Journey to the West 閑話 第1話
随分未来、旅の途中の、平穏なオハナシです。
「生まれたときは、全く原初のDNAだったと。尊行者は言い張るわけですか」
「だって本当だよ、しかたないよね。本当のことだから」
「あ、大事なことだから2回言いましたってか、てか」
「強調しただけだよ」
「あ、うんざりしてるな、俺ぁやっぱ、原初なら原初のままが羨ましいよ、ちゃんとした人間なんだろ?」
「ちゃんとした、という表現が当初からの尊行者に当てはまるとはとても思えませんですね」
「そりゃないよ、だって私は元々老人で、老いすぎていたからね、思考から何から。リハビリに大分かかったような気がするね」
「ちっちっち、そんなわけねーよ、絶対暴れまくってるに違いねーよ」
「そうですね、拙僧も想像できますです」
「いや、そう決めつけるのは良くなかろう。我も、まさか遊星衝突以前の人間が生きているとは、思いもしなかった故」
「いやいやこいつぁ複製ですぜ。意識こそコピーされとりますが」
「複製でも、いいだろ別に。意識自体は連続してるんだからね」
「それも微妙な話ではありますです」
「あ、ちょっと、まってな……ほれ、マの葉っぱだ、みんなかじれよ、まずいけど楽しいぜ」
「いや、私はかじってもすぐ分解されるから意味がないんだがね」
「拙も遠慮しますです、あなたせっかく五葷三厭断っていたのに、名前だって八戒って頂いているのに、弟子入りしたらすぐに破るし、こんなものまで食べるのは良くないですよ」
「……喝!」
「ブギュー!いや、わかりましたわかりましたお師匠さん、もうしませんもうしませんよ」
「あいたたた、なんで私まで」
「……すみません、なぜかわわかりませんが、尊さんにも仏罰が同時に発生してしまいました。気をつけます」
「おい、イノ野郎、まーた私に迷惑かけよって」
「あははは、いやわりぃな、いや、それは俺関係ないじゃんよ」
「「そんなこたー無い」です」
「えぇ!まあいいや、そろそろ飯にしようぜ」
「まだ早くはありませんですか」
「ああ、まあ、そろそろ中天だけどね。まだあんまり進んでないような気がするけどね」
「ひひひーん(すぐ先の草原が休憩に適しているぞな)」
「……少し早い気もしますが、龍も言っていることですし、しばし休息を取りましょう」
「うっし、火を熾すぞ!」
「おぉい、走るほど元気なら……行ってしまったね」
「尊行者、それにしても、あなた実は大変年を召されていると思われますです」
「そうよな。我などまだまだほんのひよっこぞ」
「お師匠さん、そりゃーないですね、言っても合計1000年はほぼ眠ってましたからね。」
「それでも最初と途中と今で合計数百年は生きているんでしょう、大したものではないですか」
「言ってる沙和尚だって同じくらいは生きてるんだよね?」
「まあ、堕ちてからを足すとそのくらいかもしれませんです」
「龍だって、長命だろう」
「ひひーん(吾は忘れた)」
「ああっ、あんなに木を燃しては、尊行者、謝和尚、早く止めるように」
「あはは、えらいことだね、ハイわかりました」
「ははっ今すぐ」
「……なんともはや、適当な者たちだが、これで三千世界で最高の戦闘継続力を持ち、御仏の信心篤いというのは、どうしたことなのだろうな、龍よ」
「ヒヒン、ヒヒーン(吾も、簡単にやられましたからな。外見に騙されてはなりませんぞな)」
「騙されるつもりはないが、これはとても貴き修行でもあるはず、あれらの様に軽くてはどうにも不敬な気がしてならぬ」
「ヒヒヒヒーン(いざと言うとき頼りになればいいぞな)」
「それはそうなのですがね……なんだか我僧まで落ち着きがなくなっていくような気がしてなりません。今までの修行が、フイになりそうで恐ろしく感じる気持ちがあります」
「えぇ!米が切れてるって!しゃあない!ここは餃子を作ろう!」
「待て待て、どこに材料があるのかね?」
「ほら、韮も大蒜もあるし、ごま油もあるし、酢もあるし、えーと、肉は、まあ豆はあるから湯がいて潰せば、それっぽくなるぜ」
「今からそんなことしてたら日が暮れますです」
「じゃ、何なら俺の腕か脛を切って、それをお師匠さんに癒やしてもらって、料理に使えば……」
「そんなもの食えねーよ!」
「気持ち悪いです」
「喝っ!私は肉は食わないと何度言ったら!いや、その前に御前の体を食べるなど、師匠ととしてあるまじきこと!八戒は本日飯抜きを命じる!反省せよ!」
「……ぇえ、そんなぁ……(おい、尊よ、ちょぉっと分けてくれよ……)」
「ああもううるさい、イノ野郎!」
「ひひーーん(毎日毎日飽きないものよ)」
「プギュー!」
すみません、風邪っぽくて、ちょっとストップです。
休みの間にトシオの話を久々に読み返して、自分で思ったより面白かったので、ちょっとこっちを続けようと思っています。ただ、こっちも後数話で一区切りのはずなので、そのうち続き書きます。
継続して読んでくださっている方には大変申し訳無いです、お待ち下さい。