表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/87

chapter 2 − recollection − 6月27日

 ――― 27日


 鳥の鳴き声に目覚めた。

 ユニットバスの中だった。

 今朝はやけに冷えた。

 部屋を見渡すとベッドは乱れゴミは散乱したままだった。


 ベッドはやめよう

 布団も買い換えよう


「ハァ・・・」


 憂鬱

 龍ちゃんの顔が浮かんだ。


 どうしよう

 いったいどう説明すればいいんだ


 6時半

 とりあえず布団を畳み部屋の隅に寄せゴミをまとめた。

 だんだんと頭が冴えてきた。


 龍ちゃんには言わないでおこう

 自分の問題だ

 龍ちゃんがいないんじゃ何もできない大学生活なんて駄目だ

 自分で解決しなきゃ駄目なんだ


 ゴミを外に出すためドアを開けようとすると、まるで外側から押し返されるような感触で開かなかった。「おかしいな」力任せにグイグイ押してみるといきなり

「うぅ〜・・・」

唸り声が聞こえてきた。「えっなんだ!?」びっくりして思わず手を離すと勝手にドアが開いた。そこには龍ちゃんが立っていた。

「ゆう・・や・・・」

「りゅ、りゅうちゃん!」

 見つめ合ったまましばしの間

「・・・おはよ」

にっこり微笑んで

「っくしょん!」

大きなくしゃみをして鼻をすすってた。僕は思わず笑ってしまった。

「さみ〜」

「入って入って、」

 よたよたと中に入る龍ちゃんは

「いつの間にか寝ちまったみたいだわ、風邪引いちまったかな〜」

ズルズルと鼻をすすって苦笑いしてた。

 一晩中玄関の前にいてくれたようだ。


 龍ちゃん、君って人は・・・


 胸が熱くなった。思わず涙ぐんでしまった。こんなに心配してくれるのは彼だけだろう。

 コーヒーを淹れて手渡した。

「ブラックね」

「サンキュ」

 彼は何も聞いてこなかった。

「あの、あのね、昨日はごめんね、」

「あぁいいよ、気にすんな」

「龍ちゃんに怒ってたわけじゃないから、」

「・・あぁ、でも大丈夫か?」

「・・・うん」

 最後まで何も聞かないでいてくれた。

 彼の優しさを身に沁みて感じた。

 

 言葉では言い表せない・・・


「自分で解決できるから・・・」

 いつもでも彼に頼ってはいられない。

 まだ始まったばかりだ。

 これからの大学生活、リセットはきかない。


 高校時代のようにはさせない

 絶対に・・・


 コーヒーをすする龍ちゃん

 紅茶をすする僕

 この大切な時を壊させはしない

「あのさ、ゴミ捨てるの手伝ってくれないかな」

「あぁいいよ、そんなに捨てるもんあんのか?」

「布団とベッドだよ」

「!?」

 思わず咳き込む龍ちゃん。目が点になってた。

「な、なんでまた、」

「・・・ちょっとね」

「だってまだ新しいじゃんよ、」

「いいんだ。ベッドはやめる。布団は買い換える」

「そんなもったいねーよ、俺にくれって、」

「だーめ」


 今日、僕の部屋からゴミ(・・)が消えた。


  


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ