潮騒
さしてとりとめのないことを
横に置いて
鼓膜から満たす
溢れそうな波の音
海岸線に並ぶ人びとは
ひとり増え
ふたり増え
そして静かに
いなくなる
カモメの白い背中に
託そうとしたのか
それとも
沈む夕陽に、
簡単に寂しくなれる
気恥ずかしさと
律儀に寄り添う影
立ち寄るのは
いつの間にか増えてしまった
大きな荷を下ろし
一時
息をやわらかくするため
眼差しから
漕いでいく
感知する空と
何も言わない海
薄皮に透けながら
流れる血と
満ちていく潮
呼吸を巡らせれば
まるで変わりのない
新しいわたし
輪郭を研ぎ澄ませ
静かにひとりになる
今は波だけが
寄せる器も
いつか明るく
誰かを想えるように




