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chapter 2 − recollection − 大学2年 7/3龍二

 ――― 忘れもしない7月3日、とんでもない事件が起きた。


 その日の昼、学校も休みだった俺は家で一人昼食をとっていた。その時、亜美から電話がかかってきたんだ。

 久々の亜美からの電話、そして由紀のいないタイミングに部屋で亜美と電話ができる嬉しさ、そしてもどかしさと狂おしさの中話を聞いていた。

「最近ね、祐矢がおかしいのよ、」

 裕矢のことで悩んでいた。

「前みたいに優しくないし・・・」

 ため息ばかりついていた。

「いつも考え事してるし・・・」

 彼女は終始暗かった。

「一緒にいても一緒じゃないみたいな・・・」


 何やってやがんだ!?裕矢のやつ


「何か聞いてない?」


 俺が辛い想いを我慢してるってのに、昔の彼氏に相談しなきゃならなくなるまで悩ませやがって!!傷ついた亜美を支えてやれてないじゃないか!!


 彼女に対する想いが再燃してしまった。


  そんなやつとは別れちまえ!!


 危うく口に出しそうになった。だが必死で飲み込んだ。「そんなこと今言ったところで逆効果だ」祐矢のことが好きで相談してきた亜美に対して「俺が亜美を好きだ」からって理由で「別れろ」って理屈は通らない。裕矢に亜美への愛情の度合いを確かめてからじゃないと、「俺が守ってやるから」とゆう流れには繋がらない。それこそただのひとりよがりになってしまう。

 その怒りを飲み込んだまま電話を終えた。

 そして怒りが収まらず電話で裕矢を呼び出したんだ。

 いつもだったら俺の方から直接会いに行くのだが、亜美との愛の巣である裕矢の家に出向く気にはとてもなれなかった。それでも裕矢に直接会って確かめたかったんだ。ごまかそうとしているなら顔を見ればすぐに分かるからだ。


 まさかそれが裏目に出るなんて・・・


 呼び出してから一時間もしないうちに裕矢はやってきた。

 息を切らせやってきた彼はかなり急いできたように見えた。

「龍ちゃんどうしたの?」

 どことなく嬉しそうに微笑む彼に「全く分かってないな」苛立ちを感じつつ目の前に座らせ聞いたんだ。

「お前、最近亜美と上手くいってんのか?」

「えっ・・・」

 言葉に詰まり目を逸らし表情を強張らせたのを見逃しはしなかった。


 思った通りか

 二人は上手く行ってない


 理由は何にせよ原因が裕矢の方にあることだけは確かだった。

「お前まさかあのこと気にしてんじゃねぇだろうな」

 攻撃の手は緩めなかった。

「傷ついたのは亜美の方なんだぞ!」

 繰り出す責めの手に裕矢はうろたえながらも

「な、なんで龍ちゃんがそんなこと聞くの?」

反撃してきた。彼の言うことも一理あった。

 そして俯いたまま小刻みに頭を揺らし下唇を突き出し不満気な表情で黙ってしまった。そんな彼の態度に動揺しながらも

「なんでって亜美がお前のこと心配してたからだよ、最近変だってな」

言い放ったんだ。その言葉を聞いた裕矢は

「・・・亜美・・・が・・・」

なぜか放心状態になってしまった。


 こんな奴に亜美を任せておけない!


 そんな裕矢を見て苛立ちが頂点に達してしまった俺は

「おい、どうなんだよ!」

肩に手を掛け揺さぶり答えを迫ったんだ。


 お前なんかより俺の方が亜美を愛してる!!


 想いの全てを込めて最後の確信に迫った。


「お前亜美のこと愛してんのか!?」


 愛している俺が、愛を与えるべき男に迫る、互いの利潤が一瞬にして緊張を呼んだ。

 裕矢の動きが止まる。瞳を見開き俯く裕矢、それをただ黙ってじっと見つめる俺、たった一瞬の膠着状態、その中で鼓動に感じる血潮がやけにざわつきを伝えてきた。

「・・・ぼ、僕は・・・・僕は・・」

 ゆっくりと顔を上げる裕矢、今にも泣き出しそうな瞳で俺を見つめてきた。そして静かに首を横に振った次の瞬間、彼の肩に乗せていた手がいきなり払い除けられた。


  えっ??


 疑問も飲み込めないほどの勢いで押し倒され頭を床に叩き付けられた。一瞬意識が遠退いた。ぼやける視界の中、裕矢の顔がやけに近くに感じたと思った瞬間、

「ん・・・・んん〜!」

声を上げようと開けた口が塞がれた。裕矢の唇と舌だった。押し倒されキスされたんだ。あまりに一瞬の出来事だった。理解不能な裕矢の行動に頭は完全にパニックを起こしていた。

「ばっばか、な、なにしてんだお前、」

 慌てて跳ね除け唇を拭い睨み付ける俺に、息を切らし切なげに見つめ返してくる祐矢

「僕は・・・」

その台詞がダメ押しした。

「僕は龍ちゃんが好きなんだよ!」

―― ガチャ、

 何か物音がした。二人同時にその物音の方に目をやった。


 玄関!?


 瞬時に思考が戻った。


 ゆ、由紀!!


 玄関に呆然と立ち尽くす由紀の姿があったんだ。

「由紀!!」

 その場で茫然自失している裕矢を睨みつけ彼女を追いかけ部屋を出た。玄関にはスーパーのビニール袋が転がっていた。今日の夕飯の食材とビールだった。


 辺りを見渡すもそこに由紀の姿はなかった。

 いつからそこにいたのか、どこからどこまで見られていたのか定かではなかった。だが最後の瞬間、その異様な光景を目の当たりにしたからこそ彼女は逃げるように出て行ってしまったんだ。


 それからしばらく彼女を探しまくったが見つからず諦めて家へと戻った。

 そこに裕矢の姿はなく先ほどの状況が嘘のように整然としていた。まるで何もなかったかのようだった。


 いったいなんだったんだ

 どうゆうことだ?

 祐矢が俺のこと好きだって??

 冗談じゃない!

 いったい何考えてやがんだ

 なんで俺なんだ?

 本気なのか?

 だったら亜美はどうなる

 亜美は裕矢を心底愛してるんだ

 それを差し置いて俺を好き?

 冗談もいいかげんにしろ!!

 だいたい俺は男だぞ

 どう考えたって変だろそんなの


 わけが分からなかった。動揺しながらも由紀に電話をかけまくった。電話にも出なかった。

 裕矢に告白され唇まで奪われた。それをよりにもよって由紀に見られた。


 俺は亜美が好き

 亜美は裕矢が好き

 裕矢は俺が好き〜??


 もう完全にパニックだった。

 いてもたってもいられず由紀の家まで足を運んだ。


 由紀頼む、早く帰ってきてくれ!

 でもなんて説明すればいいんだ?


 由紀がどう受け止めてしまったのかさえも分からなかった。


 裕矢は本気なのか?

 冗談であんなことできるやつじゃない

 あいつの目は本気だった

 いったいどうすりゃいいんだ〜


 結局由紀はつかまらなかった。それから連絡すら取れない状態が数日間続いたんだ。友人の家に泊めてもらっていたらしい。


 裕矢嘘だろ

 嘘だって言ってくれよ

 お前は俺の親友だろ

 なっそうだよな?

 そうだって言ってくれよ!


 その間裕矢は学校を休み続けた。

 俺も俺で問いただす勇気が出ずに電話すらかけられなかったんだ。


 いったいどうすればいいんだよ





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