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chapter 2 − recollection − 大学2年 5月9日

 ――― 5月9日


 亜美を連れて僕の家へ戻った。

「あの部屋には・・・戻りたくない・・・」

 彼女は怯えてた。

 彼女の部屋の鍵を閉めるのは龍ちゃんに任せて僕らはその場を後にした。

 自転車の後部座席、力いっぱい抱き付いてくるその腕からさえ震えているのが伝わってきた。

 必死で救いを求めてた。

 こんなにも僕を必要としてくれてる彼女に何もしてやれない・・・

 今彼女にしてやれることといったら、ただ抱き締めそのぬくもりで安心させてあげることくらいだった。与えてあげるべき言葉も見つからない。ただ寄り添ってあげるだけの自分に気が違いそうなほどのもどかしさを感じずにはいられなかった。


 彼女に何をしてやれる?

 彼女は何を望んでる?


「杉本とは僕が話をつけるよ」

 彼女は何も言わなかった。

 抱きつく腕にさらに力を込めてくる彼女に誓いを立てた。


 奴が僕に腹を立てているのは分かる。でもそれを亜美にぶるけるのは筋が違う。

 奴は自分の彼女に裏切られた。二人もだ。しかも女たちの相手は共に僕だった。

 奴の苦しみは相当なものだったんだろう。その気持ちは分からなくもない。奴はそれを消化できずに苦しみその怒りを誰にぶつけていいのか分からなくなったんだろう。奴の怒りは収まる術を失い暴走した。

 

 ターゲットは僕の彼女


 僕に直接危害を加えても「自分の心の痛みは伝わらない」そう考え亜美をターゲットにしたに違いない。「彼女を襲えば僕の心に痛みを与えられる」そう、同等の苦しみを。

 そして仲直りをするって名目で亜美の家に押しかけ僕を呼び出し彼女を襲った。 

 無情にも奴の計画は成し遂げられてしまった。

 彼女を傷つけ僕の心に波紋を投げかけた。


  龍ちゃんに知られた過去

  その心の痛み

  亜美に対する想い

  その心の痛み


 その全てが絡み合って僕の心を縛り付ける。

 自分が自分で分からなくなる。

 自分で自分に疑問を投げかける。

 

  僕が僕でなくなる


 認めちゃいけない。

 言葉に出せない想いが答えとなって締め付けてくる。


  亜美、僕はひどい男だよ


 君が抱き締めてくる以上に君を強く抱き締めてやることができない・・・



 


 


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