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第六話 〜俺、婚約しました。〜

異世界からの移民は、この世界では、重罪らしい。

しかし、その相手が婚約者ならば、基本的には法に触れることはなく、

今回のように女が男を連れてきた場合、その女が男に惚れていて「この人と結婚したい」という意思表示らしい。

また、連れてこられた人に拒否権はない。


彼は、一つ疑問に思ったことを聞いてみた。

「じゃあ、異世界から好みの異性を攫ってきて、無理やり婚約することも可能だってことですか?」

「そうね・・ 可能ではあるんだけど、あまり現実的ではないわね・・」

「どうしてですか?」

「異世界に転移するのって、魔力だけではなくて、時空石という石を使うの

この石がとても希少価値が高くて、下手すれば、城が建つわ」

「そんなに高価なんですね・・」

「そうよ だから、ほとんどメリットがないのよ」

「納得です。でも、私は、これからどうすればいいんですか、結婚できる年齢もありますし・・」


確かに、エリーは、まだ幼いし、元の世界なら結婚できる歳ではない。

シャーは、驚いた表情になり、彼に問いかけてきた。

「え!? あなたたちの世界では、年齢制限が設けられているの?」

「はい 男は18歳、女は16歳と決められています。」

「あら・・ そうなのね・・ そのことなら大丈夫よ。

この世界では、何歳であろうと結婚できるわ 

なんたって、生まれた瞬間に結婚が決まる人もいるんだから」


彼は、笑うしかなかった。

物心つく前に勝手に結婚させられるなんて、許嫁ならまだ、親を説得するという手段もあるが

結婚は、法の縛りがあるのでどうしようもない。

「正気の沙汰ではないですね・・」

「そう? 私たちにとってはそれが普通だからね」

(これが異世界というものか・・ でも、エリーは将来美人になるだろうし、今は、ラッキーだったと考えよう・・)

「でね〜 式なんだけど、いつにする? 明日? 明後日?」

シャーは、目を輝かせながら、当然のように彼に問いかける。

「ちょっと待ってください!! そんなこといきなり言われても・・ まだ、お互い何も知りませんし・・」

「大丈夫よ 愛なんて、結婚してからゆっくり育んでいけばいいんだから」

「でも、式をあげるにしても、まだこの世界にきたばかりで資金もありませんし・・ 

婚約の手続きだけは済ませて、式は、お金が溜まってからにしましょうよ」

「え〜 楽しみにしてたのに〜」

「借金だけはしたくないんで、こればかりは譲れないですね」

「わかったわ・・」


どうやら、納得してくれたらしい。

「そういえば、まだ、名前を聞いていなかったわね。」

「山草健斗です。遅くなって申し訳ありません。あと、助けていただいてありがとうございます。」

「ヤマグサ・・ 覚えにくいからケンちゃんね、あと、お礼ならこの子に言ってあげて」


彼は、やっとエリーがその場にいたことを思い出し視線を向けると、

そこには、頬を大きく膨らませ、彼を睨んでいるエリーがいた。

「ごめん ついつい話に夢中になって・・」


謝ったが、時すでに遅し、エリーは、魔法の詠唱をはじめた。

「え!? ちょっと待って、何する気!?」

「あらあら〜 怒らせちゃったわね〜」

「シャーのほうがいいんだ・・ エリーよりシャーのほうがいいんだ・・」

「待って 待って シャー助けて〜〜」

「あ、もう家族になるんだし、他人行儀な言葉遣いはやめてね〜」


シャーが呑気な発言をした次の瞬間、

「ボルテッカ!!」


魔法が発動し、彼の記憶は、そこで途絶えた。

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