第0話
荒野に約5000千もの人が一人の男を頂点にピラミッド型の列をなしていた。それは男女に関わらず、一人一人が百戦錬磨の猛者のようであった。頂点にいるのは見上げるほど大きく、はち切れんばかりの筋肉の鎧を全身にまとい、穴だらけの警官服を着てどっしりと腕を組んで仁王立ちで構え、深くかぶった警官帽から覗かせる力強い眼はまっすぐに地平線を睨みつけていた。男が一歩、二歩と鋼鉄でできた下駄を進ませても、後ろの5000千人は微動だにせず力強く男を見つめた。
二十一世紀。科学は隆盛を極め人々は幸せを謳歌し、この希望の光は未来永劫人類を明るく照らすと誰もが信じて止まなかった。西暦2040年に人類の手を離れ独自に、それも人類の予想を格段に上回る速さで進化を続ける人工知能ーodinが開発されると、科学の進化の速さは一足飛びに早くなった。odin開発計画の根幹には「人類の文明のさらなる飛躍」があり、もちろんodin自体にそうあるようにとプログラムされている。
odinが開発されて以降今まで研究されなかった分野の発展、治療法の見つかっていなかった難病の治療法、考えもしなかった技術の開発など多くの恩恵がもたらされ、大昔のSF小説のように全てがコンピュータによって管理され人々はodinが生む甘い蜜だけを吸い続ける存在となった。もはや不幸はなく全ての人間が幸福に包まれて死ぬ理想郷が作られたのである。
しかし、それに伴ってどうしてもコンピュータで解決できない問題も徐々に現れた。全てをコンピュータに任せているわけでそのエネルギー資源の消費は半端ではなく、エネルギー資源の獲得競争はさらに激化し、止まること知らない人間の欲望はさらに加速し、開発はさらに進み今度は隣の土地が欲しくなるといった始末である。これにより水面下での国家間の争いは激化の一歩を辿るのである。
西暦2100年を目前とした2092年odinは遂に、「文明の開発」だけでなく「人間の開発」を行う技術を開発する。人間の開発といっても0から人間を作ることではない。生後3日以内の幼児の「能力」の開発である。これまた大昔のSF小説のような超能力を持った人間の誕生である。
二十二世紀に入ると国家間の摩擦は火を吹くほどに熱くなり、2130年人類は500年にも及ぶ冷戦と熱戦の終わりなき繰り返しの戦争地獄へと突入する。当然超能力を持った人類は戦線に投入され、自国のodinが作った兵器を他国のodinが作った防衛装置で無効化するという不毛な戦争が繰り返された。後に「終末戦争」と言われるこの戦争の末期には当然のごとく核兵器も投入され200億にも膨れ上がった人類は1億人たらずまで減少することとなる。核兵器の乱用により地上には住めないと判断した人類はその後約100年間もの間地下に潜り地上の汚染がなくなるのを待ち、それにより戦争は区切りなき終わりを迎えたのであった。
人類が再び太陽の光を浴びる頃には既にかつての国という国は崩壊し、地上にも少しづつ緑が見え始めた頃であった。100年もの間でodinは計算を繰り返し遂にはodin自体の存在の否定が「人類文明のさらなる飛躍」につながると結論づけ、99%の機能が凍結された。近代的な文明はほとんど残っておらず文明は中世のものまで後退したものになったが生き残っただけでも儲けものというやつである。
さらに約300年が過ぎ、西暦でいうところの3000年を超えたあたりで再び世界には国家が生まれかつてニホンと呼ばれた島国に一人の男が仁王立ちしていた。
この男の鬼世紀末伝説が始まるのである。
文章ヘタクソなのは勘弁してください。
まあそのうちうまくなるといいねくらいの気持ちでどうぞよろしくです。