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chapter 2 − recollection − 大学2年 5/11龍二

 ――― 俺は警察からの連絡で杉本の自殺を知った。

 事情聴取に呼び出された。杉本の死に不審な点が多かったとのことで色々なことを聞かれた。俺は素直に話した。


 飛び降りで負ったわけではない傷の全ては、自分の暴力によるものであること。そのわけ。そこに至った経緯。その全てを話した。

 彼が最後に語った言葉「殺してくれ」の意味、それが何だったのかを今更ながらに痛感した。

 彼の下した決断が正しかったなんて思わない。


 死を選ぶほどのことだったのか?

 亜美を犯し裕矢の目の前でそれを実行するほどのものだったのか?


 恨みの深さは人それぞれだ。正直死ぬのは勝手だ。言葉の通り「選択の自由」だし「自分の勝手」だ。蚊帳の外で勝手にやってくれ。ただ残された者はどうなる。事実、彼が死を選んだことで、まるで彼が被害者のように扱われ始めたからだ。


 どうして殴りつけたことなんかで責められなきゃならない!

 そもそも奴の犯した罪はどうなる?

 死ねば無罪放免か?

 

 事情聴取もまるで犯人扱い。

 「その時どこにいたのー?」「アリバイは?」「証明できる人いる?」「殴ったんだよね?」「追い詰めちゃったかなぁ」「それであんなことになっちゃったのかなー?」「レイプされちゃった娘ってのは今どこにいるの?」「その娘にも隙があったんじゃな〜いの〜?」「その娘の彼氏が突き落としたとしても不思議じゃないよね」「事実、そこにいたし」


  ざけるな・・・


 部外者はいつも他人事、そんなことは分かってるつもりだった。でも「死人に口なし」世間の目は想像以上に冷たかった。亜美がレイプされたなんて言えるわけなかったし、そこを省いた説明の中で納得してくれる奴なんて皆無に等しかった。ましてや裕矢と杉本の彼女たちとの経緯を話したところで、それを自殺に結び付けるにはあまりにも強引だった。

 杉本は、裕矢以外の知り合いとは上手くやっていた。悪い印象なんてなかったんだ。それは亜美と俺に対しても同様だった。だからか「裕矢に彼女を寝取られた」と取る輩が出てくる始末。「じゃなきゃ自殺なんてしないでしょ」勝手な噂が流れていった。

 杉本は身勝手な満足の完結を「死」とゆう形で示した。それがここまで俺たちを追い詰める結果になるなんて、そこまで計算してのことだったのか、今となってはもう誰にも分からない。それでも一人歩きして止まらない現実が俺たちを苦しめていったんだ。


 亜美、お前は大丈夫なのか?

 どうしてるんだ?

 思いつめてないか?


 そして苦しみの要因は増えていくばかりだった。


 裕矢、お前はちゃんと亜美を支えてやれてるのか?


 そう言えば事情聴取の時に警察が言っていた。

「彼氏、ナイフ持ってたんだよね」

 裕矢はナイフを所持していた。それで何をしようと・・・

「殺すつもりだったのかなぁー」

 覚悟は俺より上だったってことか?

「・・・んなわけないでしょ・・・護身用じゃないですか」

 に決まってる

「彼、虐めれてたみたいですからね」

 そんな覚悟、あるわけない


  亜美への想い

  裕矢には負けない

  

 亜美がレイプされた時、亜美は俺を頼ってきた。一番最初にだ。

 それが裕矢に見られたくなかった、家が近かったなんて理由が裏にあったとしてもだ。


  負けない

  負けたくない

  絶対に・・・






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