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chapter 2 − recollection − 10月16日

 ――― 16日


 朝日が降りかかり目覚めた。

「おはよ」

 キッチンからの声、風間さんだ。

 夢じゃなった。

 複雑な心境だった。


 風間さんと心の通じ合った幸せ

 杉本とのこと


 どちらをどう表現していいのか分からなかった。嬉しさと悔しさが交錯してわけが分からなくなった。

 重たい頭を抱えため息混じりに上半身を起こした。

「はーい、どうぞー」

 テーブルに朝食が並べられていく。

 僕はまだ目覚めきらない体を動かせずにいた。

 トーストにベーコンエッグにサラダとスープ、そして紅茶を淹れる優しい彼女の笑顔。

 楽しそうにてきぱきと並べていく彼女をボーっと眺めてた。全て並べ終わった彼女は僕の横にちょこんと座りいきなりキスをしてきた。

「!?」

 びっくりだった。

「目さめた?」

 微笑む彼女の悪戯に本当に目が覚めた。

「砂糖いくつ入れる?」

「あっ・・・二つで、」

 紅茶に角砂糖を入れスプーンでかき回す彼女を見て


 僕の彼女なんだぁ・・・


 信じられないような幸福を実感した。

「食べよ」

 目覚めのキス、手作りの朝食、未知の世界がそこにあった。

「いただきます」

 手を合わせる彼女に

「いただき・・ます」

かしこまる僕。目の前に並ぶ朝食は朝食用に買ってきた食材だ。彼女は端から泊まる気で来ていたのだ。目の前で繰り広げられるそんな現実が真実であることを痛感した。


 天国と地獄だ


 目の前に広がるこの光景は望んで止まなかった天国、でも一歩引き下がり思い起こせば地獄に引き摺り落とされるかもしれない自分の姿が浮かぶ。

 箸の進まない僕を見て

「スギちゃんなら大丈夫よ。話せばきっと分かってくれるって」

前向きな彼女が言った

「だって仲直りしようとしたのだってスギちゃんの方からでしょ」

 確かにそうだけど・・・


 お昼からバイトを入れていた彼女は

「誤解なんだからさ。分かってくれるよ、ねっ」

そう言い残して部屋を後にした。


 分かってくれるだろうか・・・


 限りなき不安と一握りの望みに賭けて携帯を手にした。

「あっ、杉本?」

 繋がった。でも返事はなかった。

「聞いてくれ、昨日のことは誤解なんだよ、あれは、」

「ゆるさねぇ・・・」

「えっ、なに?」

「赦さない、絶対に」

「ちょっ、ちょっと待って、聞いてく・・」

「っるっせー!!」

 言葉を失った。

「・・・覚えてろよ・・・」

 とどめの一言。そして一方的に切られてしまった。そこからは着信拒否されたのか全く繋がらなくなった。


 どうしたらいいんだ

 どうすればいいんだ

 また前みたいになっちゃうのか?

 もう嫌だよ

 そんなのは嫌だ

 聞いてくれなきゃ誤解は解けないよ


 誤解?

 誤解じゃ済まされないか・・・

 女に裏切られた事実は変わらないんだ


 


 


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