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開幕...ですね?





「皆聞いてくれ!

今日この場で宣言する。今日この時をもって私、ヴェルティア王国第二王子レオナルド・ヴェルティアはフェンガリ公爵家セレナ・フェンガリとの婚約を破棄する!」


ザワザワとするパーティ会場が一瞬にして静まりかえる。

皆思惑は様々だろうが、この宣言を待っていたのだ。


婚約者がエスコートせず、第二王子付きの護衛と言う名目で学院にいた兄にエスコートされてきた私と元平民の男爵家養女をエスコートしてきた第二王子。


噂話はすぐに学院内に広まり、皆が今か今かとこの宣言を待っていた。


私も兄も、ルベルト様も私の友人達も……


まぁそんな事しないで欲しいと願っていたのは極一部でしょうが……。

王妃様に取り入ろうと隣国での内戦前に取り入ってしまい抜け出せなくなった少数派の貴族、その子供。

そして王妃様と後処理関係で国王陛下かしら?

我が子がそんなに愚かではないと思いたかったでしょうに……


そして私は口を開く……終わりへの開幕。


「婚約破棄……ですか?理由を聞かせてもらえますか?」

「理由か……そんなもの貴様が一番わかっているであろう」

「そう言われましても……わからないものはわかりませんので?」

「ここで素直に罪を認めていれば公衆の面前で恥をかかずに済んだものを……」


自信満々な王子に頬に手を添えこてんと首を傾げて聞くとわかりきってることを聞くなとでも言いたそうに言葉をくちにする。

罪、罪ねー……。

私が王子に興味を持たなかったことでしょうか?好意を持たなかったことでしょうか?


ちらっと父の方を見るともう笑顔はなく今にも誰か殺しそうな雰囲気を醸し出してるし、隣にいる兄は笑顔だが、目が据わってるし、冷たい魔力が漏れ出ている……。

王は頭を抱え、王妃は顔色が悪い……。

リオン殿下は楽しそうに私を見てるし、リカルド殿下はオロオロとしてる……

ルベルト様はリオン殿下の仲間か……ニヤニヤしてる。


「罪……と言われましても、私にはわかりかねますが……」

「ならば教えてやろう。貴様はキャサリンを虐げ殺しかけた!それだけ言えば充分であろう!

弱いものを守らねばならぬ貴族が権力を使い弱いものを虐げる……なんと愚かしい事だ!!」

「……さて、わかりかねます。一切身に覚えがございません」

「な!貴様は本気で言っているのか!!」

「はい。こんな場所で嘘つくような度胸、私にはございませんわ。国王陛下も王妃様、宰相様に騎士団長様……国の最高権力が集まっているのですもの……ね?殿下」


おっとりと受け答えする私にイライラしだしたのか堂々とした、声、態度が崩れてきて遂に怒鳴り声のようになる殿下に私は今一度状況を確認させるように口にするが……リオン殿下に睨まれた……。

あーはい。

さっさと話を進めろと言いたいのですね……わかってますよ。


「いいでしょう。では、僭越ながら私が説明いたしましょう。

そこにいるセレナ・フェンガリはここにいるキャサリン・クズリス嬢を平民などひどい言葉でイジメていたのです!しかも行為はエスカレートしていきキャサリン嬢の持ち物を盗み、捨てたり、ボロボロにしたり、魔法で怪我をさせ……あまつさえ殺そうとしたのです!」

「……確か、貴方は宰相様のご子息ですわよね?お名前はユーデット様……間違えありませんわよね?」

「あ、あぁ……」

「よかった。では、ユーデット様?ユーデット様は公爵家より立場が上なのかしら?私、呼び捨てられるなんて経験がないのですが……あーありましたわ、ただ一人……第二王子殿下にだけですわ」


イジメの内容よりも呼び捨てられた事にイラッときた。

何様のつもりだ……。

婚約破棄をした所で私は私の立場が変わるわけではない!

男爵家養女を呼び捨てにせずにわざわざ私を呼び捨てにしたんだ……故意だろう?

叩き潰す!!


「貴様は、罪人だ!」

「さようで……ございますか……。では、先に私が行ったとされるイジメ……とやらの証拠を提示頂けますか?

このような場での断罪ですもの、当たり前に用意しておいでなのですよね?宰相様のご子息ですもの、兄上のフェルド様は大変優秀でいらっしゃいますから……ユーデット様も負けず劣らず優秀なのでしょう?」

「し、証拠は……これだ!証人だっている!」

「……これは私が行ったと言う証拠ではありませんよね?では証人はどちらでしょう?」

「証人は……キャサリン嬢だ!」


やばいよー。兄が漏らす魔力の温度がどんどん冷えていく……。

私の魔力で緩和出来ないとか……ここまで怒ってる兄初めてなんですけど……

父に至ってはもう黒いなにかが出てます……。

どうにかしてよ!リオン殿下!!

隣の席なんだから宥めてよ!

わざとそこに座ってるんでしょう!?


私の挑発に簡単にのってしまうユーデットに呆れながらも話を進めると投げ捨てるように袋が出されて中身が出る……

確かに教本や巾着などがボロボロになっているがそれは私がしたという証拠ではなくて……

証人もいると言うから誰だと問うとキャサリンだと言い出した。

さっきまで王子の後ろで小動物のようにプルプル震え隠れていたが私と目が合った瞬間、顔色がみるみる青くなっていく。

馬鹿ね……敵にしようとするからこうなるのよ……。


「そう、ですか……なんとも頼りないものばかりですね?」

「なんだと?貴様が権力を使いキャサリンを孤立させていたのだろうが!!」

「……殿下。キャサリン様が孤立したのは自業自得でございますわ」

「な、どういう事だ!」

「平民から能力を認められ、男爵家へ養女として迎えられ……確かに貴族から少し嫌煙されたり遠巻きに見られたりするのは避けられないかもしれませんが……では、なぜ平民の方々までキャサリン様に近づかなかったか……簡単ですわ。殿下とご一緒だったからです」


さすがに証拠がしょぼ過ぎて拍子抜けしてしまいつつも噛み付いてきた殿下に丁寧に説明していく。

だってわからないんでしょう?

なぜ彼女が孤立し、イジメられたのか……。

私が注意しなければ本当にもっとひどい事になっただろうけど……。


「我が国には、婚約者がいる異性に近づき……不貞を行った者には重い罰がくだされます。

それは平民も同じです、貴族、王族と罰は重くなりますが……国から発表された婚約者がいる殿下に近づき人目を気にすることもなく2人で行動するあなた方に平民の生徒を始め、貴族までもがとばっちりを避けたのですわ。警告はあったはずです。

私がして差し上げればよかったのでしょうが……どうも私はそういう事に疎い所がありまして……でも貴族の令嬢から幾度か言われませんでしたか?

殿下には国王陛下が決めた婚約者がいる。

男爵家の者が馴れ馴れしく殿下に声をかけてはいけない。など……記憶にございませんか?」

「……そ、それは殿下と仲良くする私にみんなが嫉妬して」

「違いますわ……キャサリン様、あなたの身を心配しての忠告、警告ですわ。

他にも複数の男性に声をかけて侍らすのはお辞めなさい、はしたないですわなど……」

「そ、それも……私に嫉妬して……」

「違いますわ……あなたの品位を自分で下げるような行為をしないように忠告ですわ……。

貴族として日の浅いあなたは貴族令嬢としての教育を受けていないと一目見て皆が気づきました。貴族として爵位を持つ家は差はあれど淑女としての教育をうける事になります。挨拶、姿勢、マナー、異性との接し方……」


わかりやすく、噛み砕いて私は説明していく……。

忠告、警告はイジメではない。

始めは皆、キャサリンの行動をどうにか改めさせようとしていた……。

このまま突き進めば……キャサリンは処刑しか道がないから……。

どうにか回避させる事が出来ないか……と。

私はわざと放置した……押し付けるつもりでいたからだ。

私が直接言うよりも……身分が近い者がいう方が威圧せず、構えずに受け入れられるかもしれないと思ったからだ。


「だ、だが……怪我をさせた事にかわりはないだろう!」

「それも正確には違いますわ」

「何が違う!!」

「彼女には特殊な能力があります。とても便利なものですが……まぁ様々なデメリットもあるものです。

それを我が兄に使おうとしたから弾かれたのですわ……。兄が少し過激なのは認めますが……その能力を使い兄に精神干渉しようとしなければ……怪我なんてしませんでしたわ」

「あぁ、間違いない。あれは俺の結界に弾かれた時の怪我だ」


そう、彼女の怪我は私のせいでも兄のせいでもない。

彼女の能力は、言わば魅了……魔眼の一種だ。

とても珍しいが存在は確認されてるし、実際王妃様が同じ能力を持っていた。

精神的に干渉する一種の催眠術に近いものだ。

意思の弱いもの、異性に弱いものが最もかかりやすく……

王妃様の魔眼に比べたらキャサリンのは下位になると思われる。

現にここにいる男3人以外にも近づいていた子息は数人いるが……この3人に並んでないのが証拠だ。


「デメリット……?」

「えぇ。それは一生続かない事、心に決めた相手がいるとかかりにくい事、意志が強いとすぐに解けてしまう事……そして美貌が衰えると……その魔眼すらも使えなくなります」

「え、なにそれ……聞いてない!そんな説明なかったわ!!」

「説明……ですか?本で調べればすぐにわかる事ですよ?」


私の説明に数人の貴族が王妃へと視線を向けた。

王妃が魔眼保持者だと言うことは隠匿された。

だって国王陛下ですら婚姻の儀を済ますまで魅了されていたのだから……。

そして隠されてるデメリットが一つ……魅了の魔眼は持ち主まで魅了し、使えば使う程……持ち主の美貌が失われていく。

王妃様は美しいおばさまだとは思うが……嫁いできた時は絶世の美女だったと昔に聞いた事がある。

でも今の姿からは想像がつかないし、同世代の側妃さまよりは確実に劣って見えるし、老けて見える……。

魔眼を使い続けた結果なのだろうと私は結論づけた。


「さて、言葉での嫌がらせ、孤立してた理由、怪我の理由。後は殺人未遂ですか?それは何日の何時頃でしょうか?

「2週間前の夕方だ」

「あら……おかしいですね。私……その日は王城にいましたが……夕方に学院に戻ってもないですし……。兄と共に王城に泊まりましたが……勘違いですか??」

「は?王城?なぜ……俺がいないのに貴様だけが」


私の容疑を少しづつ潰していくと最後に残ったのは殺人未遂だけ。

この人達は根本を間違えている。

私がもし、殺害を決意し行動したのなら痕跡すら残さない。

それは証拠云々じゃない……死体すら残さない、それは遺棄とかそういう意味ではなく、本当に塵も残さず殺せるだろう。

死体がない、それ以上の証拠隠滅はないでしょ??


そして王子の疑問も間違えてはない。

普通王族の婚約者が相手が不在の時、王城を訪れるのは珍しい。ってか、普通ならないよねー。


「それは皆様のお父上に聞いてみるのが手っ取り早いかと存じます」

「は?」

「2週間前その日、セレナ様、エドモンド様も我々と共に国全体の結界、王都の結界、王城の結界を改善、張り直しを手伝って頂いていました。予定より長引き、陛下の命でお2人には王城へお泊まりいただきました。ちなみにフェンガリ公爵も同じくです。」

「結界の改善……?張り直し……?なぜそれにセレナとエドモンドが……?」


私のもうめんどくさいから投げちゃえ作戦に答えてくれたのは宰相様。

それに同意するように国王陛下、騎士団長様が何度も頷いて下さいます。


まぁその日は私は国王陛下の要請でお仕事してましたからそんな暇なかったんですよね。

消すのは簡単な結界ですが、張り直すのには時間が掛かるんだ!

国全体を守る結界なんてさすがに私と兄では魔力足りないし、そこまでしてあげる必要ないよね?

他の魔術師達を待って移動しないといけないから兄と一緒に転移ってわけにいかないし……。

質問攻めにされてキレそうになったり……で3つ張り直すのに1日使ったんだよ!

おりょ……殿下のキョトン顔が面白いですよ。

本当になにも知らされてないし、知らないんだな。


「失礼ながら……セレナ様もエドモンド様も国家魔術師です。その中でも今では数える程しかいない上級魔術師で……次の特級魔術師とまで言われています。婚約者なのにそんな事もご存知ないのですか?レオナルド第二王子殿下」

「そ、んな……まだ学院にいるんだぞ!ここで習う事だろう!?」

「まぁ……通常はそういう方が多いのは事実です。ですが、お2人は学院入学前……それよりずいぶん前に難関と呼ばれる試験を合格されておられます。国の宝ですよ……本当に……」

「そんな……俺は聞いてない……そんなの知らない」

「そうですね、言ってませんから。まぁ少し調べればすぐにわかる事ですし、リオン殿下もリカルド殿下もご存知ですよね?」


淡々と説明する宰相様に信じられないとでも言いたそうな……狼狽えて情けなくなってる殿下……。

聞いてない、知らないと繰り返す殿下に私は肯定してからリオン殿下とリカルド殿下に話を振ると2人とも首を縦に大きくわかりやすく振ってくれる。

そりゃね……

リオン殿下とは共同製作としていくつかの魔道具を発表してるし、リカルド殿下には自らお願いされて私が魔法の教師をさせてもらっていますから……。

知らないわけないんですが……

リカルド殿下に関しては自らですからね?私や父、陛下から話を聞いてと言うわけではありません。

優秀な方ですよ。

もう少ししたらリオン殿下と良い勝負をするかもしれません!


さて、後はなんでしたっけ……

そろそろ終わらせましょうか……。




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