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婚約...ですか?




「セレナ・フェンガリ、私は君との婚約を破棄する」


そう宣言し、私を見下ろす見た目だけのこの国の王子。

あぁ……なんて馬鹿なんだろう……。


本当に……情けないわ……。


もう数ヶ月で18歳になる17歳の春。


私は好きでもなんでもない婚約者に婚約破棄をつきつけられた。






「セリー、セレナ……すまない。本当に……父様が情けないばかりに……こんな婚約……」

「……なんで断らなかったんですか」

「断ったさ、殺すとも脅した……なのにあいつ……」

「……いや、脅すだけだからですよ。今からでも殺しに行きましょう……手伝いますよ」


それはセシル様が去ってに三年が経とうとしていた秋だった。

帰ってくるなり不機嫌な様子だった父は、出迎えにきた私を見た瞬間崩れ落ち涙ながらに婚約が決まったと告げた。


拒絶する心とは矛盾して頭では理解してしまう自分に泣きたくなった。

いくら前世が基準になってるとは言え、私は公爵令嬢として7年教育を受け生きてきた。

父も兄も私を王族に近づける事を極端に嫌がっていた。

遊び相手として呼ばれてもおかしくないのに……私は王子様に会った事がなかったし。

王の側近だと言う父も、なんとなくだけど……

私や兄を誘うお茶会を拒否してる事には気づいていた。

兄の一つ上の第一王子の時は兄が誘われて何度か行ってるのは知っていたし、学院に入ってからは護衛までしてたんだから関わりが一切ないのも不思議な事だった。


貴族としてトップに立つ公爵家は我がフェンガリを含め四家ある。

第二王子は私の一つ年上らしいが同世代の令嬢は私だけ……。

後は王子より六つ下の子だけ、必然的に私が候補に上がるのは不思議な事ではない。

まぁ第一候補ってだけで他にもいないことはないのだけど……。


物騒な会話をする父と兄に少し引きながらも泣きたい私と諦めた私が戦ってる。


セシル様……ごめんなさい……。



翌日、顔合わせに初めて王城に足を踏み入れる事になった。

行きたくない……

身支度を整えてくれたモニカは何か言いたそうな泣きそうな表情で……でもなにも言うことはなかった。

多分、私の気持ちを察してくれてる。


「嫌だ、行きたくない」と口にしてしまえば本当に足が動かなくなっただろうし……

そんな私を見たら父も兄も私の希望を叶えようと動いてしまいそうで怖かった。


セシル様とは手紙を交換していたが……

ここ最近忙しいのか返事が来なくなっていた。

忘れられたなんて考えたくないけど……何か理由があると思いたいけど……

手紙が来なければなにもわからない。

言い訳をしてくれなければ……私にはなにもわからない……。



「お初にお目にかかります。

オリバー・フェンガリ公爵が第二子セレナ・フェンガリでございます」

「うむ。発言を許す。楽にしてくれ」

「ありがとうございます」

「先に紹介しておこう。我が息子で第二王子のレオナルド・ヴィルティアだ」

「セレナ・フェンガリです。よろしくお願いします」


淑女の礼をして初めて会う国王に許しをもらうとすぐに婚約者の第二王子を紹介された。

……わぁ。金髪碧眼……いかにも王子って見た目だな。

父や兄よりも少し濃いブロンドに青い瞳。


なんだろな。ゴテゴテ?ギラギラ?苦手だ。


「父上!こんな老婆みたいな見た目の者が私の婚約者なのですか!?」


あ、その場が凍ったような空気が……。


王子の状況を無視した発言に父の笑顔が消えた……。

扉に控えていた兄の笑顔が氷点下だ……おい、剣に手を添えるな。

落ち着け2人とも……。


「セレナ嬢……申し訳ない。弟の発言は聞かなかった事にしてもらえると嬉しい。

改めて初めまして、レディ……リオン・ヴィルティア第一王子です」

「……は、じめましてセレナ・フェンガリです。第一王子殿下」

「リオンと気軽に呼んで下さい。私もセレナとお呼びしても?」

「もちろんですわ、リオン殿下」


空気を変えようとしたのは第一王子、兄の学友であり護衛対象の人だ。

銀髪だ……私より濃いけど……ちょっと仲間意識が芽生えるよ!


「エディから聞いてはいたが本当に美しいレディで少し悔しく思っているよ。私の母は自由恋愛主義でね、婚約者など決める必要はないと父の話を突っぱねてしまってね。

こんなに美しいレディなら私が婚約したかったよ」

「殿下、死にたいのなら素直に言って下さい。スグにでも斬り捨てて差し上げますよ?」

「エディ……」

「兄様!ダメですよ!」


お世辞を言ってくれるリオン殿下に堂々と不敬だろう言葉を口にする兄にこっちがドキマギしてしまう。

仲が良いんだろうけど、兄の声は真剣で冗談っぽくないから怖い。


それにしても謝罪もせずに立ち位置をリオン殿下に奪われたような不満たらたらですって顔で王の横に座る第二王子に呆れてしまう。


確かに白っぽい髪だし、自分でも一瞬白髪か!?とか思った髪だからなんとも言えんが……

言葉選びには気をつけた方がいいと思うんだ。

じゃないとほら、大人なつもりでいる私だけどブチってキレて王城を崩してしまうような魔術を発動させてしまうかもしれないじゃないか?

魔獣を入れないようにしてる王都を囲う結界をうっかり壊してしまうかもしれないよ?


私は自分で言うのもなんだけど……。

友好的な人間以外にはひとまずこちらが関心を持つ事はない。

私には嫌いな人って言う分類がない。

好きな人、互いにメリットがある人、自分にとってメリットがある人。

それ以外には興味すらなくなってしまう。


残念な事にこの第二王子は私にとって興味が無い分類に入ってしまった。


前世から培った本音隠しスキルがあるから問題は無いだろうけど……。

結婚するかもしれない人に一切興味が持てないのはつらいだろうな。


でもいいか……どうせ異性として好きになる事なんて絶対ないんだから。

尊敬出来る人なら良かったけど……

無理だな……今のところ一切その要素はない。

人格が変わらない限り、コレを尊敬出来る日は来ないだろうな……。


その日から何かと王様に王城へと呼び出されて出向いたが何故かその場には兄とリオン殿下が居た。

私は第二王子とほぼ喋らず、リオン殿下と話をして盛り上がっていた。

兄には劣るけど、リオン殿下も優秀な魔術師だったから話が合っただけだけど。

王族図書館はすごく素晴らしかった。

その時第二王子が居たかは覚えてないけど。


時々……「王子の婚約者なんだからそれ相応の格好をしろ」や「私に見合う優秀な人間になれ」とか言われたけど。

剣術はそれなりだけど、魔法に関しては初級で躓き、教養は歴史で躓いているらしい。

王位継承権はいずれ王が宣言するまで不確かだが、一応と妃教育が始まったりして忙しかったけど……。

一年もかからずに教育は終わってしまった。

魔術に比べたら覚えることなんてないに等しかったし……。


仕方ないよね?


たまに2人で会えば自分を棚上げして文句ばかり、私が反論しないことを肯定と受け取っているのか自分より劣っているとでも思っているのか。

なんだろう……この王子が王になる事は絶対ないだろうなって確信してしまった。


リオン殿下は兄が行動を共にしてる事でわかるが、優秀な人だった。

側妃の子だからとよく笑って言うけど……

正妃の子があれじゃだめじゃね?が私の感想である。


他国より嫁いできたらしい正妃……王妃は、我が子こそ王に相応しいと口にしてるらしいが……

このヴィルティアは実力主義だ……。

長子だから、王妃の子だからと次期王を決めるわけではないのだが……父情報。

その当たりを親子で理解してないらしい。


このままなら順当にリオン殿下が次期王だろうよ……。

第三皇子はリオン殿下と同じお母様の弟だけど、まだヨチヨチ歩きだから実力なんてわかんないしね?


まぁまだ陛下が若いのでその辺りはまだ先の話だろうけど……。

支えてやって欲しいとか陛下に言われたけど……

お断りです。と笑顔で言ってしまいたい。


だって私にはどうしようも出来ません!


「セリー」

「兄様!」

「どうだい?またなにか言われたりしたかい?」

「はぁ……なんか言ってたような気もしますが……覚えてませんわ」


第二王子が去って帰ろうとしてると兄がやってきた。

心配してくれる兄には悪いが興味がない人間の言葉なんて私の耳には入ってこないのです。

私が悪いわけではないですわ!


「リオン殿下が今度魔道具を作りたいと言ってた。暇な時にでも手伝ってみたらどうだい?」

「まぁ!それは素敵なお誘いですね!どんな魔道具でしょう。少しでも私が役に立てる物だとよいのですけど」

「大丈夫だろう。セリーは優秀だからね」

「兄様には及びませんわ……兄様が言うと嫌味ですわよ?」


魔道具は主に魔術が使えなくなってしまった今の世代に使えるようにするためのお助けアイテムでもある。


魔術は魔法陣を描くのにも魔力が必要で相性というものがある。

それが魔力量や魔力の質に大きく関わってくるのだが……

簡易化された魔法に慣れた人間は少しずつ魔力が変質して魔術を使えなくなってしまったらしい。

魔道具を作る事にはそこまで魔力を必要とはしないから魔道具は作れる人は多いけど……時間がかかるデメリットもある。

製作者がその魔道具を使えないという事も少なくないんだからおかしな話だとも思う。


私は発表してないが温室の応用で冷蔵庫もどきや冷凍庫もどきを作ってたりする。

金属の箱に魔力で魔法陣を書くだけだから簡単楽々プレイだったりしたのだけど……。

後から兄に聞いた話だと大型冷蔵庫みたいな物は魔道具であるらしい。


拡張バックや時止め箱なども作ってたりするけど……

売る事に興味もないし、手続きなどめんどくさいので見つかるまで放置の予定だ。


結果さえ残せば魔術師としての資格は維持出来るし、私が手がけてるのは結界が主だから国防に利用される物の改良だけで無事に成果を上げ、結果としてランクは上がり続けてるから余計な発表は必要ないと思うんだ(ドヤァ)


兄は実技が主で戦闘面などで結果を上げていて、私はまだ追いつけない……。

そんな人に優秀とか言われても嫌味ですよ?


リオン殿下にしてもそうだ……

飄々としてニコニコ人畜無害って顔しといて私より上にいる。

はーらーたーつー!

最近まで自分が負けず嫌いって事に気づいてなかったよ。


「リオン殿下!何作るんですかー?」

「セリー、よく来たな」

「それ兄と父にバレたら殺されますよ?」

「あぁ……そうだな。気をつけよう……エディが当たり前に使うからセレナより馴染みがあるんだよ」


挨拶もせずに話かけるくらいには仲良くなったリオン殿下が私の愛称を呼ぶけど……

兄にバレたら多分殺される。

困った兄だぜ……。


「結界や浄化を応用して精神感応や毒を無効に出来る魔道具を作りたいんだよ。装飾としてつけれるくらいのサイズでね」

「ふむ。特定の物なら簡単ですが……特定せずに作るとそれこそ好意を向けられただけで反応してしまうかもしれないですね?でも相手がどんな毒を使うかわからないし、どんな精神感応をしてくるかもわからないから難しいですね?」

「あぁ……。感情が強いと無意識に魔力が漏れる事もあるしな……その魔力に反応してしまうとな……まぁ別に反撃するような術を入れなければブロックしたり無効化するだけだから相手に被害はないだろうが……」

「え?反撃しないんですか?なら簡単ですね」


リオン殿下の求める物に少し唸りつつ話しながら書き出していく……。

でも、私の考えてる物とは少し違う物のようで私はサラサラと魔法陣を書き出していく。

反撃する必要ないならそこまで細かく設定しなきゃいいんだもん。

簡単、簡単。


「……反撃するつもりだったのか?」

「そりゃそうですよー。何なめた事してんだって……兄なら多分そうでしょうね。

あの人は常に魔力で自分を守ってるので精神感応なんてされたら無意識で弾き飛ばした上に反撃されますよ?毒とかは無効化程度だろうけど……さすがに毒を盛った相手を追跡とかは無理だろうから」

「……お前達は見かけによらず過激な一面があるな」

「それこそ今更ですよー。家族を守るためなら国一つ滅ぼせますよ」

「……怖い事言うな」


用意された魔石に書き出した魔法陣を移してるとぼそっと言われるが何を当たり前なことを言うか。

私はさすがに無効化しかしてないけど、うちの兄なら反撃に幻覚くらい見せるだろう。

私に関する事で何度か殺されかけてるくせに今更ですよね?


兄になにかあったら私はその相手を許さないだろうし、暴走してしまう自信があるのだから仕方ない。

年々大きく、質が上がって来ている魔力が暴走とかしたら多分、王都は塵と化すだろう……。

それだけの力を私も兄も、もしかしたら父も持ってるから怖いよね?


「もうすぐ学院だろう?」

「はい。気が重いですね……正直学ぶ事は一切ないし、結界や魔獣討伐とかで呼び出されそうだし……学院側に説明したんですけど……優秀な人材を学院の卒業生にしたいって気持ちも分からなくもないんですけどね?」

「寮暮らしになるしな。エディもオリバー公爵もうるさそうだ」

「あー会えば引き止められますよ。正直うんざりです。」


魔法陣を移し終えた魔石に毒を垂らせば霧散するを何種類か繰り返しながら効果を試してると学院の話になる。

人脈作り以外に用途が浮かばない学院には正直魅力がない。

今は極力避けて生活してるが、公爵家というブランドは客寄せパンダ状態だ。

どうにか繋がりをって貴族は山ほどいる。

優秀な父と兄が私を溺愛してて何が逆鱗に触れるかわからないと私にはあまり来ないけど……。

そういえば第二王子はもう行ってるんだっけ?


「あーそうそう。レオのやつ。留年しました」

「は?」

「どうも学力が足りなくてね。学院は良くいえば平等、悪くいえば融通がきかない……。王族でも数少ない手が出せない機関だからなぁ……王妃も随分文句を言っていたらしい」

「うわぁ……迷惑な」


考えが読まれたか?ってぐらいタイミングよく第二王子の話になったが……留年なんてするものなんだな。

貴族は、ほぼ強制入学だからな……。

それは王族でも回避できない……。

にしても、あの王妃様の文句か……あれだね、モンスターペアレント。

怖いわー……。


「その件で、婚約者のセレナが指導教育して留年を阻止せよと命令が出てます」

「え、無理ですよ?バカの相手するほど暇じゃないですよ?結界改良や魔獣討伐出なくていいですか?それならしますよ?それでもバカは治らないと思うので全力で不正を駆使して頑張りますよ?」

「……国防第一でお願いします」

「ですよねー。他の適任を探すか脅すかして留年だけは阻止して下さい」


あのバカのフォローを押し付けられそうになったが全力で拒否してみた。

もしそれでもダメなら結界に穴開けて魔獣おびき寄せようかな?とか思っちゃったじゃん!

出来なさ過ぎて殺したくなる未来しか想像できないよっ!


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