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〜プロローグ〜
エリート。
俺がそう呼ばれるようになったのは一体いつからだろうか。
小学生の頃には、周りから神童と呼ばれ、中学、高校、大学も世間的には超一流と呼ばれるところを卒業した。
現在は、大手IT企業のエンジニアとして、自分で言うのもなんだが活躍している。
側から見たら、羨ましがられる人生だと思うが実はそうでもない。
なぜなら、生まれてこのかた25年、『挫折』というものを味わったことがない。
この話を苦労人と呼ばれる人にしたら
「挫折のない人生なんて楽しいじゃないか」
と言われ、自分の苦労エピソードを延々を語られるかもしれない。
しかし、その解釈は誤りである。
『挫折をしたことがない』とは『どんなことでもやればすぐにできる』ということである。
つまり、『頑張ることの喜び』を味わったことがない。
実際、本物のエリートの人は退屈なのだ。
「ああ 異世界にでも行って人生やり直したいな」
まさか、この言葉が現実になるなんて、この時は思いもしなかった