chapter 2 − recollection − 大学2年 5月8日
――― 8日
杉本が、
杉本が亜美をレイプしたなんて・・・
「っのやろー!!」
怒りに我を忘れ部屋を飛び出そうとした。それからどうしようかなんて考えてもいなかった。ただひたすらこの怒りを抑えることができなかったんだ。
「裕矢!!」
怒鳴りつける龍ちゃんの声に我に返った。睨みつけるその鋭い視線が僕を正気に戻した。
「座れ」
言われるがまま二人の前に座った。
酷い仕打ちを受けた彼女に、安心させる言葉の一つもかけてやれない。
恋人として失格だよね
「お前の説明がまだだろ」
彼の熱い眼差しが僕を捕える。
「今までのいきさつは話した」
見つめ返すことができない。
「次はお前の番だ」
言えない・・・
龍ちゃんには言えない
「・・俺には・・言えないってか・・・」
「ちっ違うよ、」
知られたくないんだ
僕の過去を・・・
落胆の表情、視線を逸らしため息をつく龍ちゃんに
「・・・違うんだ・・・」
弁明の言葉すら見つからない。
どうしてか分からない
自分でも分からないんだ
言葉では上手く言えない
前なら真っ先に相談しようって思えた
でも今は違う
胸の奥から熱いものが込み上げてくる
それが僕の判断を狂わせる
でもそれが何なのか分からないんだ
分からないんだよ
言いたくないんだ
それでもその時の状況は、そんな実態の掴めないわがままを赦してはくれなかった。
「・・・・あのね・・・」
彼は黙ってじっと僕を見つめたまま聞いていた。
ありのままに今まで僕の身に起きた過去の出来事、杉本との様々ないざこざを話した。それがきっかけで亜美と付き合い始めたことも、彼女も黙ってそれを聞いていた。
知られたくなった
君にだけは・・・