目撃証言 3
あの後、結局老人と会うことができなかった私は骸骨の足跡を追う為件の村へと向かう事にした。
街道沿いに設置されている野営をする為の寄り合い休憩場で幸運にも鉱石喰らいの素材を購入したと言う行商人と出会うことができた。
私は興奮を隠しつつ、彼に骸骨についての取材を開始した。
18/8/16 本文一部変更
行商人:ハーフリンク:男性:25歳
いやぁ…記者の人に取材されるなんて人生何が起こるか解らないね!
あの事件ってもうそんなに噂になってるのかぁ…確かに大変な事件だったもんね〜。
え?そんな大事な事件が起こってたのかって?
そりゃぁもう大変だったんだよ!なんせ村が1つ無くなったんだからさ⁉︎
ん?街に越してきた老人からはそんな話し聞いてないって?
あ〜漁村の人から話を聞いたんだね〜、そりゃぁ記者さんが追ってる骸骨くんのお陰で街に引っ越す事ができたけどさ、村が無くなっちゃったんだから喋りたくなかったんじゃないかな?
だったら、僕が知ってる事を教えてくれって?
もちろん何か僕の商品を買ってくれるよね〜?
何苦笑いしてんのさ!
情報だってタダじゃないって記者さんも解ってるでしょ?
うん?それなら骸骨由来の物が欲しいって?
そうだなぁ…コレなんかどうかな?鉱石喰らいの『砕き歯』さ。
村人達の話が本当なら骸骨くんが退治したヤツの歯だよ!
ミスリル 鉱脈も砕く強度を誇ってる逸品だよ?
僕も大儲けした記念にいくつかキープしてるんだ‼︎
ふむ…その値段ね、よし売った!
じゃぁ、信じてもらえないかもしれないけどね〜僕が見た骸骨くんの話をしようか。
◆
僕は行商人を生業としているけど、大儲けしたい訳じゃ無くてね…そりゃもちろん儲けられれば嬉しいけどね。
広大な世界を見て回りたいって訳でもなくて、僕は身軽に気に入った地域を巡りたいってだけなんだよ。
だから、頑張ってマジックバックを購入して行商人をやってるのさ!
でね、最近寂れてきてるけど人当たりが良いお気に入りの漁村に行った時の話さ。
村に着いても村人の姿が見えなかったもんだから、とうとう閉村しちゃたかと思ったら、浜辺の方から賑やかな声が聞こえてきたのさ。
それで、浜辺に行ってみて仰天したね!
なんせ、巨大な岩ミミズの亡骸の前で村長さんとかが騒いでるんだもん。
「あ、コッチに居ましたかぁ〜。村に行ったら誰も居なかったから、閉村しちゃったのかと思いましたよぉ〜」
村長達に怪我人もいなさそうだから、ホッとして軽く挨拶したら
「丁度いい所に来てくれた!アンタに相談したい事があるんだ‼︎」
村長と鍛治師のおっちゃんが必死の行商で迫ってきたんだ。
巨大岩ミミズに必死の村長…これは儲け話の香りがするね!
行商人になって結構経つから商売の勘もしっかりしてきてるのさ。
だから村長の話に乗り気になってね…
「ありがてぇ!そこに積み上がってる鉱石なんだがな、こちらにいらっしゃる骸骨様が討伐してくださって売り先を探してるんだわ。」
「骸骨様?…ってうわっ⁉︎骸骨が挨拶してる‼︎」
いやもう、色々旅してきたけど、1番ビックリしたね!
金属製でピッカピカの骸骨が、「よっ!」て具合に手を振ってるんだもん⁉︎
しかも漁村の人達は海神様の使いだなんて言ってるしね。
でもって、素材を鑑定してみてさらにビックリだよ!
鉱石喰らいの素材って言っても大体は屑鉄の鉱脈を掘り進んでるから大した鉱石は出てこないじゃん?
所が、この通常よりも巨大な鉱石喰らいはミスリルの鉱脈でも掘ってたのか希少金属がわんさか素材として出てきてたんだよ!
更にさらに!骨とかさっき売った『砕き歯』なんかはミスリル 以上の高度を誇るレアな素材になってたしね⁉︎
だから、僕の全財産(マジックバックを除いて)で購入したって訳!
◆
え?足りたのかって?
バカにしちゃダメだよ記者さん。
マジックバック持ちの行商人は馬車を使うよりもコストが段違いだし、フットワークの軽さも武器になるからね‼︎
記者さんも知ってると思うけど、僕らハーフリンクの健脚はヘタな馬より良いからね〜。
既にバックの元手も回収して悠々自適に楽しんで各地を行商巡りしてたもんさ!
も ち ろ ん 素材を売って儲けを出す算段もしっかりしたしね‼︎
村長に買い取り金を渡したあと、骸骨くんに手伝ってもらって鉱石喰らいの素材をマジックバックに詰め込んだんだ。
彼は外見にそぐわず、気さくに手伝ってくれたよ。
◆
「へぇ…大変だったねぇ、目覚めてすぐにコイツに襲われたんだ…。」
鉱石喰らいの巨大な骨を軽々と持ち上げてマジックバックに入れてくれる金属製の骸骨くん。
「ん?青色かと思ったけど、近くで見ると虹色にに輝いてる…もしかして、キミの体ってオリハルコンなのかもね!」
「え?記憶を失ってるからよくわからないって?そっかぁ…でも崩落があった時や襲われた時には自然と身体が動いていたから身体が覚えてるかもって?」
雑談しながらも次々とマジックバックに素材を詰め込む骸骨くん。
ヒョイヒョイと入れてるけど…鉱石とかかなりの重量なんだけど…力持ちなんだねぇ…。
「あんまり気にしてる様に見えないけど、気にならないの?何かしらの使命を帯びていたのは薄っすら覚えてる?だよねぇ…キミは見た目からして普通じゃ無いもん。」
「おぅい!分配が終わったぞ‼︎お陰で村人みんなで新しい所に引越せそうだ。それこそ街に越しても余裕がある⁉︎2人とも本当にありがとう‼︎」
素材の運搬を骸骨くんに任せてたら、村人の方は分配が完了したみたい。
みんな引越しても余裕ができるほど渡せてたんだったらコッチも嬉しいね!
「今夜はお祝いだ!皆んな広場に食事を持ち寄ってくれ‼︎俺は倉庫に隠してた酒を出すぞ⁉︎」
「なんじゃ村長!やっぱり酒を隠し持ってただか‼︎時折赤い顔してたから怪しいと思っとったんじゃ⁉︎」
「わはははは!」
村人達の様子を眩しそうに眺める骸骨くんに、ふと気になった事を聞いてみたんだ。
「これから、骸骨くんはどうするんだい?」
すると骸骨くんは腕を組んで考え込み始めてしばらく…。
「とりあえず、この村の人達の引越しを手伝って色々覚えたいって?村長さんがこのままだと街に入れないかもって言ってたから、先ずは学ぶ事から始めようかと?」
真面目な骸骨くんだ!気前も良いし、何より優しい心根の持ち主だ。
僕は骸骨くんが気に入ったよ!
◆
何だい?急にニヤニヤして…まるで知り合いが褒められて嬉しいみたいじゃないか。
あながち間違いじゃ無い?
それほど気になって追っかけてるって事かな。
まぁ、村人達も骸骨くんが気に入って…って言うか、崇拝しちゃって色々お世話をし始めてたね。
村人の服を着て歩く骸骨くんはシュールで面白かったよ!
◆
宴会も終わって翌日、さっそく僕は素材を換金しに街へ向かったんだ。
骸骨くんは言ってた通り村人の引越しの手伝いをするために残ったよ。
順調に街について商人組合で鉱石喰らいの鉱石以外の素材を売ったんだ。
かなりの大物だったからか、思ってた以上に高額で買い取ってもらえたんだ!
…それがいけなかったのかなぁ…高額で買い取りされて気が緩んんでたのかもしれないなぁ…
僕はいつもは行かない、高めの酒場に繰り出したんだ。
◆
え?何があったんだって?
これからだよ、記者さん!まだ村が無くなった理由を話して無いだろう?
カウンターでお酒を呑んでたら、声を掛けてきたその街の商人がいたんだ。
◆
「よう旦那、景気が良さそうだな!良い儲け話でもあったのかい?」
「ん〜?誰だいアンタ?」
「この街の商人さ。この店じゃあまり見かけないから気になって声をかけたのさ。」
「ふーん。ハーフリンクの僕がいるのがそんなに珍しいかな?」
ハーフリンクは種族がら旅好きが多く、定住してるのは珍しいんだ。
かく言う僕も行商人なんてやってるからね。
さらには大成して大金持ちになってるハーフリンクなんて一握りだから、高めの酒場には滅多に来ないんだろう。
「気を悪くしたなら謝るよ。俺も商人やってるからね、儲けた人の話を聞いて運気を分けてもらってるのさ。どうだい?話をしてくれたらここは奢るぜ!」
そう言うとこの街の商人は次々と料理や酒を注文し始めたんだ。
「気にして無いよ。悪いね奢ってもらっちゃって。いやね、先日西の漁村でね…」
僕はすっかり良い気分で今回の話をしちゃたんだ…。
◆
そう!怪しいだろう?その商人…記者さんの推測通りさ、どうやら有名な悪徳商人らしくてね…商人組合で高価買取されてたのを見てたらしいんだよ!
え?よく分かったなって?
ふっふ〜ん。ソコは僕の日頃の行いが良かったのさ!
その酒場を出た後に、親切にも忠告してくれた人がいたんだよ。
◆
「いやぁ!旦那、良い話を聞かせてもらったよ!それで、残りの鉱石は後日ドワーフの街に売りに行くんだな?良い商売ができる様に商売の神ネーシャ様に祈ってるよ!」
「こっちこそ、美味しいお酒を奢ってくれてありがとう!」
この街の商人にさんざん奢ってもらって、気分良く宿に向かっていたら路地から声をかけてきた男がいたんだ。
「アンタ…あの男と関係があるのか?」
「ん〜…?…いや、ちょっと稼ぎが良かったから幸運にあやかりたいって奢ってもらっただけだよ〜…?」
「…そうか…アンタ、気をつけた方がいい。アイツはここらじゃ有名な悪徳商人だ…アイツのせいで何人も泣きをみてる。」
「そう言うキミは何なのさ?」
「………俺もアイツに恨みを持つ者の1人だ。アンタもこうならない様に気をつけるこったな…。」
そう言うと男は路地裏へ去っていったんだ。
翌日、心配になった僕は冒険者組合に村の様子を見てきてもらうよう依頼を出そうと相談しに行った後にさ、たまたま聞いちゃったんだよ!
組合で依頼を受けるのは可能だけど受注までに時間がかかるかもしれないから、騎士の詰所に届け出を出したらどうかって言われてさ。
お昼過ぎてたし詰所に行く前に腹ごしらえをしようと組合の近くの安いけど量を出してくれる冒険者御用達のお店で座った席の後ろで…
昨日の商人が荒くれ者風の冒険者に骸骨くんの捕獲の依頼を組合を通さないで直接出してるのを⁉︎
◆
気づかれなかったのかって?
いやぁ、危なかったよ〜緊張で骸骨くんみたいにカッチカチになっちゃたけど…何とか気づかれずにその場を凌いだのさ!
逃げ足の速さと、魔獣にも気配を悟らせないのはハーフリンクの得意技だからね‼︎
昨日の男の話が現実味を帯びちゃったから僕は冒険者じゃなくて、その街の衛兵に相談しに行ったんだ。
◆
「うーむ、お前の様な陳情はいくつかあるが、いかんせん証拠がない。それにお前の言う骸骨と言うのは魔物かゴーレムの類ではないのか?」
「でもでも!早くしないと、村にはお爺ちゃんお婆ちゃん達しか残ってないんだよ⁉︎」
「ムゥ…。件の冒険者が西門を通っていれば信用性も高くなるし、お前の言う骸骨の確認も取らねばならんか……。」
「よし。誰か西門へ行って確認を取って来い!走れ‼︎」
◆
こうして、西門で確認をしてもらって冒険者の1組が漁村の方へ向かったのが確認とれたから騎士団の一斑を派遣してもらって、それに付いて行く事になったんだ。
間に合ったのかって?
いいや…さっきも言ったけど、もう村は焼かれてしまっていたんだ…
村に向かう途中で逃げてきた村人達に合流できたから、悪いことをしたと謝ったんだけどね…。
骸骨くんが引越しの手伝いをして準備は終わってたみたいなんだ。
だから、素材も買い取ってくれて引越しも問題なく、後は街へ向かうだけだったからと許してくれたんだ。
ただ、村人達を逃がすために囮になった骸骨くんの安否を皆んな気にしていたね。
こうして、街の悪徳商人の犯行は確認取れたし派遣された騎士班の班長は部下に命じて悪徳商人の捕縛と実行犯と証人になる冒険者の逮捕のため応援を呼びに走らせて、村人達を護衛して街へと帰還したんだ。
え?村には行って無いのかって?
そうなんだよ〜冒険者は全員捕まったんだけどね、まだ骸骨くんが見つかって無いし村は騎士団によって閉鎖されたままなんだよ。
そう!骸骨くんは村から姿を消しちゃったんだ。
詳しい話は聞けなかったけど、冒険者達が捕まった時には居なかったみたいなんだよ。
村人達は領主様から焼き出された補償金を与えられて、引越し先も決まって落ち着いたから安心だし。
僕への騎士団からの聞き込みも終わったから、こうして僕はドワーフの街へと向かう旅に出たのさ!
数日前までヤツが近くにいた。
私はヤツの足跡を追うため焼けてしまったが変わらず漁村へと向かう事にした。