chapter 2 − recollection − 5月20日
――― 5月20日
まずい!
非常にまずい!!
なんてついてないんだ
悪夢だ・・・
ついにサークルが始まったんだ。
風間さんが去年創立させたばかりのそのサークルには一、二年しかいない。彼女がその全てを仕切ってる。
サークル始動初日。
始まったのは良かったんだ。
一、二年生の対面式、その場で凍りついた。言葉を失った。
「あっれー、近藤?近藤じゃねぇか?」
絶句
杉本だ!
杉本利夫がいたんだ
信じられない
何で奴がこの大学にいるんだ!?
「ひさしぶりじゃんよ〜、元気してたかぁ〜?」
奴は馴れ馴れしく僕の首に腕を絡ませ顔を覗き込んできた。
何も言えなかった・・・
「なんとか言えよ、おい、」
睨み返す僕に冷たく鋭い眼差しをぶつけてきた。
「・・・まあいいか・・・よ・ろ・し・く・な」
僕の頬をペタペタと軽く叩き二年生の仲間の中へと消えていった。
杉本、奴とは高二の時だけ同じクラスだったんだ。
高校時代の憂鬱の原因の大半は彼にあった。
高校時代、すでにこの容姿になっていた僕は、人から言わせるところの理想になったらしい。それがあの悪夢を招くなんて思いもしなかったんだ。
彼女は自ら僕に近付いてきた。
彼女とは当時の杉本の彼女だった女だ。名前なんて思い出したくもない。
そいつは杉本と付き合ってた。なのに言い寄ってきたんだ。僕もそいつと奴が付き合ってたことは知っていた。いや、知ってたでは済まされない。
委員会に所属していた僕とその女はいつも帰りが遅かった。委員会に所属してる人数なんてたかが知れてる。そんな中そいつはやけに馴れ馴れしかった。人も限られた中でおのずと話す機会も多くなる。初めは相談を持ちかけられたんだ。「付き合ってみたらイメージと違った」「利夫の言動についていけない」「住む世界が違ったのかも」等々・・・
もともと優柔不断な僕にも責任はあったのかもしれない。彼女の話を聞いてあげる習慣がついてしまったんだ。そんなただの相談役のつもりが彼女にとっては恋心に変わってしまっていたんだろう。
帰る方向は一緒、いつも帰り道は真っ暗、そんな中彼女は手を繋いできた。ハッとして固まる僕に彼女は言ったんだ。
「好き」
―――ドサッ、
後ろからの物音に二人振り返るとそこには鞄を落とし愕然と立ち尽くす杉本がいたんだ。
言わずもがな、次の日僕は血だるまにされた。
杉本はクラスの中でも一目置かれている曲者で悪い噂の絶えない奴だった。
彼女がその後どうなったかなんて知らない。
学校に来なくなっちゃったから
そのまま転校しっちゃったから・・・
でも彼の怒りは完全に僕への八つ当たりへと変わっていったんだ。
毎日が地獄だった
高三になり僕は理系、彼は文系のクラスに別れあまり顔を合わせることもなくなりはした。それでも僕は人の女を盗った男、そして虐められっことしてのレッテルを貼られたままだった。
村八分状態
生きてる心地がしなかった
成績はガタ落ち、僕の全てが狂わされた。
奴によって
杉本利夫によって全てを狂わされたんだ
そして奴は一つ先輩とゆう身分で再び僕の前に姿を現した
最悪だ・・・