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chapter 2 − recollection − 大学2年 6/16龍二

 ――― あの事件以来、由紀が俺と亜美の仲を再び疑い始めたようだった。

「リュウこの頃変!なんかそっけないよ、」

 亜美が犯されたあの日の俺の尋常ならぬ態度、そして亜美に取った行動が不満だったのだろう。

「亜美さんを心配するのは分かるけど、亜美さんには裕矢くんいるんだしさ、」

「学校で大変なことになってんだよ、俺があいつら守ってやらなくて誰が守ってやれるってんだよ」

 亜美を想えば想うほど由紀に辛くあたってしまう、それでもどうにも止まらなかったんだ。

「・・・私なんかどうでもいいんだ・・・」

「そんなこと言ってないだろ、なんでそうなるんだよ、」


 亜美さんのことが好きなんでしょ?


 口に出さないまでも明らかに由紀の目は物語っていた。

 ふくれる彼女をなだめる自分も、その存在も、二人一緒にいる時さえも鬱陶しくてならなかった。


 亜美は大丈夫だろうか

 裕矢はしっかり支えてやれてるのか


 心の隅から隅まで、いや体中が亜美のことでいっぱいだった。

 学校では三人常に一緒だった。二人を守るとゆう名目のもとついて回っていたから。でも一歩学校を離れればそこは裕矢の領域、俺に入る余地などあるはずもなかった。

 苛立ちは日々募る一方で、その中由紀の存在が邪魔に感じ始めていたあの日事件は起こった。

 学校から帰るといつものように由紀が来ているらしく玄関に靴が並んでいた。

「ただいまー」

 常に抜けない気だるい思いを胸に抱えた気の抜けた挨拶を送った。でも返事はなかった。不思議に思いつつも部屋を見ると、そこにはしゃがみ込んで俯いている由紀の姿があった。目も合わせてこない彼女を尻目に部屋へ入り上着をハンガーにかけながら

「いるなら返事ぐらいしろよな」

ムッとして言うと

「リュウ・・・教えて・・・」

沈んだ口調で言われた。「何なんだよ」そう思いつつ

「ん?」

聞き返すと間髪入れずに返された。

「亜美さんと付き合ってたでしょ?」

「なっ、なに言ってんだお前、」

 睨みつけられた。

 心底焦った。

「お願い本当のこと言って」

 じっと見つめてくるその眼差しから思わず視線を逸らしてしまった。

「ば、ばかなこと言ってんじゃねーよ、んなことあるわけねーだろ、」

 まずいと思いつつも、彼女にそこまで思い込ませる裏付けが分からなかった。

「本当に?」

「本当だよ、」

「じゃあこれはなに?」

 後ろから差し出した物は、俺のアルバムだった。

「あ、」

 言葉を失った。

 そこには亜美と付き合っていた頃の思い出が沢山詰まっていたんだ。プリクラから半分裸体で映っているものまで二人の仲を否定できない全てが詰まっていたんだ。そんなもの由紀に見られたらひとたまりもないのは重々承知だった。だからこそベッドの床板の裏側にガムテープで貼り付けて隠していたんだ。昔の彼女の写真を処分しなかったのは、想い出の一つとして取って置きたかったから。じゃあどうしてわざわざここまで持ってきたのか、それはやっぱり未練からだったのかもしれない。


「やっぱり〜・・・」

 否定する間もなくその場に泣き崩れてしまった。


 まっじ〜・・・


 もうため息しか出てこなかった。


 その後が大変だった。

 ひたすら泣きじゃくる由紀は、まるで話を聞こうとはしなかった。泣き伏す彼女をなだめるのに必死だった。その間何を言ったのかさえ思い出せない。ゆうに2時間以上は同じ状態だったと思う。

「だから昔の話だろ〜、」

「でも付き合ってたんじゃない!」

「もう関係ないじゃんか、」

「嘘つかれた!」

「だからそれはゴメンって言ってんじゃん、」

「どうして嘘ついたの?」

「だから〜亜美が裕矢のこと気に入って仲取り持ってくれって言われたんだよ、俺たちが付き合ってたなんて言えるわけねぇだろ、」

「私にまで嘘ついてた理由ってなに?」

「だから何度も言ってんじゃん、お前に裕矢紹介した時点で、」

「それ聞いた!もういい!そんなの言い訳じゃん!!」

「・・・だから・・・ゴメンって、」

 

  疲れた・・・


「今でも好きなんじゃないの?」

 

  ず、図星だよ


 一瞬の間があいた。


  や、やばい


 焦る気持ちを必死で抑えつつ

「んなわけねーだろ、だいたいあいつらの仲取り持ったの俺だぜ、」

答えた自分の言葉にハッと気付かされた。


 そうなんだよ、仲取り持ったの俺じゃねぇか

 今さらどんな面して好きだなんて言えるってんだ


 それは当り前のことだった。分かっていたことだった。認めたくなかっただけなんだ。言葉に出して初めて自分の立場を痛感した。胸の中に後悔とゆう名の重石が伸し掛かってきた。

「・・・それもそうよねぇ・・・」

 そんな俺の言葉を聞いて安心したのか一人で勝手に納得していた。やっと落ち着きを取り戻したみたいだった。


 嫌だな・・・

 嫉妬深い女ってのは


 相手に愛されていればこその悩みなのかもしれないが、少なくともその時の俺にとって由紀の嫉妬はありがたいものではなかった。だってどうしようもないジレンマに襲われ嫉妬に駆られていたのはこの俺の方だったんだから。


  ハァ〜・・・


 心の中、深いため息をついた。嫉妬深い彼女に対して、好きな女をどうにもできない苛立ち、そして諦め、様々な想いが入り乱れて深く落ち込んだ。

 そんな俺の思いを知る由もない由紀が呟いた。

「じゃあ裕矢くんも知らないんだぁ・・・」


 亜美と付き合ってる本人が知るわけねぇだろーが


「知るわけねーだろ、」

 その時チラッと目に映った由紀の表情が一瞬別人のように見えた。口元だけ微かにはにかんだように見えた。背筋に寒気を覚えたんだ。


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