第一話 〜俺、転勤になりました〜
「納得出来ません」
壁全部がモニターガラスで覆われている部屋で若い男と中年の男が口論になっている。
現在の時刻は、午前10時過ぎ
他の社員は聞こえていないのか黙々と仕事に取り組んでいる。
「なんで、いきなり海外に行かなければならないんですか?」
「上が決めたことだ。拒否権はないぞ。来週からシリコンバレーに飛んでもらう」
どうやら、海外に転勤になることについて上司に抗議をしているらしい。
「理由を聞かせてください。なぜ、いきなり」
「本社の人材が体調を崩して退職し、人手が足りないらしい」
「それは、わかりました。しかし、なぜ、私なのですか?
他に優秀なエンジニアならたくさんいるでしょう」
「私に聞くな。そんなことは知らん。とにかく、3日後の飛行機だ。逆らうな!!」
上司の高圧的な態度に若い男は口を閉ざした。
「申し訳ありません」
「分かればいい。早く仕事に戻れ」
納得いってない表情を浮かべながらも男は自分のデスクに戻った。
「長かったですね なんの話だったんですか?」
「もう、最悪だ。来週からシリコンバレーに転勤だって」
「うわ 本社からお呼びがあったんですね」
「そうなんだよ。行きたくねぇ」
「独身なんだし仕方ないですね。 頑張ってください。」
「他人事だからそう言えるんだよ。 山崎〜 部下なんだから代わりに行ってくれよ〜」
「嫌ですよ。俺は、家で愛しのハニーが待ってるんですから〜」
「はいはい ご馳走様」
「先輩その態度はひどいっすよ でも、他に優秀なエンジニアならたくさんいるのになんで先輩なんですかね?」
「知らない 聞いたら『そんなこと知ったことか!!』って逆ギレされたし」
「ハハハッ 部長ならやりかねないっすね」
「とりあえず、今日は、有給使って荷造りとかやるわ お疲れ〜」
「お疲れ様です〜」
などと挨拶を交わし、男はオフィスを後にした。