目撃証言 1
海沿いにある街の酒場。
ここで女盗賊から話を聞く事に…はたしてヤツに繋がる話は聞けるのか…
目撃証言 1
女盗賊:獣人(猫):女性:レディーに歳を聞くものじゃないにゃ!
あれは、海辺の遺跡型ダンジョンをソロで探索していた時の事だったにゃ。
え?1人で潜るなんて迂闊じゃにゃいかって?
アタシレベルのシーフだったらあのダンジョンはソロでも余裕で潜れる所だったにゃ。
C級のザコ戦はめんどいから回避しつつB級以上のレアなヤツをメインに順調に狩っていってたにゃ。
ん?B級のレアをソロで狩れるにゃんて相当な実力者だって?
当たり前にゃ!これでも地元のギルドでトップを走っているにゃ⁉︎
でもにゃ〜油断はしてなくても事故は起きるもんなのにゃ〜。
ソロ狩りもひと段落して、マジックバックの中の素材も充実してきたからセーフポイントで一息入れてた時にゃ。
突然地震が起きて床が崩落したのにゃ!
崩落に巻き込まれてよく無事だったにゃって?
崩落に巻き込まれた時は、「もうダメかにゃ〜…」「隠してた薄い本どうしよう…」「あいつに貸してた金ぐぁ!」とか覚悟したけど…そこは身に染み付いてる野生というか、こう…にゃんぱらり!…と身を翻して土砂の間を掻い潜って潰されるのだけは免れたにゃ。
さすが凄腕の女盗賊様だって?
よせやい!照れるにゃ!こればっかりは猫獣人に産んでくれた両親に感謝にゃ。
それにしても…まさか崩落した先の洞窟であんなもの見つけるとは思ってもいなかったにゃ。
◆
崩れ落ちる石塊の間を潰されないよう、身体能力を極限まで使って回避しまくったにゃ。
それはもうモンスターハウスに1人で放置された時以上に集中して回避しまくったにゃ。
崩落中は明かりなんて無く、暗闇状態だったけど猫獣人特有の暗視スキルのおかげでなんとか回避しきれたのにゃ。
「あいたたた…ようやく崩落が収まったのにゃ…」
頭上からの落石も終わり砂埃が舞う中で現状を確認するため辺りを見渡すと、地下の洞窟に繋がっていたらしく立派な鍾乳石が立ち並ぶ広い空間だったにゃ。
モンスターの気配も今のところ無く、安全を確保して自分の状況の確認をする事にしたのにゃ。
「イタタ…そこかしこ擦り傷に打撲だらけ…骨は…折れてないにゃ。トーチは流石にどっか行ったにゃぁ。それと…良かった、ちょっと傷んだけどマジックバックは無事にゃ。」
多少の怪我を負ったもののマジックバックにストックしてあるポーションで傷を回復したにゃ。
一安心したところで、洞窟から脱出するため予備のトーチに明かりを灯して調べ始めたにゃ。
「崩落後を上に登るのはやっぱり危険だにゃ〜…」
まだ時折、崩落した穴から石が落ちてくるし、また揺れて崩落したら危険だから穴を登るのはダメにゃ。
「周りには水が流れて小川になってる所があるにゃ。お?風も吹いて来てるから外に繋がっていそうだにゃ!」
幸いにも水が流れているのを見つけさらには先の方から少し空気の流れが感じられたにゃ。
と言うことは、出れるかどうかはともかく外に繋がっている場所があるにゃ!
「助かる可能性が出て来たにゃ!強力なモンスターに出くわす可能性もあるけど、先に進むのにゃ!」
1人で崩落に巻き込まれた心細さか独り言が多くなったにゃ…決してボッチだから癖になってる訳では無いのにゃ‼︎
誰ともなく言い訳をして水の流れる先、下流の方へと足を向けたのにゃ。
しばらく歩いていると不意に明るく開けた場所に出たのにゃ。
そこは縦に長い空間で上方から光りが差していて空気が澄んでいたにゃ。
光りは天井の亀裂から差し込んでいたものだと思うのにゃ。
目を細めて光りの先を追っていた時に…アレを見つけたのにゃ…
先ほどの地震の際に崩れたと思われる岩壁の斜面から突き出したマヌケな格好をした下半身。
◆
バカな事を言うにゃって?アタシも言ってて自分の頭を疑うにゃ。
◆
ともかく、正体を確かめるために慎重に近づいてみたのにゃ。
「鈍く青味がかって輝いている…鎧かにゃ?…いや青銅の像?」
重装鎧の奴が崩落に巻き込まれたにしては周りには残骸が無く、青銅の像にしては錆が見当たらないにゃ。
動く気配もなく危険も無いと判断したから、さらに近づいて観察してみたにゃ。
青く鈍く輝く金属の足は本当に錆が無く、鎧に見られる留め具も見当たらない事から金属の像だと断定したのにゃ。
もしかすると、保存強化の魔法がかけられている掘り出し物かもしれないにゃ!
崩落に巻き込まれて運が悪かったと思っていたけど、これは運命の女神様のお導きかもしれないにゃ‼︎
そう思うと先ほどの不安もなんのその、採掘道具なんて持って来なかたけど愛用のナイフ一本でどうにか全体を掘り起こす事に成功したのにゃ。
太陽の光りの下に出土した青銅像は細身の人体を模してはいるものの、都で見かける裸像とはかけ離れている造形だったにゃ。
残念ながら下も付いてなかったのにゃ。
◆
え…期待してたのかって?
いや!
いやいやいや‼︎全然、まっっったく期待してなかったにゃ⁉︎
いや、ほんとにゃ!
ちょっと!その目をやめるにゃ‼︎
もういいにゃ!
この話はココまでにゃ‼︎
悪かった?もう一杯奢ってくれるって?
よーし、焼魚も付けてくれたら続きを聞かせてやるにゃ。
◆
さらに観察していて気がついたのは関節が動く構造をしているところと、その青銅像の頭部はなんと骸骨だったにゃ!
「活動は停止しているみたいだけど、コイツはゴーレムかもしれないにゃぁ。」
太陽光にさらされた青銅像を検分していると、青く輝いていたと思った金属は鈍く虹色に輝いていたのにゃ⁉︎
「これは!コイツに使われている金属…もしかして…オリハルコンじゃ…」
◆
ガタッ‼︎
何にゃ⁉︎急に!
そうにゃ!青味がかった虹色に輝く金属と言えばオリハルコンが有名にゃ‼︎
で、その骸骨像はどうしたかって?
なんにゃ〜?アンタ急に食い付きがよくなってきたにゃぁ…
まぁまぁ、もう一杯?…怪しいにゃぁ…まぁいいにゃ、続きを聞いて驚くにゃよ?
◆
「や…やったにゃ…これは組合の買取りでもオークションでも高値で売れるにゃ⁉︎」
早速マジックバックに入れようとしたところ…
バックショーーーーイ! ガハ ゲハ ゴハッ‼︎
いきなり骸骨像が大きなクシャミをして咳き込み出したにゃ…
「にゃ…にゃ…にゃ…にゃんだ?」
ペッペッと口の中に詰まった砂利を吐き出して眼球のない虚ろな眼差しで辺りを見渡してアタイと目(?)があった瞬間…
「ぎにゃぁ〜〜〜〜っ…って」
パカン‼︎
「にゃんでお前の方が悲鳴を上げてるのにゃ⁉︎」
金属を素手で殴ったモンだからかなり痛かったにゃ…。
あ〜分かる。その疑いの眼差し…ゴーレムがクシャミした?
別に担ごうにゃんてしてないにゃ!ホントの話にゃ⁉︎
「何?目が覚めてみたら目の前に知らない女性が居て?襲われるかと思ったぁ⁇」
バカン‼︎
「失礼な事をぬかす骸骨にゃ!って言うかお前、付いてにゃいのに男だったのか⁉︎」
◆
あ、いや。ホント期待してなかったからにゃ?信じてほしいにゃ…。
そっちの気もないからにゃ?どうしてちょっと離れるにゃ!
◆
「それで、ゴーレムのくせにクシャミと失礼な言動をぬかすお前は何者にゃ!」
骸骨は胡座をかいた状態で腕を組み…小首を傾げ考え始めたにゃ…
コイツ…やけに人間臭い動きをするにゃ…
「何?やらなければならない事があった様な気がするが…思い出せないとにゃ?」
特に危害を加えてこなさそうなので、どうするか考えていたにゃ…そしたら…
ゴゴゴゴゴ…
ビキッ!
バガッガゴッ⁉︎
「にゃ⁉︎」
また地震が起こって、天井が崩落して来たにゃ…骸骨と向かい合わせで座っていたし、完全に油断していたにゃ…
これはもう確実に死んだにゃ…
ゴシャッ⁉︎
覚悟を決める間も無く、痛みに構えて目を固く瞑っていたけど…一向に痛みが来なかったにゃ。
不審に思って目を開けてみると、そこには金色に輝く骸骨が崩落してきた岩を支えていたのにゃ⁉︎
「お…お前…」
ズズッ…ポイッ!
ズ…ゥゥン…
一回り大きくなった様に見える金色に輝く骸骨は軽々と巨石を放り投げたにゃ。
砂埃が舞い、差し込む光りに照らされた輝ける骸骨は不思議と絵画のように神々しく見えたのにゃ。
なんと言うゴーレム…本当にゴーレムかにゃ?
モンスターじゃにゃいし…なんかもう骸骨でいいかにゃ…。
それよりもこの膂力と頑丈さ、会話も成り立つとなればコイツを手懐けられればダンジョン探索がかなり楽になるのにゃ!
金儲けの臭いがプンプンするにゃ‼︎
「お、おい!」
振り向く骸骨がアタイに手を差し伸べて…バガァッ!
ゴシャッ‼︎
ドシャシャシャシャシャッ⁉︎
突然崩れた岩壁から巨大な鉱石喰らいが飛び出し、骸骨を轢き、下流の方へ連れ去っていったのにゃ⁉︎
「う、うえぇぇぇぇぇぇっ⁉︎」
何でこんな所に鉱石喰らいが、アイツが地震の原因だったのにゃ!
いや、そんな事より骸骨が…いやさ金ヅルが持っていかれた⁉︎
急いで後を追いかけて鉱石喰らいが海岸の絶壁に空けた穴から脱出できたものの、結局骸骨は一緒に海に落ちたみたいで見つからなかったにゃ…
◆
どうしたのにゃ?真剣な表情して考え込んで…
土に埋もれていても平気で、落石にも潰されないほど頑丈で軽々と巨石を放り投げるヤツが簡単に捕食されるとは思えない?
同感にゃ。全身金属と言ってもオリハルコンだからか思ったほど重くなかったから海流や鉱石喰らいとの戦闘で流された可能性が高いにゃ!
女記者は礼を言い会計を済ませると酒場を出て言ったにゃ…アイツ…骸骨の話になった途端に目の色が変わったにゃ。
金の臭いに惹かれたか…もしくはあの骸骨について何か知っていたか…ともかくあの骸骨を追って行けばわかる事にゃ。
あんな金ヅル放っておく事はできないのにゃ!
ようやく!ようやくヤツの情報を得ることができた⁉︎
居場所まではつかめなかったが、今まで噂すら掴めていなかった事を考えればかなり前進したはずだ。
ヤツはまだ近くを彷徨っているのかもしれない。
ワタシは期待を胸に次の情報を得るために街を後にした。