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chapter 2 − recollection − 大学2年 5/16龍二

 ――― 俺は警察の事情聴取に呼ばれた11日以外は変わらず学校に顔を出していた。

 理由はただ一つ、杉本の自殺の理由が校内でどう広まるかが気になったからだ。

 

 警察は動くだろう

 俺と裕矢以外のやつらにも尋問して廻る


 そうなれば真っ先に尋問を受けた俺と、裕矢の話した内容が漏れないとも限らない。亜美が犯された事実が校内に広まる可能性がある。それを噂の広まりとともに確認して歩いたんだ。

 幸いなことにそのことに関してはプライバシーの問題もあるんだろう、全く伝わっていなかった。


 問題は裕矢だ


 彼が保身のために誰に言うとも限らない。

 彼は傷ついて外に出られない亜美を気遣い自宅で療養させていた。学校にも顔を出していなかったんだ。


 このままだと二人の関係がみんなにバレる

 そうなれば亜美にも疑念が向けられかねない


 亜美のことだ、祐矢が不利な立場に立たされれば自分の身を挺してでも彼を守るに違いなかった。


  裕矢を矢面に立たせてでも亜美を守ってやる


 亜美のいる裕矢の家に行くのは正直辛かった。それでも「彼女を守る最良の道を示してこそ愛の証」そう思い重たい脚を運んだんだ。

 裕矢を外のコンビニに連れ出した。そして亜美がされたことは校内に広まっていないことを告げた。


  裕矢は本当に亜美を愛してるのか?


 自分の方が愛している自信があった。


  保身に走るんじゃないのか?


 必死に抑えてきたもう一人の自分がまた顔を出したんだ。


  試してやる・・・


「亜美のこと話せば俺らの疑いは晴れる・・・どうする?」

 この二択のどちらを取るかでふるいにかけてやろうと思った。

「なに言ってんだよ!!・・・そんなことできるわけないじゃないか、」

 彼の目は真剣だった。


  保身に走ればよかったのに・・・


 もう一人の自分が語りかけた。


 そして亜美を学校を復帰させるように言い

「俺らが犠牲になるんだ」

「・・・分かったよ」

確約を取ったんだ。


 俺は知っていた。その時のサークルのメンバーの動向を。

 杉本は俺が想像していた以上に人気があった。ぶっきらぼうな印象が逆に好感度を上げていたようだ。特に後輩の女の子たちの一部は泣き出す始末。話題はそのことで持ちきり、そんな渦中に俺の登場はまさにいいカモだったわけだ。杉本の死の原因が裕矢にあること。そしてその内容は、二人の間に過去の女の問題が絡んでいること。その全ての説明をしたのは俺だった。その中に裕矢の受けたいじめの内容は含めなかった。「いじめがあったことがバレれば裕矢に対するみんなの見る目が変わってしまうだろう。それは裕矢のプライバシーの問題も含め避けたい」善意の俺、そして「いじめの事実を隠蔽すれば納得のいっていないみんなの不満の矛先は裕矢に向く」悪意の俺がそこにいたんだ。

 亜美が犯され、その犯人が口を閉ざしたまま自殺した。この事件が確実に俺の善意を壊していった。一度は封印したはずの亜美への想いが込み上げて止まらなくなった。


 裕矢、お前は亜美の彼氏なんだ

 亜美を守ってやれ


 その身を挺して・・・


 これを悪意と呼ぶのだろうか






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