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chapter 2 − recollection − 9月20日

 ――― 9月20日


「風間さん遅いねー・・・場所分かってるのかな?」

「分かってるって」

「なんでそう言いきれるの〜・・・」


 午前9時改札前集合


「もう9時半じゃん」

「風間さんって近藤さんの彼女なんですよね?」

「えっ、ち、違うよ・・・」

「まだ違うんだよな〜」

「ふーん、そうなんだー」

 龍ちゃんと由紀さん、二人に責められてた。「風間さん早く来てくれ〜」叫びたくなったよ。

 と思っていた矢先

「ごっめんねー!」

小走りに風間さん到着。

「乗り継ぎミスっちゃって、すいません、」

 手と手を合わせ何度も頭を下げて謝る風間さんに

「お前いっつもそうだよな」

龍ちゃんの台詞。


 いつもそう


 確かにそう言った。由紀さんの方を見ると目が合った。慌てて視線を逸らした。もしかしたら僕と同じことを思っていたのかもしれない。

「じゃ行くか」

 先頭を切って歩く龍ちゃんにみんなついて行った。

「遅れてごめんねぇ、わたし風間亜美、よろしくね」

「こちらこそはじめまして、神里由紀です。よろしく」

 二人は初対面。軽く自己紹介をしていた。

「そういやお前ら顔合わせるの初めてだったんだよな」

「えっ一度見たことあるわよ、後姿だけ。ねっ裕矢くん」

「あぁ、うん」

「えっなに?どこで?」

「リュウのバイト先でね。ねっ」

 僕に微笑みかける風間さんを見て龍ちゃんは

「・・・あっそう、二人で・・・はは〜ん、二人でねぇ」

ニヤニヤしながら僕と風間さんの間に割って入り肘でグイグイ突っ込んできた。

「よろしくやってんじゃん、ニクイね、このこの〜」

 突っ込まれた風間さんも

「な〜に言ってのよ〜、あんただって一緒じゃな〜い、このこのこの〜」

同じように突っ込み

「お前こそ」「お前こそ」

突っ込み合いながら前へ前へと進んで行ってしまった。取り残された僕と由紀さんは、じゃれ合ってる前の二人を見つめてた。

「あの二人、仲いいのね・・・」

 先に口を開いたのは由紀さんだった。

「・・・うん」

 それ以上の言葉が見つからなかった。

「リュウからよく聞かされてたんだ・・・近藤さんと風間さんのこと・・・」

 低いトーンで単調に語る由紀さん。

 何も言えない僕。

 前行く二人を見つめたまま思った。


 由紀さん、思ってることはたぶん一緒だよ


「なにしてんのー!二人ともおっそいぞー!」

「あってめー、由紀は俺のもんだぞー!!」

 走って戻ってくる龍ちゃん、僕から引き離すように由紀さんを抱き寄せた。まわりにいる人波も一瞬の注目、視線が集まった。抱き締められた由紀さんの顔は真っ赤で恥ずかしそうに俯きながらもどこか嬉しそうだった。


 よく人前でそんな大胆なことができるなぁ


「あ〜どさくさにまぎれて熱いねー、まったくー」

 突っ込む風間さんに

「妬くな妬くな。お前も裕矢にしてもらえばいいだろ」

 突っ込み返す龍ちゃん。

 ハッと顔を見合わせる僕と風間さん。すぐに視線を逸らし気まずいムードに龍ちゃんは一人ゲラゲラ笑ってた。


 龍ちゃんはいつも自然体

 僕も彼みたいに生きてみたい


 平日とゆうことも手伝ってか思ったよりは混んでいなかった。

「まずはだな」

 龍ちゃんの赴くままついて行くみんな

「どこ行くのよー、ドドンパかフジヤマじゃない」

 僕も由紀さんもまた二人の後について行く形になった。

 初めてだった僕には何が何だかさっぱりだった。今までこんな世界とは無縁だったから。

「由紀さんも初めて?」

 ふと尋ねると

「ううん]

初めては僕だけらしい。

「何回目?」

「・・・・」

 じっと見つめてくる由紀さん

「・・・内緒」


 なんで〜〜


「ガンダムって、そりゃないでしょ〜」

 先行く亜美さんの呆れ声に二人目をやると

「ドドンパもフジヤマも嫌だからな!」

なにやら二人言い争いをしてた。

「どうしたの?」

「聞いてよ、リュウったらジェットコースター系苦手だから乗りたくないんだって」


 どうして風間さんはそんなことまで知ってるんだろう


「裕矢も嫌だろ、なっ、」

「ううん、全然平気」

 ジェットコースターは過激なものほど大好きだ。

「う、裏切り者〜、」

「だいたい富士急来て絶叫系乗らないってそりゃないでしょ〜、観念しなさいよ、由紀さんも言ってやって」

 由紀さんはただ笑ってた。

 結局、龍ちゃんの意見は無視されフジヤマから乗ることになった。

 並んでる最中も龍ちゃんはどうにかして逃げようとしていたが

「一緒に乗ろ」

由紀さんの一言で観念したようだ。


 僕たちの番が回ってきた。

 龍ちゃんカップルが僕らの前に座った。

「ゆ、由紀、お、お前平気なのかよ、」

 ゆっくり動き出す。バーをしっかりと握る龍ちゃん。

「うん、こうゆうの大好きだよ」

 にっこり微笑む由紀さん。

「よ、よく平気でいられっるっわ〜!!」

 降りに差し掛かったところで龍ちゃんの叫び声がこだました。


「ハハハハ、」

「アハハハハ、」 

 乗り終えた龍ちゃんは予想以上にぐったりした様子で

「もう乗らねぇ・・・ぜってぇ乗らねぇ・・・」

しきりに強調しながらよろめき唸ってた。それを見て僕らは笑ってた。

「龍ちゃん前にも来たことあるんでしょ、その時乗らなかったの?」

「乗った、こうゆうの乗らないって約束で来たのにな」

「アハハハハ、」

 龍ちゃんの答えに大笑いする風間さん。


 やっぱり二人で来たことがあるんじゃないのか?


 頭をよぎる不安は由紀さんも同じ。由紀さんも怪訝な面持ちで二人を見つめてた。明らかに僕は嫉妬してた。二人の見えない過去に・・・


 その後おとなしめのアトラクションを廻った後、ドドンパに乗った。最初の急発進には確かにびっくり、そのまま速度を落としていった所で龍ちゃんを見るとさらにぐったりうなだれてた。

 そして昼食にピザを食べてしばらくくつろぐと元気を取り戻した龍ちゃんが

「戦慄迷宮に行くぞー!」

いきなり立ち上がった。ニタニタと嫌な笑みを浮かべ何かを企んでるのは伝わってきた。

「えぇ〜やだ〜、」

 嫌がるのはなんと風間さん。

 それは日本の誇る超のつくお化け屋敷だ。

「行くぞ行くぞ」

勝手に先に行ってしまう龍ちゃんに

「やめようよ、ねっ、お願いだから、」

この嫌がりよう。止めようと縋り付く風間さん。

 とりあえずその後をついて行く僕と由紀さん。

 僕を見てニヤッとほくそ笑む龍ちゃん。


 これは誰と誰のデート??


 寂れた病院の前に到着。

 廃墟をモチーフにしたその外観といったら「いかにも」って感じだ。

「う〜ん、」

 どこがそんなに嫌なのかため息交じりの風間さんがゲートを通過する。由紀さんはといえばもちろん嫌がってる素振りはなかった。

 建物の中に通されるとかなり暗くガイドの人の案内に従って進もうとすると

「いや!」

突然腕にしがみつかれた。びっくりして横を見るとそれは震える風間さんだった。この暗闇よりも、これから中で何が起こるかよりも、彼女が僕にしがみついているこの現状に鼓動は高鳴ってた。

 そして部屋に通された。

 その部屋の明かりで隣が龍ちゃんだと分かった。その腕には由紀さんが抱きついていた。由紀さんの表情は風間さんの恐怖とは違うものだった。龍ちゃんは僕を見てニヤリと不敵な笑みにウィンクで合図してきた。

 それからお互い別々にお化けたちに脅されながら

「キャー!!」

進んでいった。

「キャー!!」

その間ずっと風間さんは腕にしがみついたままだった。どんなに恐怖を煽られても作り物に対して恐怖心を抱けない僕には、お化けたちに祝福されてるようでなんだか嬉しくなった。


 風間さんに必要とされてる


 そんな気にさせてくれた。


 龍ちゃんに感謝



 そして帰りの電車の中

「裕矢んちで飲み明かそうぜ」

龍ちゃんの提案に

「いいねー、由紀さんも来なよ」

僕が賛同

「え、いいの?」

「もちろん。でもクーラーないからね」

「うっそクーラーないの?」

亜美さんびっくり

「ああ〜そうだったぁ〜、お前クーラー買えよ〜」

そんなこんなでみんな泊まっていった。


 今日は本当に楽しかった。

 また一人知り合いが増えたし風間さんともいっそう仲が深まったし・・・・


 でも腑に落ちないこの思いは募るばかりだ


 聞いてみたい

 もう一度はっきりと

 

 でも僕にも秘密にしていることがある


 聞きたい・・・


 聞けない・・・



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