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一話 帰還と自由城塞都市

「ギャァーー」

 薄暗い洞窟に断末魔の叫びが響き渡っていた。

 最奥部には納屋が一軒スッポリ入る広さがある。

 あたりには血を流さないゴブリンは一体もいなく、すべてが屍と化していた。

 屍の上を立っているのはドス黒い返り血を浴びた金髪碧眼の少年がいる。

 そしてその両手には普通のブロードソードにしては少し柄の長く、柄頭がない剣を握っている。

 彼、レオンハルトはまだ十代半ばで一介の傭兵に過ぎないがその実力は一流には劣る二流傭兵程だ。

「ここら辺ので銀貨を五十枚かな」

 レオンハルトは剣を振り、付着していた血を落とし腰に下げた鞘に戻すと、屍と化したゴブリンの持ち物漁り始めた。

 出てきたのは穴の空いた大銀貨と動物らしき牙が出た。

 荷物を漁り終えると屍の腹部に短剣と刺し肉を裂いた。

 中からは虹色に輝く宝石が姿を表した。

 魔石だ。

 素手で魔石を鷲掴みしてブチブチと音を立てながら引き抜かれた。

 引き抜いた魔石を松明にかざした。

「純度はそこそこかな」

 光にかざされた魔石は少し曇っていながら透きとおっていていた。

 百体あまりある屍にも同じく行った。




「これで任務完了と」

 最後の一体から魔石を抜き取り、腰に下げた、今にもはちきれるくらいまでパンパンに膨らんだ巾着を、ポンポンと叩いた。

 レオンは新しく松明を作り、消えかかっている松明から日を移した。

 そして出口に向かってあるき始めた。

 しばらく進むと反対側から他の傭兵が三人ほどこっちに向かって来ている。

 レオンハルトは無言のまま擦れ違おうとすると声をかけられた。

「こっちはもう方付いたのか?」

「あぁあらかた」

「そうかありがとう」

 そんな短い会話を終えて別かれるとレオンはゆく道を進んだ。

 数時間曲がりくねっていて、分かれ道の多いに洞窟を彷徨いながら進んでいると、風が吹き込んで来るのが感じられた。

 少しいて洞窟の出口が見えてきた。

 外に出ると夜になっていた。

 洞窟の付近では数個の天幕が設営されていた。

 レオンハルトは一番端の空いた空間で焚き火を起こし眠りに付いた。




 翌日、日が昇るとともにレオンは起き上がる。

 干し肉を水でふやかし軽く食事とる。

 荷物をまとめて自由城塞都市に向かってあるき始めた。

 自由城塞都市は洞窟から南西に歩いて何も起こらなければ半日ぐらいで辿り着く。

 洞窟を出発して半刻がすぎるとレオンの目の前に熊の形をした魔獣が現れた

「……ガルウゥ」

 熊の魔獣はレオンを睨み今にも噛み付こうと体を低し構えている

「こんな時にまで魔獣か」

 レオンハルトはため息をつき渋々剣を抜き魔獣に突っ込んだ。

 刹那、剣の軌道は目にも留まらぬ速さで魔獣の頭を切り落とした。

「こんな街道まで出て来ないのだが」

 魔獣の魔石を取り出し、新たに別の巾着に突っ込んだ。

 魔獣は森の奥に出現して滅多に街道には現れない。

 獣の形がハッキリした魔獣はあれないが高位の魔獣は話は別になる。

 下位の魔獣が街道に現れることは森で何かが起きている証拠だ。

「まあいい、この事は事務所に報告しとくか」




 ほどなくして自由城塞都市の城壁が見えてきた。

 自由城塞都市は円形に作られ八つの区画に分けらている。

 城門の前は十数台の馬車が列をなしている。

 いつもなら馬車はすんなり通してくれるのに今日は検閲をしている。

 特に荷馬車は厳しい。

 レオンハルトは手の空いている門番兵に近づいて行く。

「なあ、何があたんだ?いつもならすんなり通るはずの馬車の荷物なんか検査して」

「ここ数日、麻薬の取引が多くてよ事務所の連中が騒いでんのなんの、そんで荷物検査を行ってる訳だ」

「あんた等もちゃんと仕事してるんだな」

「おめぇは俺らが仕事しないように見えてたのか?」

「当たり前だろ門の隣で酒を飲んでることしか見てないからな」

 門番兵は苦笑しながらポンポンとレオンの頭を叩いた。

「それはヒデェ言われようだな。んでその中は俺は含まれるのか?」

「それはどうだが」

 二人は顔に笑みを浮かべながら笑った。

 しばらくして門番兵は笑うことを辞めレオンハルトを向いた。

「それよりボウズ道草食ってるより事務所に行かなくていいのか」

「あぁそうだった。それじゃあまたいつかゆっくり話そう」

 レオンハルトは門番兵に別れを告げると大通りの真ん中を突き進んでいた。




 町中は昼近くに差し掛かっていて多くの人が行き交っている。

 人の波をかき分けながら進む行き先は、町の管理運営から依頼の引受、発行を担っている傭兵事務所だ。

 事務所は都市の西側にある、第三区画にあり、二、三件の建物をつなげた大きな建物だ。

 中は酒場も兼業していて、そのほとんどが傭兵だ。

 昼にも関わらず酒を飲んでいる者が大半を占めていて一部の人間は掲示板の前で依頼書を見ている。

 レオンハルトは掲示板の隣に設けられたカウンターに向かった。

「おい!レオこっち来て飲もうぜ」

「昼間から酒盛りですか。いい加減依頼でも受けたらどうですか?」

「わぁったから報告してこい」

 ため息を吐きつつカウンターにたどり着いた。

「すみませんー」

 誰もいないカウンターの奥から一人の若い女性が現れた。

「ご要件は何でしょうか?」

「依頼完遂の報告です」

 レオンハルトは腰に着けたポーチから一枚の筒状に丸めた依頼書と巾着をカウンターに置いた。

 受付嬢は丸まった依頼書を広げて依頼内容を読むと、巾着からいくつかの魔石を取り出した。

 それを魔法陣の描かれた板の上に置き、魔力を流し始めた。

 魔法陣は次第に輝きだし、しばらくすると輝きを失った。

「確かにゴブリンの魔石で相違ありません」

 魔石には魔物自体の情報が埋め込まれて特定の魔術で確認することができる。

「こちらゴブリン一匹につき大銅貨五枚、百四ヒキの討伐で計大銀貨五枚と銀貨二枚になります」

 カウンターに銀貨が支払われた。

 レオンハルトは巾着に魔石を詰め直し、銀貨を持ってその場を離れた。

 酒場で飲んでいる傭兵たちに酒を薦められたが、断り事務所を出た。

 宿場町は都市の北西にある第四区画に向かった。

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