第11話 魔王の膝枕と王女姉妹
何か柔らかいものが、俺の後頭部を支えてくれている。
誰かが俺の髪を優しく梳かすように触れている。あまりにも心地良くて、もう一度眠ってしまおうかと思うくらいだが、そういうわけにもいかない。
「……寝てる間に手出しするとは、さすがは元魔王だな」
目を開けると、予想した通りに、亜麻色の髪のエルフの悪戯な微笑みがそこにあった。
彼女は俺のいつも座っている席の隣に腰かけ、俺の体勢を変えて、膝枕をしてくれていたようだ。頭の下にある柔らかいものは、つまりヴェルレーヌの太ももだったというわけだ。
彼女は機嫌良さそうにしていたが、そのうちに少し困ったような顔をすると、口を尖らせて言う。
「もう少し動揺するかと思ったのだが、そうでもなくて残念だな」
「……分かってるかもしれないが、他のことを考えてたからな。俺が寝てから一時間くらいか?」
「いや、それよりは少し早いな。ご主人様が眠っていたのは、三十分ほどだろうか」
「そうか。まだ開店まで時間があるな」
俺は身体を起こそうとするが、肩を引っ張られて戻される。
「……起き上がれないんだが?」
「少しくらいいいではないか、私も毎日の勤務でくたびれているのだ。時々潤いがなければ早く老いてしまう気がする」
「膝枕は女性の老化を防止するのか……? 膝が痛くならないか」
「ふふっ……これくらいでどうにかなるものか。私はこう見えても、元魔王なのだぞ」
それはごもっともだが、これ以上この状態が続くと、さしもの俺も、成熟した女性の太ももの柔らかさに対して、男としての反応を示しかねないことは否めない。
「……それで、どうだったのだ?」
「何の話だ? ……と、とぼけてもしょうがないか」
「私はご主人様の魔法を代行したのだからな、何が起きているのかは分かっている。心配するな、ティミスたちに教えることはない。気づかれてしまったら、それはご主人様の落ち度だがな」
「『明かり虫』って言われてたから、大丈夫じゃないか。まあ、一見すればそんな感じだしな」
さらっと言ったつもりだったが、ヴェルレーヌは口元を押さえて笑った。
「よもや、その『明かり虫』が、ご主人様の写し身……SSSランク級の冒険者強度を持っているなど、彼女たちは想像もしていないだろうな」
そう――俺がヴェルレーヌに頼んでティミスに付与した魔法文字は、『スモールスピリット』という魔法を発動させるためのものだ。
俺の力の一部を分けて分身を作り出すのだが、その分身は、ごく小さな光の玉にすることもできる。すると見た目が『明かり虫』に似ているので、悟られずに済むという寸法だ。
そして俺は、『スモールスピリット』に意識を移し、自分で操作することができる。ティミスの胸に書かれた魔法文字から発生し、外に飛び出したあと、俺はずっと彼ら三人を見守っていた。
そのスモールスピリットが持つ力は、俺の力の一部――冒険者強度にして、5万相当。戦闘評価2万5千、回復魔法や補助魔法を含めた他の評価が2万5千という内訳だ。
「その様子を見ると、作戦はうまくいったようだな。捕獲した火竜の様子を見に行くのか?」
「いや、火竜についてはうちの連中に任せる。前から考えてたことがあってな」
「ほう……もしティミスたちが窮地に陥ったら、彼らに救助させることも考えていたのか」
「それは絶対に無しだ。そこまですると、今回の依頼の趣旨に反する」
俺は言ってようやく身体を起こすことを許された。まだヴェルレーヌは物足りなさそうだが、いつまでもこの姿勢に甘んじているわけにはいかない。
「……まあ、俺ももう少し我慢するべきだったんだがな。あと少しだったんだ、本当に」
「やはり……ご主人様が、ティミスたちを守ったと。そういうことなのだな。なぜ、そうも浮かない顔をしているのだ? 彼女たちに気づかれず、依頼を達成させたのではないのか?」
「俺が代わりに仕上げをするのは、なるべく避けたかったからな。依頼の内容は、彼女たち三人に勲功を上げさせることなわけだから。これじゃ、ティミスたちも手ごたえがないだろう」
ティミスが火竜の攻撃を盾で受けたあと、最後のチャンスが作れた可能性もある。そこまで我慢すべきところを、俺はティミスが突進を受ける前に介入してしまった。あれは、プロとしては我慢すべきところだった。
「ふむ……しかし、彼女たちが耐性を上げていなければ、火竜に近づくだけで火傷をしていた。マッキンリーは『隠密ザクロ』で気配を薄れさせなければ、存在に気づかれて狙われていただろう。そういった仕込みがなければ、途中まで作戦を進めることもできなかったのではないか?」
火竜は怒った時だけでなく、常に身体の周囲に高熱を放っている――そのことに構わず攻撃できたのは、『火炎クルミ』のクッキーと、『サラマンダーの骨酒』の効果があったからだ。
「それにご主人様が介入したということは、彼女らのパーティは壊滅しかかったのではないか? その状況を冷静に見ていられるようなら、私はご主人様に対する認識を変えなければならない。ご主人様が冷徹な観察者であったとしても、それはそれでそそられるものもあるのだがな」
「……難しいもんだな。火竜のランダムな動きを吸収するために、もう少し研究を重ねたい」
「研究……あのノートを、さらに完全なものにするというのか? あれだけでも、資料としては完ぺきに近いと言うのに。まだ足りないというのか……?」
完ぺきであったなら、俺はただ見守っているだけで、ことを完遂できたはずだ。
『銀の水瓶亭』はどんな依頼にも応じ、こともなく達成するために、事前にやれることは全てやっておかなければならない。
幸いにも、俺には火竜をこれから、いつでも観察することができる環境が手に入る予定があった。
そのとき、店のドアベルが鳴った。
まだ開店前だというのに、客が入ってくる――緑色の外套を被った男が入ってきて、俺の隣に座る。
「毎度どうも、ウェルテム商会です。酒と食料の納品にあがりやした」
ヴェルレーヌは男の出した納品書にサインをして戻す。男の名は、ジョイス・ウェルテム。俺の店に出入りしている商人である。
主な仕事は、酒と食料の販売――というのは、表向きの話だ。
ウェルテム商会の裏の顔は、ふだん王都に流通しない希少な物品を商う『希少物商』である。
ジョイスは俺の隣に座るとラム酒を頼み、そして言った。朝でも関係なく酒というのは、他人のことは言えないが、彼のいつもの習慣である。
「旦那、例の話ですがね。管理人もすでに雇って、環境の整備を始めさせてます」
「ああ、火竜と幼竜は信頼できるやつらに運ばせる。食料なんかは充実してるのか?」
「ええ、私も行ってみたんですがね、あれはなかなかいい場所ですよ。なんだって火竜は、人間のいる森を選んで、あの森を選ばなかったんだと思うくらいです」
「人間のほうが、火竜よりあとに森にやってきたんだろうな。だが、特定の森でなければならない理由はないはずだ。環境的には、それほど差はないからな」
「そうだといいんですがね。それにしても旦那、考えやしたね。人の近づかない森をまるごと管理して、火竜を放牧するとは……こんなこと、普通は実現できやせんよ」
俺とジョイスの話を聞いて、ヴェルレーヌが目を見開いている。しかし彼女はすぐに事情を理解すると、何も言わずに納入された物品の確認を続けた。
「火竜の素材は需要があるのに、貴重すぎるからな。鱗なんかは、金貨50枚なんて値段で取り引きされてる。新しい鱗に生え変わるときに、古い鱗を取るのは簡単なのにな」
「古い鱗でも質は落ちやせんからね。むしろ古ければ古い方が、強度があっていいくらいで」
ジョイスはヴェルレーヌの出したラムをあおり、一息つく。
彼も俺と同じ飲んだくれの類だが、義理人情には厚く、取り引きにおいては誠実そのものである。だからこそ俺も、火竜を放牧するなんていう話を持ちかけたわけだ。
「しかし幼竜が育って、また繁殖期に同じ森を使うとなると、火竜だらけになっちまいませんかね?」
「そうだな。だが、幼竜は成竜と違って、子供のころに手なづけると人間の言うことを聞くようになるんだ」
「ああ、そうだって言いますな。ドラゴンマスターと呼ばれる連中は、幼竜と一緒に育つとか。もしかして旦那も、そういった経験がおありになるんで?」
「俺はただの農家の息子だ。ドラゴンマスターだったのは知り合いだよ」
「っ……そ、そんなところにまでツテがあるんですかい? 旦那、あんたはどこまで……」
「さて、火竜が放牧地に移動したあと、俺も一度様子を見に行く。幼竜を見せたいやつがいるんでな」
話を切り上げると、ジョイスは肩をすくめ、残りのラムを飲み干し、代金を置いて出ていく。最後に俺たちの方を見て深々と頭を下げる――それが彼が商人として、最も大切にしている流儀だった。
◆◇◆
王都に帰還したティミスは、店の夜の部になってから顔を出した。
そして、他の客が聞いていないことを確認したあと、持ち帰ってきた鱗をヴェルレーヌに見せる。俺はいつものごとくエールを飲んでいた。
「火竜は、このギルドの方がどこかに運んで行きましたが……どちらに運ばれたのですか?」
「それについては明かすことはできませんが、今回の火竜は討伐――殺されるわけではありません。あの森から移動させた時点で、『撃退成功』とさせていただきます」
「は、はい。森の近くで暮らす人々も、安心できると思います……」
ティミスも、ライアも、マッキンリーも。三人とも、この店に入ってきてからの態度が変わっている。
何か、畏まっているような。少し砕けたところのあったマッキンリーすら、その顔は真面目そのものだった。
「今回の依頼の報酬について、厳密に決めていなかったと思うのですが……私は、どんなものであっても、必ずお支払いできればと思っています。このギルドに依頼を持ち込んで良かった、そう心から思います」
「……私たちは火竜と戦ったが、そこまでの打撃を与えられなかった。しかし、火竜は倒れ、『森の狩人』の罠にかかった。未だに、何が起きたのか分からない……しかし……」
無念そうなライアの言葉を、マッキンリーが引き継ぐ。
「俺たちが未熟だと知っていて、それでも依頼を達成できるように導いてくれた。デューク・ソルバーという人が、俺たちを守ってくれたような気がしてならないんです」
――明かり虫だと思っていたはずなのだが。そこまでデュークが神格化されてしまうというのは想定外だった。
実際、俺は彼らを見ていた――というか、ティミスに襲いかかる火竜に目つぶしを食らわせ、ひるんだところに魔法弾でダメージを与え、罠の上に誘導して捕獲し、マッキンリーの持っていた残りの麻痺睡眠弾を代わりに撃ち込んでおいた。
そこまでしてバレないということも、やはりない。三人の記憶を飛ばすことも考えたが、そこまでするのは逆に非道である。
唯一の救いは、デュークが架空の名義であるということだ。三人が俺に辿りつくことは、絶対にない。
「報酬は……私の持てる全てでお支払いします。ですから、お願いします。デューク様に、一目お会いさせてください。このお店に出入りされているのなら、直接会って感謝の気持ちをお伝えしたいんです……!」
――絶対にないというのに。
ティミスが目を涙で潤ませながらヴェルレーヌに訴える。ヴェルレーヌはそれでも俺の方に視線を向けたりはしない、それは彼女の俺に対する優しさであろうか。
「私も自分の未熟さを痛感した。デューク殿に鍛えなおしていただき、お嬢様を守るために強くならなければ……私からもお願いする。どのようなことをしてもいい、デューク殿に会えるのならば、何でもする……!」
「俺もお願いします、このギルドに入れてください! ただ働きでいい、デュークさんに会えるなら何でもします!」
俺は本当に、こんな展開になるなど想像もしていなかった――ノートを介して指導するだけなら、デューク・ソルバーという人間の存在を、そこまで彼らが意識するとは思っていなかったのだ。
だが、彼らは自分たち以外の力で火竜が倒されたとき、真っ先にデュークがやったのだと思うくらいには、彼に対する敬意を抱いていた。
つまり、俺に対しての敬意を。
そしてティミスはデュークに会えなかったらものすごく落ち込んでしまいそうな、言うなれば片恋の状態にまで、デュークへの敬愛を募らせてしまっている。鈍い俺でもそれくらいは分かってしまう。
「私の命は、デューク様の教えのおかげでここにあります。この火竜の鱗も、デューク様に捧げるべきものです……力が及ばない私を、優しく導いてくれた。そんな彼に、一目でも会ってお礼を……っ」
ティミスが必死に訴えるのを、ヴェルレーヌは優しく微笑んだままで聞いていた。
「……では、ティミス様。あなたが自分の力で強くなり、副騎士団長となることができた暁には。それを祝うために、あなたの前に姿を現すようにお願いしておきましょう」
「っ……ほ、本当ですか……?」
「ええ。でも、決して無理をなさらないでください。急がずとも、あなたはまだ若い。デューク様も、あなたが想像されているよりはお若い方です。きっと、待っていてくださいますよ」
「あぁ……デューク様……デューク様が待っていてくださるのなら、私……必ず、強くなります……!」
ティミスは涙を拭いながら、誓いを新たにする。これから彼女は、着実に腕を磨いていく道を選ぶだろう。
ヴェルレーヌに感謝しなくてはならないところなのだが、もう一段階クリアしなければならない関門がある。
カランコロン、とドアベルが鳴る。そして姿を現したのは――ミラルカと、マナリナだった。
振り返ったティミスが、すぐに気づく。そこにいるのが、自分の敬愛している姉だということを。
「お姉さま……マナリナお姉さま、どうしてこちらへ……?」
「ティミス……久しぶりですね。あなたに会えると聞いて、ディック様に呼ばれて来たんです」
「……ディック? ディック様とは、どなたですか?」
姉に会いたいというティミスのために、今日会えるようにミラルカとマナリナに連絡していたのだが――そのおかげで、正体バレの危機に陥ってしまった。
「そちらの席の方です。ディック様は、私の恩人で……」
「ディック……そのような名前だったのか。デューク・ソルバーかと思ったこともあったが、やはり違うのだな」
「そ、そうか……そうだよな。気前がいい良い人なんだけど、やっぱりただの酒好きなお客さんだよな」
ライアは勘がいいのか悪いのか分からないが、彼女のおかげで俺は最大の危機を乗り越えられた。
ミラルカは全てを察しているようで、俺の方を見ると、ふぅ、とため息をつく。
「気前のいいディックさん、お酒をいただけるかしら? あなたのお勧めでいいわ」
「っ……あ、ああ。まとめておごってやるから、向こうのテーブルにでも座ったらどうだ?」
「ディック様……いえ、分かりました。今日は、妹と一緒にご馳走になります」
俺の気持ちを察してくれて、マナリナは妹を連れて、カーテンで区切られたテーブル席に歩いていく。ライアとマッキンリーも今日はテーブル席に座り、他の客に混じって飲んでいた。主人であるティミスが姉に会えたことを、ライアは自分のことのように喜んでおり、マッキンリーは一人酒でも、何か満ち足りた顔をして飲んでいた。彼が俺のギルドに入りたいというのは、どうやら本気のようだ。
残された俺を、ヴェルレーヌはしばらく仕事をしながら見ていたが、たっぷり間を空けてから言った。
「お客様、ティミス様に正体を明かすときには、なんらかの責任を取る必要が出てきそうですね」
こんなときだけお客様扱いするヴェルレーヌ。俺はカウンターに突っ伏して、空になったエールのジョッキを振る。白旗を振るような気持ちで。
「王女姉妹を心酔させてしまうとは……『幻の五人目』が、この国を影から支配する日も遠くありませんね」
「そんなつもりはなかったんだが……俺には女心が分からん」
「お教えしてさしあげましょうか? 『女心が分かる方法』というノートでもお作りいたしましょうか」
「……暇があったら是非頼みたいところだな」
皮肉を言う気にもならない俺を見て、ヴェルレーヌが嬉しそうに笑う。ティミスたちの席からは、再会を喜ぶ姉妹の声が聞こえてきていた。
ミラルカには、別件の用事があったのだが。あとで酒がいい具合に機嫌を良くしてくれたら、とある交渉に臨まなければ――ただ、休みの日に一緒にある場所に来てくれというだけなのだが。
◆◇◆
後日、なんとかミラルカを説得した俺は、彼女を連れて火竜の放牧場となった森に向かった。
放牧場の管理人としてジョイスが雇ったのは、ドラゴンマスターの経験がある老人だった。ジョイスはそれを知らず、竜の知識がある人間というだけで募集をかけ、大当たりを引いていたのだ。老管理人は俺たちを快く迎え、竜がいる巣へと案内してくれた。
ティミスたちが戦ったメスの火竜は、ドラゴンマスターによって警戒を解かれ、幼竜の近くにいても俺たちを攻撃してはこなかった。
「火竜の幼体ってのは、何ていうか、めちゃくちゃ可愛いんだ。だから、見せてやろうと思ってな」
「ふぅん……そうなの。竜の子供が、可愛いとは思えないけど……」
洞窟の中に木の枝などを敷き詰められた巣が作られ、人間の赤ん坊くらいの大きさの幼竜が三匹いて、ピイピイと鳴いている。丸っこい体でよちよちと歩いてくると、巣の端っこによじ登り、ミラルカの足元にべち、と落ちた。
幼竜はそれでも起き上がり、ミラルカの足にすがりつき、ピイピイと鳴く。俺から見ても何とも庇護欲をそそる――これは母親でなくとも、守りたくなる気持ちがわかる。
「おお、かなりなついておられますな。この子は三匹の中でも警戒心が強いのですが」
「……かっ……」
「そうなのか……ミラルカ、どうした?」
ミラルカは何も答えないまま、幼竜を抱え上げる。そして腕の中で大人しくしている幼竜を撫で始めた。
「……可愛い。育ててあげたい……こんなに可愛い生き物がいたなんて……よちよち、いい子でちゅねぇ」
幼竜は喜ぶようにピイピイと鳴き、ミラルカはもうデレデレになっている。
可愛い生き物が好きだというから、見せてやろうかと気まぐれを起こしただけなのだが、どうやら想像以上に大ヒットしてしまったようだ。
「……はっ。あなた、私とあなたの間に子供ができて、こうやって可愛がっている姿を想像したりしていないでしょうね。そんなことをしたら殲滅するわよ」
「俺もそこまで命知らずじゃないぞ……って、なんで機嫌が悪くなるんだ」
「う、うるさいわね……ああごめんなさい、驚かしちゃいまちたか? 怖いお兄ちゃんがいるから、向こうで遊びましょうね」
赤ちゃん言葉で幼竜をあやしつつ歩いていくミラルカ。その後ろを、もう二匹の幼竜がピイピイと鳴きながらついていく。
その姿を見て意外に母親に向いてるのかもしれないと思うあたり、俺はミラルカに怒られても無理はないかもしれない。
少し離れた場所から、母竜はミラルカと遊ぶ子供たちを、時々くるる、と喉を鳴らしながら見守っていた。