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悪役お嬢様の婚約破棄計画~ヒロイン、雇いました 編~

続きはありません。


私、城崎涼花は一部で流行っている乙女ゲームの『悪役お嬢様』に転生しました、まる。

何か悪いジョークのようですが、現実です。


乙女ゲーム『あなたに恋して、秘密の七味』というのが、この世界。

攻略対象は、6人+1人。

さて、この『+1人』というのがポイント。

6人は普通に恋愛して攻略するのですが、この1人は違います。

この1人は、ヒロインの復讐ルート。

小川誠司は幼い時の不用意な発言で、ヒロイン素山華怜の父が経営してた会社を潰したのです。

当り前のように、本人はその時のことを全く覚えていません。

ヒロインは彼に復讐するため、舞台となる学園に入学するのです。

このルートのみ、悪役お嬢様がヒロインの味方になるのです。

ちなみに、この悪役お嬢様は各ルートごとにヒロインが攻略しようとしている攻略対象たちの『婚約者』として登場します。

どんだけ、この悪役お嬢様をリサイクルするのかとゲームの情報公開時に話題になりました。

ファンの間では、『リサイクルお嬢様』と不名誉なあだ名で呼ばれていました。


ということを、ついさっき思い出しました。

現在、周りの大人たちは大変な騒ぎの中にいます。

子どもの私でも分かるくらい。

ヒロイン父の会社は今、倒産の危機の真っただ中にあります。

ヒロイン父の会社は黒い噂のない超優良企業らしくて、父の会社で重要な取引もあるようで様々な影響を及ぼしているのです。

これが、ヒロインが復讐を決意するきっかけの『小川誠司ルート』の冒頭ですか。

その時に父が、「あの子供のせいで」と小さい声で言ったのを聞いてしまって、前世の記憶を思い出したということです。

あの乙女ゲームの知識だけですけど。


ヒロイン父の会社が倒産するかもしれないという中、私の誕生日が近付いてきました。

私の誕生パーティーをしようと父が言ってきたのですが、私は「私の誕生日プレゼントは、『ヒロイン父の会社を救ってください』」とお願いしました。

城崎家は、この乙女ゲーム世界では世界トップの企業。

例え、勢力のある小川が息子のワガママのためにヒロイン父の会社を潰そうとしても、ヒロイン父の会社を潰したくないという城崎の娘のワガママの方が強いのです。

建前に、『娘のワガママを叶えるために、小川の意向を無視しました』が通用しますからね。

私の意図を察した父はさっそく小川にあらゆる方向から圧力をかけ、ヒロイン父の会社の倒産を避けさせました。

それからしばらくは、小川誠司の癇癪が酷く家族が手をつけられない状態になったらしいという噂を聞きました。

これにより、城崎と小川は企業や家族同士の付き合いが完全になくなりました。

小川誠司の父は「あの家のせいで、息子が機嫌を損ねた」と周囲に愚痴ってこれから有名になるとある大企業の社長はかの会社を見限ったそうです。

結果、ゲームでは小川誠司の無二の親友になるはずだった見河玲二の関係がなかったことに。

そして、彼ら二人による悪役お嬢様をフルボッコにする共闘フラグが消滅しました。

フルボッコにされたゲームでの私は、『小川誠司と見河玲二のホモ説』を信憑性の高い少しの真実を交えて、嘘偽りない事実を流して誰しもデキてるとしか思わせないウワサをものすごく広く浸透させてあげました。

これにより、彼ら二人は生涯妻を持つことができませんでした。

ゲームでの状況を考えると、彼らにとってはこれでよかったかも?


色々あり、ヒロイン素山華怜と友人になりました。

なんと、彼女も転生者のようです。

そんな時に、悪評を振り撒いている小川誠司と私の婚約話が持ち上がりました。

ちなみに、ゲームでは小川誠司と私は婚約していませんでした。

どういう経緯で婚約話が持ちあがったといいますと、私の母と小川誠司の母は親友なのです。

この城崎と小川の仲が悪い状況は自分たちにとって都合が悪いと、秘密裏に二人の独断で進めて断れない状況にまで持って行ったのです。

このことに城崎一族と華怜さんは大激怒。

私は冷たい目で、母を睨みつけました。

小川というと、小川誠司の悪評を有耶無耶にするためにもこの婚約に大変乗り気だと人伝に聞きました。

「そんなわけで、華怜さん。『婚約破棄』を手伝って下さい!報酬は、『高校の授業料全額』ですよ」

「乗った!アイツ、うちの会社を潰そうとしたことをきれいサッパリ忘れてるのよ!そんなの許せるはずないじゃない!自分だけ、何もなかったように幸せになるなんてさせないわ」

父とヒロイン父は、「その程度の報酬で!?」と驚いた顔をしているようですが、前世一般家庭の子どもでは、乗るしかない報酬ですよ。


高校の授業料という報酬に、華怜さんは鮮やかな手口で小川誠司を堕としていきました。

他の攻略対象たちが近づいて来ても、スルースキルを発揮して無視して相手にしません。

涙目で去っていく、腹黒副会長の樋口 優孝ゆたかにそそるものがちょっとありました。

今度、ちょっとイジメて突いてみましょう。

きっと、私好みの反応を返してくれるはずです。

華怜さんが小川誠司を堕としている間、私は友人になった見河の社長にお願いして小川の不正を調べてもらいました。

この婚約に反対している父はとっくに調べ始めているでしょう。

ですが、決定打の物が欲しいため二重に調べているのです。

見河の社長にも、私の父が調べているのではないかと指摘されたのですが、それを言うと納得してもらいました。

実は、見河の社長に恩を売ったのです。

私付きの教育係が、見河の社長の妹。

扱いは簡単でしたが、周囲から大人の皮をかぶって気持ち悪いといわれていた私に根気よく付き合ってくれた、母のような人。

母は早々に私の育児放棄をしていたので、小川誠司との婚約話を持ち込んできた彼女は一族から厳しい目で見られ、監視されています。

俗に言う、『乙女ゲーム期間中』は近くの別荘で接する人を制限されて軟禁されるみたいです。

話は逸れましたが、小川のせいで見河の会社の危機に陥った時に娘馬鹿な父にそれとなく何とかなるようにお願いしたのです。


乙女ゲーム中盤に差し掛かった頃予定より早く、華怜さんは嬉々として小川誠司を堕としたことを報告してくれました。

「ホント、アイツにはストレスが溜まりまくったのよね。これで婚約破棄させればやっとお役目開放ね」

「ご苦労様です」

そして、華怜さんへの貢物を差し出しました。

「やった!これ、ショコラールの新作の一粒1000円のチョコレートじゃない」

ここまで喜んでくれるなんて、前日にかなりの列を並んだかいがありました。


数日後の全校集会で、生徒会長である小川誠司が私物化しました。

「城崎涼花、お前との婚約を破棄する!」

全校生徒に学校から大切な話があるこの場で、小川の馬鹿息子と評判の小川誠司が私に婚約破棄を言い渡しました。

これは、城崎に全くメリットのない小川のみメリットのある家同士の婚約なのです。

馬鹿だから分からないのかなと呆れた思いをしていると、華怜さんと腹黒設定があるらしい副会長が笑いをこらえていました。

すぐに元の表情をつくろった華怜さんと副会長は私から視線を気まずそうに逸らしました。

目撃者もこれだけあるし、小川との婚約破棄を慰謝料を込めて請求できるでしょう。

メインに『精神的虐待』と『精神的苦痛』を持ってきて。

「そして、俺は愛する素山華怜と婚約する!」

「あはははは!ばっかじゃないの、コイツ」

「華怜?」

華怜さんの様子に呆然とする、小川誠司。

「私が、あんたを好きになるはずないじゃない。その足りない頭で考えてみたら?」

嘲るように言う、華怜さん。

「俺のことを好きだっていうのは嘘だったのか!?」

「当り前じゃない!あんたは、パパの会社を自分のワガママで潰そうとしたのよ。やり返すのは、当然の権利よ」

「俺はそんなことをやっていない!素山の会社は、普通にあるじゃないか!」

私の下僕化した副会長は、そっと小川誠司がヒロイン父の会社に混乱を催させた当時の資料や小川誠司が主犯だという資料を彼に差し出しました。

「樋口、お前、俺を裏切るのか!」

「すみません、会長。俺は、もう彼女なしに生きられない体になってしまったのです」

そう言って、私を指差しました。

「涼花様の私を罵るときの冷たいまなざしや微妙なさじ加減で体のあちこち踏みつける快感を手放せません!」

いやいやいや、私、そんなことしてませんから!

いつ、踏みつけた!?

証拠の写真をプリーズ!

「涼花、声に出てるわよ。その妄想、顔のせいじゃないかしら。いかにもって顔だもの」

そして、その他の生徒たちや先生たちは一斉に私から目を逸らしました。

納得することを言われても、それは理解したくない現実。

言葉攻めしただけで、ここまで妄想できるとは。

変態は侮りがたしですね。

「それで、バ会長。涼花様との婚約破棄は、もちろんするのですね」

鬼気迫る勢いの変態に、

「もちろんだ」

引き気味に答える小川誠司。

これ以上の、現生徒会長による全校集会の私物化はご免だと校長はこの場で生徒たちを解散させました。


そして、滞りなく私と小川誠司の婚約が解消されました。

その場に連行された華怜さんはというと、小川誠司の下半身事情を暴露し「こんな男と婚約したくないわよ!結婚する頃には、どことも分からない女とすでに子どもを作ってるわよ!」と拒否。

その後も、終始笑顔の華怜さんが小川誠司のこれまでの女関係や迷惑かけた先のエピソードを大暴露。

これを聞いた父とヒロイン父は頭を抱えたとか抱えなかったとか。

なぜ、城崎と小川の正式な婚約破棄の話し合いの場に華怜さんとヒロイン父がいたかといいますと、小川誠司が華怜さんと婚約すると言ったからです。

華怜さんは、拒否しましたが。

あわよくば、素山との繋がりができるという思惑で小川はいたようですが、その思惑を華怜さんは完膚なきまでに潰しました。

小川が城崎との正式な婚約破棄を素山に見せつけて、華怜さんが小川誠司を好きだと言ったら、この場で速婚約をするつもりだったのでしょう。

その思考に、思わず私は遠い目になりました。



あれから、小川誠司は日本以外の国の全寮制の厳しい寄宿舎に入れられたそうです。

私はというと、腹黒副会長の設定だった樋口優孝に「俺を罵ってくれ!踏みつけてくれ」と追いかけ回されています。



どうして、こうなったっ!?

私は鞭を片手に、変態ヤツを調教する決意をした_______

読んでくださり、ありがとうございました。

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