由紀さんが・・・えっ?」

 僕の家の僕の部屋の僕の目の前に由紀さんが立っている、この状況が把握できずに後退りして彼女を見上げるしかなかった。そんな僕の姿を見てほくそ笑んでた。

 彼女はあの日のことを聞きに来たらしい。

 そのことについて根掘り葉掘り聞かれた。そんな執拗なまでの質問の責めに、ただただ答えるしかなかった。

 僕はありのままに話した。

 僕が悪くて龍ちゃんには何の罪もないこと。

「じゃあリュウにその気はないのね?」

 僕が悪い

「裕矢くんの一方的な片思いなのね?」

 僕が悪い

「人の彼氏に・・・」

 僕が悪い?

 責め立てられてるみたいな気がしてならなかった。

「なに考えてるんだか・・・」

 いやとゆうほどの嫌味の応酬に耐えながらも、彼女の台詞にこの想いが叶わぬものなのだと思い知らされた。

「・・・亜美さんがかわいそう」


 なんでこいつにここまで言われなきゃならないんだ?


 彼女がだんだん憎らしく思えてきた。


 こいつは僕の恋敵じゃないか!


 思わず口走ってしまったんだ。

「僕は龍ちゃんが好きだよ!それが叶わぬ想いだってのも分かってるさ、もう君には迷惑かけないから安心しなよ、だからもう何も言うことなんかない!君の見たものが全てだ、だから謝るつもりもない!僕は亜美を愛さなきゃならないんだ、もう亜美に変なこと吹き込むのはやめてくれ!!」

 彼女はしばらく僕の勢いに圧倒されて言葉を失ってた。でも

「・・・そう、別にいいけど」

すぐに彼女の表情はもとに戻った。

「それで亜美さん幸せなのかしらね」

いや、さらに嫌な笑みで見つめてきた。

「私だったら耐えられないなー」

ニターっとほくそ笑み

「自分の彼氏の愛が偽物なあげくにホモで・・・」

意味あり気に言葉を止めた。


  ホ・・モ・・・


 その一言に理性が飛んだ。

「ホモでなんだよ!言ってみろよ!!」

 彼女の胸倉を掴み怒鳴りつけてしまった。その時だった。玄関の開く音と共にバタバタと誰かが走り寄って来る音が聞こえた。慌てて手を離し振り返ると


  亜・・美・・・


そこにいたのは亜美だった。亜美は僕と由紀さんが二人でこの部屋にいるのを見て愕然としていた。頭に血が上って言葉が出せない僕を見つめる亜美は今にも泣き出しそうだった。

「・・・どうして・・・どうしてなの、」

そして大きく首を横に振りながら物凄い勢いで出て行ってしまったんだ。


  な、なんだ、どうしたんだ?


 いきなりの出来事にわけが分からなかった。

 確かに僕と由紀さんは二人きりでこの部屋にいた。でも僕と由紀さんが疑いの対象になるような関係じゃないってことぐらい分かってたはずだ。


  なのになぜ!?


 亜美の表情は浮気現場を目撃してしまった時に浮かべるそれそのものだったんだ。


  なに勘違いしてんだよ!!


「亜美ー待てよ!!」

 彼女を追い掛けようと立ち上がろうとした瞬間

「!?」

由紀さんに腕を掴み止められた。

「なんだよ!」

振り払い睨みつけた。

「教えてあげるわ、さっきの続き」

 さっきの続き?今それどころじゃないだろ

亜美を追いかけ玄関へ走った。転がる靴に足を捻じ込んだ。

「ねー待ってったらぁー」

 後ろから大声で呼び止めてきた。

「私だったらやだなー」

 うるさい

「自分の彼氏がホーモーでぇー」

 うるさい!

「よりにもよって昔の彼氏のことが好きだなーんーてー」

 うるさ・・い・・・


 えっ?

 なに?

 今なんて言ったんだ?

 昔の彼氏?

 まっまさか!!


「ど、どうゆうことだよ!!」

 耳を疑った。咄嗟に振り返り睨み付けた。

「だーかーらー、昔リュウと亜美さんが付き合ってたってことよ」

冷ややかな、不敵な笑みを浮かべてた。

「・・・う・・う・・そだ・・嘘だ・・・」


 だいたいなんで彼女がそんなこと知ってんだよ!!


「嘘じゃないわよ」

 きっぱりと言い切られた。


  信じられるか!!


 彼女を尻目に部屋を飛び出した。



 亜美の姿はどこにも見当たらなかった。


  嘘だ、そんなことは嘘だ!

  由紀さんの仕返しだ!


 自分に言い聞かせる心の片隅でいつも感じていた不安が蘇ってきた。


  前からおかしい節はあったよな・・・

 

 思い当たることの多さに募る疑念が廻り廻って止まらなくなった。


  いったいどこ行っちゃったんだよ亜美・・・


 彼女の姿はどこにも見つからなかったんだ。家にもいない。電話にも出ない。


  まさか龍ちゃんの所に・・・


 気まずかったことなど忘れて龍ちゃんにも電話をかけてみた。でも留守電になってしまった。やっぱり避けられてるんだろう・・・

 どうすることもできずに家に戻った。そこに由紀さんの姿はなくテーブルの上に置手紙があった。

「さっき言ったことはみんな本当のことよ。嘘だと思うなら龍に直接聞いてごらん。まぁ無理だと思うけどね。裕矢くんが正直に話してくれたお礼にこれはサービス。龍の部屋にあるアルバム見てみなよ。そうすれば分かるからさ。まぁそっちの方が無理か(笑)二人で仲良さ気に抱き合ってたわよ。は・だ・か・で。 由紀より」

 握り潰し投げ捨てた。


  嘘だ!!

  信じるもんか!!


 もしそれが本当だとしたら今までずっと二人に騙され続けてきたことになるじゃないか。


  僕は信じない


 亜美に直接確かめるしかない。

 もう一度亜美の家に行ってみよう。



 

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