目撃証言 5
焼け落ちた漁村から街へ戻り、件の冒険者チームが収監されている騎士団への詰所へ。
収監されている冒険者チームのリーダーへ話を聞きにいった。
冒険者:獣人:男性:30歳
⁉︎
なんだよ、騎士様かよ…脅かしやがって…なんだい?ソイツは。
あ?俺らが襲った村の経緯を聞きたがってる記者だぁ?
こんな話し聞いたって面白くも無いだろうによ……
わかった!わかった‼︎話すから剣に手を置くんじゃねぇよ⁉︎
…っけっ!あのクソ商人には貧乏クジひかされたぜ…ったく。
俺らはこの街を拠点にしてるB級の冒険者チームだった。
盾戦士の熊獣人の男
剣士の人族の男
盗賊の俺
弓使い兼、精霊術士のダークエルフの女
魔術士の人族の男
あいにく回復役が居ないが、中々バランスのとれた良いチームだろう?
あ?犯罪に手を染めておいて良いチームもなにも無いって?
……まぁ…そうだな…ああ、身から出た錆だ。
◆
「ちっ…最近の組合はシケた依頼しか無えな。ちっとも稼げやしねぇ!」
「前回の依頼料で装備を新しくしたから早く性能を試してぇ…新人狩りでもやるか?」
「やめろ!くだらん…新人など相手にしても、お前ご自慢のミスリル装備の性能など発揮できるわけなかろうが。」
「そうだねぇ。また指名依頼でも来てくれれば懐も潤うんだけどねぇ…。」
「僕は新しく手に入れた魔導書を読む時間が取れるので構いませんが、新しい魔法は試したいですね。」
安酒しかないが、値段の割に量がある冒険者御用達の酒場でクダを巻いている時に件の商人が声をかけて来た。
「おや、こちらにいましたか。探しましたよ皆さん。こんな所で昼間から飲んでるなんて最近はご活躍されてない様ですねぇ。」
「うるせぇ!そんな事より、大商人様がわざわざ俺たちを探してるとは光栄だね、何の用だ?」
コイツは胡散臭いが美味い話を持ってくるから侮れねぇ。
俺らみたいに裏っ側で繋がってる奴らは結構な数になるって噂だ。
全く全貌を掴ませねぇ所が一層不気味な印象を与えやがる。
ほかの仲間も商人の動向を注意するため、交渉担当の俺以外は口を挟まずに見ている。
「これは失礼。いやね、最近商人組合の方で耳寄りな話を聞きましてね。」
「ほ〜。そりゃ良かったな。大商人様は忙しそうで羨ましいねぇ。」
「いえいえ。ですから皆様にも一口かんでいただこうかと思いまして。」
「ほう…なんだい?稼げる話かい?」
「そりゃもうね…貴方がたに下手な話は持ってこれませんよ。先日たまたま商人組合にいましたら、ハーフリンクの行商人が珍しい素材を卸してましてね…」
たまたまなんて言っているが、コイツは人の上がりを掻っ攫っては自分の商売の資金にしてる最低の野郎だ。
大方そのハーフリンクの行商人も組合で目立っちまったんだろう。
「行商人が珍しい素材を売りに来るなんざ珍しくも無いだろうよ…だが、それでも話題に出すってこたぁ…相当な代物なんだろう?」
「くくく…お分かりになりますか…流石ですね。貴方がたがご存知ない所をみますとまだこの話は広まっていない様ですね。」
「ゴタクやおべっかなんざいらねぇ。勿体ぶらずに本題を話しな。アンタも忙しいだろう?」
「はいはい。それがですねぇ、持ち込まれたのは鉱石喰らいでしてね…」
「へぇ…確かに鉱石喰らいはここいらじゃ珍しいけど…大騒ぎする様なもんじゃ無いよね?」
「そうです。鉱石喰らいは北方の山脈にある鉱山都市に行けば手に入りますからね。問題は大きさと入手経路…そして材質です。」
「はぁ〜ん…読めて来たね…鉱石喰らいはソイツが食べてる鉱石によって素材の質が変わるって話だろ?…って事は持ち込まれた素材は貴金属、あるいは宝石の類だったって事かねぇ。」
「大きさとも言っていたな。小さいなんてな話題にもならねぇだろうから随分と大きかったんだろう?」
「だが、入手経路が入っているのが腑に落ちん。順当に考えれば、誰かが討伐したものを譲り受けるか買い取ったのだろう。」
仲間が興味を持って話に食いついて来やがった…確かに興味をそそられる話だ。
だが、それが何だって言うんだ…行商人の上りを奪えって話か?
「くくく…良い線いってますよ皆様。持ち込まれた素材は鉱石喰らいの亡骸。残念ながら鉱石は無く、骨の材質にミスリルが含まれていました。大きさは推定ですが胴回りが人族の大人2人で抱えて手が回るほど。そして入手経路が…」
◆
あ?そうだよ、金属製の骸骨が倒して海から上がって来たってな…。
なんだ、アンタ知ってるのか。
ああ、村人が行商人に素材を売ったってのも知ってんだろう?
他の関係者に聞き込みをした?そうかよ。
依頼をして来た商人の目的は何だったって?村1つ潰すんだから相当な理由だろう?
まぁな…俺らもまんまと乗せられちまうぐらいにデカい儲け話だったぜ…
◆
「何をバカな事言ってやがる。悪巧みのしすぎで頭でもイカレちまったんじゃないか?」
「まぁまぁ。貴方のその反応は正しいと思いますがね、私は実際この目で素材を見てますからね。それに、行商人は鉱石を商人組合には卸していない…となれば北方の鉱山都市の鍛治組合に持っていくのでしょう。その方が買取り価格が高くなる。」
「なんだぁ?俺らにその行商人を襲えってか?つまんねぇ依頼だな!」
「ハーフリンクの行商人ですから単独で重たい鉱石を持つ運べるとは思えませんし…商隊が入って来たなんて話は聞かない…となるとマジックバックでも持ってるんでしょうね。」
「流石ですね!その通りですが、そちらの方はすでに手を回しております。」
「あ?じゃあ俺らに何をさせようってんだ?つまんねぇ事を言いやがったら張っ倒すぞ!」
突拍子も無い入手経路の話で、熊獣人の盾戦士がイラついて来やがった…血の気が多くて気の短いヤツはこれだからめんどくせぇ…
「落ち着けよバカ。つまんねぇ事なら、わざわざコイツが探しに来る訳ねぇだろうが‼︎」
「ありがとうございます。行商人の方はあくまでおまけです。本命はコッチの話しなんですよ。」
「いいだろう。聞こうじゃないか。」
◆
行商人を襲う予定の奴らはどうしたって?俺が知るかよ!
まぁ、騎士の連中が言うには商人が捕まったついでに何組か芋づる式で捕まえたらしいからそん中にいるんだろうよ。
商人の狙いだったな、それは鉱脈だよ。
そう。ヤツはミスリルの鉱脈のありかの情報と労働力として金属製の骸骨が欲しかったんだ。
◆
「どうです?その骸骨は人の言葉を理解しているので会話ができ意思の疎通が可能だそうです。」
「だから、鉱石喰らいの出所の情報と、最悪海底に鉱脈があったとしても本当に金属製の骸骨いるならば採掘が可能だって事か…。」
「さらに骸骨は人じゃ無いから人権は無いってか?」
「その通り!皆様方が骸骨を捕まえたあかつきには、管理人として鉱脈からの上がりの一部を報酬として差し上げようかと考えております。また、管理人にならなくても破格の報酬をお約束いたしますよ。」
「ふん。眉唾な話だが面白い。アンタが胡散臭くても信用してやる。」
その後、詳しい話と要望を聞き契約を交わす。
「くくく、本人を目の前にして言いますかね。では商談は成立と言う事で…。こちらのお代は払っておきますよ。」
「悪いな。準備が整い次第出発する。」
商人が出て行った後、俺たちは酔いを醒ましそれぞれの準備をしに街中へ向かった。
準備が整って出発したのは翌日の昼だった。
◆
そうさ。鉱脈の支配者でなくても管理人になりゃあ、かなり稼げる。
仕事なんざ頭の良いヤツを雇ってしまえば残りの金で楽ができるって俺らは目の色を変えてたってわけさ。
ああ。金属製の骸骨で鉱石喰らいを倒したっても1人、俺たちは腐ってもB級冒険者のチームだ。
それにヤツの依頼で稼いだ金は盾戦士のミスリル装備しかり、充実した装備に反映してある。
ははは、お笑い草だ…この時俺たちは骸骨の実力なんて考えて無かったのさ…
◆
貸し馬車で西門を抜けた俺たちは件の漁村に向けて出発した。
馬車の中では鉱脈で稼いだ金の使い道なんかで盛り上がってたもんさ。
「鉱石喰らいを単独で倒せるほどの者か…腕がなるな。」
「僕も新しく覚えた炎系の魔法が通じるのか試したいですね。」
「おいおい。壊しちまったら鉱脈の場所に案内させられねえだろうが!手加減しろよ?まったく。」
途中野営をして最終的な準備と骸骨を捕縛する作戦を練った。
そして件の漁村の近くに馬車を隠し俺とダークエルフは村へ偵察に出た。
村ではタイミングの良い事に広場に村人が荷物を持って集まっていた。
ダークエルフを監視役に置いて俺はすぐさま仲間の元へ戻り、簡単に作戦を修正して決行の合図を飛ばした。
◆
作戦の内容だ?骸骨は村人へ無償で高級素材を提供しちまうほどのお人好し。
しかも会話ができるって話しだったからな、村人を脅して一箇所にまとめて人質にした上で骸骨に投降するように圧力をかけるのが手っ取り早い方法だと判断した。
だから弓使いを見張りに残し、村人を一箇所に集めるため脅しに魔術士に1発、特大の炎の魔法を放たせた。
◆
ゴォウ!ボガァ‼︎ゴォオオオ…
魔術士の放った炎の槍が広場近くの民家に当たり盛大に燃え上がる。
「オラァ!村人ども全員一箇所にまとまれやぁ‼︎」
「我々は気の長い方では無い!早くしろ‼︎」
盾戦士と剣士が怒声を放ちながら村人どもの方へ向かう。
村人どもは一瞬何が起こったか解らなかったようだが段々と状況が飲み込めて来たようだ。
「ほら、早くしないと僕の魔法の練習台になっちゃいますよ?炎の槍!」
ボガァ!ゴォオオ…
魔術士が周辺の家に向けて無作為に魔法を放つ。
「なんなんだ!アンタら‼︎何の恨みがあってこんな事…」
「あ?なんだお前?別に恨みなんかねぇ…ここに金属製の骸骨がいんだろぉ⁉︎早く連れてこいや!」
「なんと!御使様を連れて来いじゃとぉ…」
「…なんと罰当たりな…」
村人を脅してはいるが一向に骸骨を渡そうとしねぇ。
それどころか神様の使いだなんだのと口々に喚きやがる。
「うるさいな。口答えするとこうだよ?炎の槍!」
ヒュガッ!ボォオオオオ…
「あぁ!あの家には婆さんがまだおるだ⁉︎」
「なんて事を…」
「オラァ!早くしねぇと全部燃えちま
バガァァァン‼︎
う…ぞ?」
…ッゴシャ…ガラガラ…
いきなり燃えてる家の扉が吹っ飛んで来た。
燃え盛る炎の家、破壊されたドアの中から現れたのは老婆と荷物を抱え村人の服を着ている金属製の骸骨だった。
骸骨は確かに金属製でダンジョンにいるゴーレムや錬金術師の使役しているゴーレムとは違い、老婆との会話や意思の疎通が出来ている。
しかし、あんなヒョロっとした骸骨が本当に鉱石喰らいを単騎で倒したってのか?
「お前が例の骸骨か…ようやく現れやがったな…っておい!」
骸骨は俺らを無視してババアを抱えて村人たちの元へ歩いて行きやがった。
その行動に盾戦士の熊獣人がキレた。
「俺らを無視してんじゃねぇよ!このっ‼︎」
ゴガッ‼︎…ドシャァッ‼︎
良く見えなかったが、殴りかかった熊獣人を裏拳で吹っ飛ばしたらしい…
あの巨体をヒョロい骸骨が…見た目では判断できねぇってか⁉︎
骸骨はこっちを向く事なく村長に何か指示を出していた。
「ぐうぅっ!この…骸骨野郎がぁ…‼︎」
「おい!早く立て‼︎村人達が…」
骸骨の向こう、村人達が口々に骸骨にお礼を言いながら移動を開始してやがる!
「御使様…ありがとうごぜぇましただ…」
「このご恩は生涯忘れはしねぇだよ。」
「また会えると良いだなぁ…オラァ引越し先で待ってるだぁよ…」
「直接ご恩をお返しすることはできねぇだども…ご無事でいてくだせぇ。」
「オメェら!勝手に動くんじゃねぇ‼︎オイ⁉︎」
隠れてる弓使いと魔術士に指示を出して牽制させる。
ビシュシュッ!ギキィ‼︎
「⁉︎」
弓使いが速射で3矢を村人に撃つも先回りした骸骨の身体に弾かれる。
「っ⁉︎このっ火球‼︎」
ボボァ!ゴバァ‼︎
魔術士が火球を連射するも骸骨は意に介さず、俺たちと村人達の間に立った。
「ちっ⁉︎この程度の炎系は効きにくいか!」
「みんな!早くここから離れるべ‼︎御使様の邪魔になるだ‼︎」
◆
金属製の骸骨がそんなに素早く動けるのかって?
この目で見た俺も未だに信じられねぇよ…
奴は弓使いや魔術士の速射も予測して動いてるのか、確実に村人に向かう攻撃を防ぎ切りやがったんだ。
◆
村人達の歩みは遅いが確実に離れていっている。
何人か人質に取りたいが骸骨が予想以上の素早さで弓や魔法を防いでしまう。
コイツは思った以上に厄介な相手だ…。
「おい!奴の動きを止めろ‼︎」
「うぉおおおお!」「ちっ‼︎」
ゴッシャァ‼︎ ズガン‼︎ガラガラガラ…
「どぉでぇ!ちったぁ効いたろ‼︎」
盾戦士が盾突撃で骸骨を吹き飛ばし民家の壁をぶち破った。
ガラガラ…
骸骨が瓦礫を物ともせずに起き上がって来やがった。
大して効き目が無かった様に見える骸骨に熊獣人が再びキレた。
「くっ!なぁめんなぁあああぁぁ‼︎」
「まて!様子がおかしい‼︎」
剣士が骸骨の変化にいち早く気がついたが熊獣人は再び盾突撃をしかけに突撃する。
ゴッガァァァッン‼︎ ガッシャァァァン‼︎
俺は我が目を疑った…吹っ飛ばされたのは盾戦士の方だった⁉︎
しかもヤツ自慢のミスリルの盾にヒビが入ってやがった⁉︎
「ぐ…があぁ…」
腕が折れたのか痛みに悶える熊獣人に起き上がった骸骨が近づく…その姿は黄金に輝き…一回り大きくなってやがった⁉︎
「っくらえ‼︎」
ガガキィ‼︎
剣士の鋭い剣撃も骸骨は無視して熊獣人に近づいていく。
弓使いと魔術士も合間を縫って骸骨に攻撃を仕掛けるが、意に返さない。
「ぐ…るぅぅぅ…このバケモンがぁぁ‼︎」
脂汗を大量に流し、痛みを堪えて立ちあがり無事な方の手で戦鎚を持ち殴りかかった熊獣人に骸骨が拳を放った!
ゴッ! ガズン‼︎
ゴッシャァァァッン‼︎
戦鎚を交わし懐に飛び込んだ骸骨が熊獣人の右肋骨あたりを一撃して吹っ飛ばした⁉︎
◆
ああ。ミスリルの鎧も意味を成さなかった…処分されてなかったらあとで奴の鎧を見てみるがいい…骸骨の拳の跡が残ってるだろうよ…。
◆
「はぁ…はぁ…はぁ…」
「くっそ!効いてねぇ‼︎」
「おい!体制を立て直すぞ‼︎」
ボッ!ブシュウウゥ…
俺は煙玉を放って奴の視界を防ぎ、剣士と魔術士を下がらせた。
煙りに巻かれて姿は見えないが、骸骨は動きを見せていない…。
村人達はすでに村から逃げてしまったが、骸骨を放っておいて追いかける事もできない。
ガラガラガラガラ⁉︎
焼け崩れた家に気をとられ、視線を煙に戻すと骸骨の姿が見えない⁉︎
「ぎゃぁぁぁっ⁉︎」
バキバキバキ! ドシャ‼︎
木の上に隠れていた弓使いがやられただと⁉︎
気を失っているのか、身じろぎもしない弓使いの側に骸骨が立っている…。
足元には折れた弓と矢筒が散乱していた。
弓使いの腕も妙な方向に曲がっている様に見える。
ゾゾッ⁉︎
おれは背中を駆ける悪寒に震えた。
気絶した弓使いには目もくれず一歩一歩こちらに歩いてくる骸骨。
「う…うわぁぁ!電撃‼︎電撃‼︎電撃‼︎」
ガカッ!バリバリバリ‼︎
「っ危な⁉︎このバカ‼︎至近距離で電撃なんぞ放つな!こっちまで巻き添えを食らうだろうが⁉︎」
ボッ⁉︎ ガシ! バリバリバリ‼︎
「ぎぃ⁉︎」
ドシャ…バキャ‼︎
雷撃の煙を抜けて骸骨が瞬く間に魔術士の喉を掴み…金属製の身体に帯電した電撃を魔術士に返しやがった…いくら対魔法効果のあるローブを着ていても直接流し込まれちゃたまったもんじゃない…。
「ひっ…来るな!うわぁぁぁ⁉︎」
バキン‼︎ ボグッ! ボキャ!
「グァッ‼︎」
恐怖に凍りついた剣士に骸骨は容赦無く剣を折り、殴りつけ、肘を砕きやがった⁉︎
「ひっ…ひやぁぁぁぁ⁉︎」
◆
俺は骸骨から逃げた…。
仲間を見捨てたのかって?ああ、そうさ!盗賊の俺1人じゃあんなバケモノに何ができるって言うんだ⁉︎
毒も罠も効かねぇんだぞ⁉︎
恐怖のあまり、仲間を気遣う余裕なんて無かった…
◆
「はぁ はぁ はぁ ひっ!」
俺は走った!林の中を斥候の技術を駆使して骸骨を撒く様に‼︎
木々の生い茂る方、奴の視線を遮れる木々の合間を縫う様に。
やがて獣道も外れ薄日の差すだけの深い方へとダミーの痕跡も作りながら逃げた。
だがヤツは追ってきた…いくら逃げても着実に近づいて来やがる…
「はぁ はぁ はぁ はぁ…」
とうとう俺は全力で走るしかなくなった…振り返ると木々の間に金色が見え隠れする…
どれぐらい走ったのか…俺は木の根に足を取られて派手に転んで斜面を転げ、川に落ちた。
「ゲハッ!ガハ ゴホ‼︎ ぜぇ…はぁ…はぁ…」
対岸に上がり肺が欲しがるまま呼吸を整えて顔を上げると目の前には…
◆
ガタガタガタ…
や、やつが目の前にいやがった…恐怖のあまり硬直した俺の目を奴の仄暗い眼球の無い眼が見つめていた…。
俺は暗闇の中に確かに見た…紅く燃える怒りの炎を…そしてヤツは俺に言った…
…次はない…
そして膝に激痛が走り俺は意識を手放した…
気がつくと、俺は縛り上げられて村の広場に転がされていた…直後襲って来た激痛に耐えて痛みのの場所を見ると両膝が砕かれていた。
周りでは仲間も呻き声を上げていた。
…そうさ、俺たちは全員骨折なんかの重傷を負わされた上に縛り上げられて一箇所にまとめられてたんだ。
そこからはアンタも知ってる通り、騎士どもに捕まって牢屋にぶち込まれている。
なぁアンタ…悪いことは言わねぇ…あの骸骨を追うのは辞めた方が良い…
今でも目を瞑ると奴の紅い目が俺を観てる気がして眠れねぇんだ…。
「隊長…あの記者何者なんです?普通は重犯罪者に面会なんて出来ないですよね。」
「ああ。上からの命令だ、我々は従うしかないだろう。」
「しかし、気になりませんか?」
「あのな、ちょっと考えれば判るだろう?上を動かしてこんな要求を通せる力を持った連中だ。下手に詮索して飛ばされたりしたくなければ、この件に関しては目と耳と口を閉じておく事だ。」
騎士団の当時の担当者にも話を聞いたが、骸骨の姿はなく、痕跡も途絶えていて捜索を続けるかは上司の判断によるとの事であった。
捜査は続行するように団長宛に親書を渡して収監所を後にした。
これで完全にヤツの足取りが途絶えてしまった。
一度集まって今後について話し合いを持った方が良いかもしれない。