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chapter 2 − recollection − 9/20龍二

 ――― 裕矢の家に泊まった帰りだ。前の日に4人で盛り上がりそのまま彼の部屋で飲み明かそうってことになったんだ。

 結局一睡もしないまま朝の7時くらいに解散となった。

「また遊ぼーねー」

 手を振る裕矢に別れを告げ俺と由紀と亜美で駅へと向かった。

 俺が二人の真ん中に挟まれる形で歩いていた。

「楽しかったねー」

「だなー」 

 俺も亜美も眠くて何度もあくびをしながら大した会話も交わさなかった。ハイテンションの後の虚無感ってな状態だった。

 でも一人、由紀だけは違った。

「二人って同じ高校だったんだよね?」

 何気ない質問だと思ってた。

「ああ」

「うん」

 どこ高?知らなーい、何部?そうなんだー

 そんな決まった会話に繋がってく、初対面同士の自己紹介的な流れになると思ってた。


「どうして別れたの?」


「!!」

「!?」

 足が止まった。亜美も俺も。

 半歩先から振り返る由紀。


「なんで今も繋がってるの?」


 冷たく睨みつけてきた。


 ちょっと待て、何のことだ?

 どうしていきなりそうなる?

 そういえば昨日の夜、高校時代の話はしなかった


「な、なに言ってんだお前、」


 しなかった?

 いや、俺と亜美は気を遣ってしなかっただけだ


「亜美さん」

 亜美に振った。

「えっ?」

 完全に動揺してる。咄嗟に答えが出ない亜美に

「近藤さんは知ってるの?」

誘導尋問。

 

 まずい!

 裕矢には付き合ってなかったと伝えてある

 ここで矛盾を生じさせるわけにはいかない


「付き合っちゃいない!」

 亜美が答える前に咄嗟に否定した。だが攻撃の手は緩まなかった。

「じゃあどうして二人で富士急行ったりしたの?」


 ど、どうして分かったんだ?


「お、俺が一方的に憧れてた時期があっただけだ、」


 咄嗟に出たウソ


「どうゆうこと?」

 執拗に聞き返してくる由紀、当然亜美は何も言えない。俺が言うしかなく俺に合わせるしかなくなった。

「す、好きだったんだよ、」

「で?」

「何度か誘った、その一つが富士急だよ、」 

「ふーん」

「・・・ふられたんだよ、結局な、」

「じゃあなんで今も繋がってるの?おかしくない?」


 もしかして二股かけられてると思ってるのか?


「大学で偶然会ったんだよ、」

「偶然?わざと選んだんじゃないの?その大学」


 そこしか受からなかったんだよ


「そこしか・・・」


 いや、受けなければよかっただけだ・・・

 答えが浮かばない、

 間が空くのはまずい、

 どうする・・・


「そこしか受からなかったんだよ」

 突っ込まれたら終わる

「亜美は祐矢が好きなんだよ!」

 一か八かだ

「だから協力してやってるんだ」

 そうだ協力してる

 事実だ

「確かに亜美が好きだったことはある」

 どうして受けたんだ?

「でも今好きなのは由紀だ!」


 どうして?


「・・・ほんとに?」


 ・・・本当・・・か?


 いぶかしげに見つめる由紀を

「ったりまえだろ」

抱き寄せた。

「・・・黙ってて悪かった、心配させたくなくて・・・」

 一瞬の間の後、強く抱き返してくる由紀に

「愛してるよ」

耳元で囁いた。

「・・・私も」

  


「・・・ごめんね、私が裕矢くんとの仲取り持ってほしいって頼んだの、」

 ゆっくりと亜美が口を開いた。

「迷惑だった、かな?」

 まるで亜美まで俺が未だに好きなのかと思わせる台詞を綴ってきた。

「・・・そう見えたか?」


 俺は由紀を好きになった。

 だから亜美の恋路に協力した。


 亜美に幸せになってほしい

 自分に果せなかった願いを

 亜美が好きになった人に成し遂げてほしい


 じゃあなぜ、

 なぜ受けたんだ


 未練か・・・



 帰りの電車の中、由紀は上機嫌だった。

「私も協力するね」

 亜美に微笑みかける由紀の姿は、男の嫌いな女の醜い部分を丸出しにしてるようにしか見えなかった。

「ありがと」


 俺と亜美は似てる

 サバサバしてる

 積極的だ

 行動的だ

 女特有の陰性なものを感じない


 だから好きになったんだ・・・


 でも失敗した

 結局別れたんだ

 同じ過ちは繰り返さない


 そう思って「女の子」の由紀を選んだんだ。


 

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