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chapter 2 − recollection − 大学2年 5月14日

 ――― 5月14日


 杉本が死んで4日経った。

「もう大丈夫、大丈夫だから・・・」

 亜美はずっと学校を休んで僕の家にいた。

 精神的ダメージは計り知れない。

 塞ぎ込んだまま外にも出れない状況が続いてる。

 僕もずっと彼女とともにいる。

 抱き締めててあげないと震えが止まらない。

 だから抱き締めて安心させてあげる。

「ずっと一緒だから・・・」

 一緒にいなければ僕が僕でなくなる。

 彼女に対して以前と同じ態度が取れなくなってる。

 彼女に向けていた決定的なものが掛けてしまった。

 

 それは何?

 優しさ?

 思いやり?

 いや、愛情が欠けてしまった


 今の僕には以前のように君を見つめ返すだけの熱い想いはない。


「龍ちゃんありがとね・・・」

 様子を見に来てくれた。

「ああ、気にすんな」

 笑顔で僕を包んでくれる彼の優しさに心打たれる。

 胸の奥から込み上げてくるこの感情が僕を狂わせる。


 どうしようもない

 止められないんだ

 苦しい

 苦しいよ


 僕は間違ってたのか?

 ずっと勘違いしてたのか?


「裕矢、ちょっといいか」

 彼が二人で話をしたいって言ってきた。

「すぐ戻るから」

亜美を部屋に残し下のコンビニに向かった。

 本を手に取り立ち読みをしながら話し始めた。

「ここなら誰も聞いてないだろ」

 彼は人目を気にしていた。

 彼の話によるとこうゆうことだった。

 僕と亜美が学校を休んでいる間、校内で杉本と僕らに対して根も葉もない噂が広まっているとのことだった。

「亜美のことはバレてない、警察もそのことは洩らしてないみたいだ」

 亜美がレイプされたことは校内には広まってない。それが救いだった。ただそれによって僕らにあらぬ疑いが掛かってるらしい。

「亜美のこと話せば俺らの疑いは晴れる・・・」

 なっ、何言って!?

「どうする?」

 真剣な眼差しをぶつけてきた。

「なに言ってんだよ!!」

「しっ!」

 興奮する僕を睨みつけてきた。

「・・・そんなことできるわけないじゃないか、」

 辺りを見渡し小声で力強く訴え掛けた。

「いいんだな」

「当り前だろ」

 その返事を聞いた彼は

「・・・ならいい・・・」

深くため息を一つ

「亜美を学校に復帰させろ」

確信の言葉を放った。

「えっ?」

 僕は亜美を無理やり学校に復帰させるのは良くないと思ってた。

 でも彼の考えは違った。

「これ以上学校に来ないのはまずい。俺らが仲がいいのはみんな知ってる。噂はすぐに亜美を結びつけるだろう」

 そ、そうか、その通りだ

「分かるな?」

 彼女が休み続ければ皆の目は自ずと彼女へと向いてしまうだろう。僕と彼女が二人で休み続ければ勝手な噂は、彼女へと向きかねない。

「俺らが犠牲になるんだ」

 そうだ、その通りだ

「・・・分かったよ」


 龍ちゃんはやっぱり凄い

 いつも一歩先を行ってしまう

 

 いくら手を伸ばしても届かないんだ・・・






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