chapter 2 − recollection − 11月7日
――― 7日
「裕矢ー!」
息を切らせ龍ちゃんは走ってやってきた。
「わりぃわりぃ、待ったか?」
駅前待ち合わせ、始発で帰るはずだったんだけど龍ちゃんは15分の遅刻。
「起きれなかったわ、ハハハ」
相変わらずの癒しの笑顔を向けてくれた。
「あれ、自転車は?」
行きにギッた、もとい借りた自転車には乗らずに走ってきた。
「あぁーすぐに返したよ」
置いてあった場所を指差し笑ってた。
「ハハハハ、」
僕も笑った。
「それにしてもなんで始発なん?早くね」
一刻も早く家を出たかった。それが理由だ。
「あのね、」
帰りの電車の中、この数日家であったこと、過去に家庭で起きた問題を告白した。彼は何も言わずに聞いてくれた。そして聞き終えた彼は
「大変だったんだな。う〜んこれからの方が大変か・・・ま、困ったらいつでも言ってくれな。力になっからよ」
ありがたい、心に沁みる言葉をくれた。胸の奥が熱くなった。
龍ちゃん、本当に感謝しています
ただ杉本のことは自分の問題だから話さなかった。話すことで杉本に対する龍ちゃんの態度が変わるのはおかしいことだし、二人は仲がいい。それを壊すようなことはしたくない。仲直りしようとしてくれてた杉本に戻ってくれることを祈るしかないんだ。
もう後戻りはゆるされない
この先待ち受ける困難に打ち勝ってこそ真の自由を手に入れることができるんだ。帰る場所はもうそこしかないんだ。母の残してくれた大学生活への切符を捨てるわけにはいかない。僕一人の力で卒業してみせる。
ここからがスタートだ
僕の新しい人生の