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chapter 2 − recollection − 大学2年 5/10龍二

 ――― 俺は杉本が赦せなかった。

 親友の裕矢を苦しめ続け責任を転嫁している彼を。そして何より何の関係もない亜美を・・・

 はらわたが煮えくり返る思いを必死で抑え平静を装い電話で彼を呼び出した。

 彼は俺が知らないとでも思っていたのか、何食わぬ顔で呼び出した校舎の中でもひと気のあまりない9号館の屋上に現れた。

 4限の終了する5時過ぎにこの屋上に上がってくる者など一人もなかった。

 夕暮れの逆光が彼を照らし暗く沈んで見せた。

 彼は何も言わずにこちらに近付いてきた。


 よくも、よくも亜美を!!


「っざけやがって!!」

 いきなり殴ってやった。

 何度も、何度も、何度も、何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も殴ってやった。

「自分のしたこと分かってんのか!!」

 倒れ込んだその腹を蹴り上げ

「亜美が悪いのか!?」

叫んだ。

「裕矢が悪いのか!?」

 切れた口の中から血が吹き出し折れた歯が零れ落ちた。


  もしここで彼を殺してしまってもかまわない

  犯罪者になってもいい!!


「誰が悪いわけでもないだろうが!!」

 本気でそう思った。

 彼は抵抗することなくひたすら殴られ続けた。

「てめぇの包容力がねぇだけだろうが!!」

 無抵抗、いや無気力だった。

「亜美はな、お前を訴えないって言ってるんだ!あいつの気持ちを無駄にはできねぇ、亜美に感謝すんだな!」

 彼は自分の犯した罪を、俺の暴力を受けることで償おうとしているように思えた。それがまた気に入らなかった。

「・・・殺してやりてぇよ・・・」

 捨て台詞を残しその場を後にしようとしたその時、初めて彼が口を開いた。

「・・・殺して・・くれよ・・・」

 それは無責任なムカつく言葉にしか取れなかった。

「金輪際あいつらには近付くな・・・分かったな」

 まさかそれが彼との最後になるなんて思いもしなかったから・・・



 


 


 

 


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