入学
いろいろアドバイスをください
春。
それは新たなスタートを切る人が多い季節。
桜もそのスタートする人たちの背中を押すように美しく咲き乱れる。
俺もまた、そのスタートする人の一人だ。
今日から中学生となるのだ。
いったいどんな生活が待ってるのか考えるだけでもドキドキしてくる。
はずだった。
「ちょっと、母ちゃん!なんで俺を起こしてくれなかったの!?」
「何度も起こしたわよ、このバカ!」
入学式当日にまさかの寝坊だ。昨日は早く寝たんだけどな...
「とにかく早く服着なさい!学校までお母さんが送ってあげるから!」
「それだけは絶対に無理!恥ずいじゃんかよ!」
やはり、この年齢になってまで母ちゃんと一緒に登校は恥ずかしすぎる。
そうこうしてる内に着替えは完了、もう家を出るだけになった。
母ちゃんはいつの間にか着替えも化粧も完璧になっていた。
「誰も見てないわよ、あんたなんか!」
そう、母ちゃんが言うと有無を言わさずに俺をオレンジの派手な車に乗せた。
学校に近づくにつれてすれ違う生徒が多くなる。もう限界だ。
「母ちゃん、もういいからここで下して!あとは自分で行くから!」
「もう、どれだけ母ちゃんといるのが恥ずかしいのよ。」
そういうと車を停めて俺を下してくれた。
「母ちゃん、ありがと!」
「先に行ってるからちゃんと入学式に間に合うように行くのよ!」
「わかってるって。」
そう言うと母ちゃんの車は先に学校に行った。そして俺もゆっくりと歩いて学校に向かった。
学校は家から50分ほど歩いた場所にある。
道の途中にはきれいな桜が咲き誇っておりちょっとした花見スポットで有名だ。
俺もここの桜が気に入っており、よく家族で花見に行ったものだ。
少し桜を見つめながらぼーっとしていると後ろからへらへらした少年が俺に話しかけてきた。
「おっす!はーるかちゃん!」
「はるかちゃんて言うなって何度言えばわかるんだよ。」
俺のことをはるかちゃんと呼ぶこのへらへらしていて髪が少し短めで細身の少年の名前は田中庄司という小学一年からの友達、いわゆる腐れ縁というやつだ。
「だ、誰に紹介してんだよ。」
「え、まぁいいじゃねえかよ。てか、なんで庄司は俺の心の声が聞こえてんだよ。」
「なんとなくそんな気がしたんだよ。さすが俺だな。」
「何言ってんだよ。とにかく、絶対人前ではるかちゃんて言うなよ!」
「まぁ任せとけって。」
信用ならん。とにかく俺は自分の名前に誇りをもっている。
絶対にバカにされたくないのだ。
そうこうしているうちにチャイムが鳴り響く。
「おい、やべーぞ、急ごうぜ。はーるかちゃん。」
「あ、また言ったな。このやろう。」
俺たちは全力疾走で学校に向かっていった。