chapter 2 − recollection − 6月27日
――― 27日
鳥の鳴き声に目覚めた。
ユニットバスの中だった。
今朝はやけに冷えた。
部屋を見渡すとベッドは乱れゴミは散乱したままだった。
ベッドはやめよう
布団も買い換えよう
「ハァ・・・」
憂鬱
龍ちゃんの顔が浮かんだ。
どうしよう
いったいどう説明すればいいんだ
6時半
とりあえず布団を畳み部屋の隅に寄せゴミをまとめた。
だんだんと頭が冴えてきた。
龍ちゃんには言わないでおこう
自分の問題だ
龍ちゃんがいないんじゃ何もできない大学生活なんて駄目だ
自分で解決しなきゃ駄目なんだ
ゴミを外に出すためドアを開けようとすると、まるで外側から押し返されるような感触で開かなかった。「おかしいな」力任せにグイグイ押してみるといきなり
「うぅ〜・・・」
唸り声が聞こえてきた。「えっなんだ!?」びっくりして思わず手を離すと勝手にドアが開いた。そこには龍ちゃんが立っていた。
「ゆう・・や・・・」
「りゅ、りゅうちゃん!」
見つめ合ったまましばしの間
「・・・おはよ」
にっこり微笑んで
「っくしょん!」
大きなくしゃみをして鼻をすすってた。僕は思わず笑ってしまった。
「さみ〜」
「入って入って、」
よたよたと中に入る龍ちゃんは
「いつの間にか寝ちまったみたいだわ、風邪引いちまったかな〜」
ズルズルと鼻をすすって苦笑いしてた。
一晩中玄関の前にいてくれたようだ。
龍ちゃん、君って人は・・・
胸が熱くなった。思わず涙ぐんでしまった。こんなに心配してくれるのは彼だけだろう。
コーヒーを淹れて手渡した。
「ブラックね」
「サンキュ」
彼は何も聞いてこなかった。
「あの、あのね、昨日はごめんね、」
「あぁいいよ、気にすんな」
「龍ちゃんに怒ってたわけじゃないから、」
「・・あぁ、でも大丈夫か?」
「・・・うん」
最後まで何も聞かないでいてくれた。
彼の優しさを身に沁みて感じた。
言葉では言い表せない・・・
「自分で解決できるから・・・」
いつもでも彼に頼ってはいられない。
まだ始まったばかりだ。
これからの大学生活、リセットはきかない。
高校時代のようにはさせない
絶対に・・・
コーヒーをすする龍ちゃん
紅茶をすする僕
この大切な時を壊させはしない
「あのさ、ゴミ捨てるの手伝ってくれないかな」
「あぁいいよ、そんなに捨てるもんあんのか?」
「布団とベッドだよ」
「!?」
思わず咳き込む龍ちゃん。目が点になってた。
「な、なんでまた、」
「・・・ちょっとね」
「だってまだ新しいじゃんよ、」
「いいんだ。ベッドはやめる。布団は買い換える」
「そんなもったいねーよ、俺にくれって、」
「だーめ」
今日、僕の部屋からゴミが消えた。