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第四話 〜俺、消されました〜

『WPL』とは、『Would Psychic Laboratory (世界超能力研究所)』のことである。

本当に存在しているのかすら謎に包まれており、一種の都市伝説となっている企業である。

やつらはその企業が存在し、異世界の人間の遺体を所持していると言った。


彼は、意味がわからなかった。

それもそうである、ハイジャックに巻き込まれ、目の前で人間が消失し、

なおかつ、謎の機関が異世界の人間の遺体を握っていると言って来たのである。

たとえ、超エリートだとしてもあくまで普通の人間だ、

そんな常識外れなものを立て続けに見せつけられたら混乱もする。

彼は、一度呼吸を整えた後、逃げる手段を考えた。

(ダメだ・・ 上空1万メートル、外へ出る手段はない、かと言って戦うにしても、

やつらは一振りで大男を消せるほどのバケモノだ・・ 万事休すか・・)

彼らの命運は、国の対応次第となった。

しばらく経つと、男がまた口を開いた。

「おい さっき、連絡が入って『そんな機関など知らない』だとよ。」

その言葉は、事実上、乗客全員の死を意味していた。あきらめかけていたその時、

鋭い光線が男の右肩を貫いた。それは、乗客の一人で赤ん坊を抱えた女性が放ったものであった。

「イテェ、よくも俺の右肩を・・」


「私も異世界の人間で同じ魔法を使えるわ、あなたはもう杖を振ることはできない。

大人しく元の世界に帰りなさい」


「驚いたな・・ まさか、異世界民が俺たち以外にいたなんて・・ しかし、舐められたものだ。

杖を振れなければ魔法を使えないと思われているとは・・」

男は、意味のわからない呪文を唱え始めた。次の瞬間、鋭い光線が女性の胸元を貫いた。

さっき、女性が放った攻撃と同じものである。

「なんで・・ 杖を振るってないのに・・」

「俺クラスの魔法師になれば、詠唱だけで魔法を使うくらいは可能なんだよ。見てろ」

というと、男は、また呪文を唱え始めた。

唱え終わった瞬間、男の体が光に包まれ、しばらくすると傷が完全に治っていた。

「そんな・・」

「俺に逆らった罰だ。意識があるうちに赤ん坊から始末してやるよ」

「やめて・・ その子だけは助けて・・ 誰かあの子を助けて・・」

女性は、今にも力尽きそうな声で助けを乞うが、乗客たちは、聞こえぬふりをする。

「お願い・・・」

男が杖を拾い、振り上げたその時、彼の足は、赤ん坊の元へ走っていた。

(なにをやってるんだ俺は・・)

しかし、彼の足は止まることはなかった。それは、彼の人生初の賭けだった。

なんでもできた彼が、『できるかできないかわからない』ことに飛び込んだのは・・

『助ける』ただその一心だった。


彼は、杖が振り下ろされる直前に赤ん坊の元に辿り着き、赤ん坊を抱きかかえ男から距離を取ろうとしたが、魔法は発動した。彼が死を覚悟した瞬間、時間の流れが遅くなったように感じた。

(ああ・・ これが死ぬ瞬間というものか・・)

そんなことを考えたが、彼の意識はそこで途切れた。

誰もがこう思った。彼は、『消失』したのだと・・

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