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chapter 2 − recollection − 6月19日

 ――― 6月19日


 杉本が現れてもう一ヶ月が過ぎようとしている。


 どうして奴がこの大学にいるんだ?

 奴は受けた大学全て落ちたはずだ

 僕と同様浪人生活を送ってきたんじゃないのか?


 奴は言っていた。

「俺はな、お前に女盗られてから必死で勉強したんだよ」


 盗ったつもりなどない


「確かにな全部落ちたよ。でもこんな哀れな俺を神様がほっとくと思うか」

 奴は全て不合格となった後で、この大学の補欠合格通知を受けたらしい。


 ミスだ

 完全なミス


 奴とは絶対に同じ大学に進まないつもりだったのに補欠合格のことまで頭になかった。そこまで調べなかったしそんな余裕もなかった。

 奴は授業をサボってばかりいる。だからあの時まで顔を合わせなかったんだ。実際に奴の登校日数は多くて週二回、その内一回がサークルのある金曜日なんだ。

 なぜか奴はサークルにだけはまじめに顔を出す。


 来なくてもいいのに・・・


 サークルのたびに顔を合わせる。週に一回は必ずってことだ。奴の顔を見るたびむしずが走った。それよりまた何をされるか分からない恐怖に怯えてる。龍ちゃんに風間さん、二人がいなかったらとっくに辞めてるよ。

 僕は約束したんだ

「サークルがんばろうね」

風間さんと、一緒にがんばるって。いつまでも逃げてばかりじゃだめなんだ。今まで自分じゃだめなんだ。またあの悪夢を繰り返すのだけは阻止しなければ・・・


 でもどうすれば・・・

 奴の毒牙はもう僕の喉元に喰らいついてきてる


 ドアベルが鳴る。

 悪寒が走る。

「よう、元気してたか」

 玄関を開けるそこには杉本、奴が立っている。

「早くバイト行けよ」

 奴は僕のバイトのシフトを完璧に把握してるんだ。そしてその時間になるとやってくる

「今日は6時までだったよな」

 

 女を連れて・・・


 奴は言う「昔のことをばらされたくなかったら言うことをきけ」と。龍ちゃんと風間さんと仲がいいのを知って、それにつけ込んできやがった。


 知られたくない、二人には

 僕の過去を・・・


「いい子にしてろって。悪ィようにはしねぇからよ」

 ずけずけと家の中へ入り込んでくる。

 後ろにいる奴の女が通り過ぎ様にニヤニヤしながら僕を見上げてきた。ケバイ、元の顔が分からないほど化粧を塗りたくった女。


 奴が奴なら女も女だ


 仕方なしにバイトへ向かう。

 奴は昔の弱みにつけ込み僕の家に来ては女と遊んでいた。一人暮らしをせずに自宅から通ってる奴はろくにバイトもしてないのかお金もないんだろう。だからうちに来る。


 僕の部屋は杉本のホテルと化している


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