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運動の秋 1

書き終えたら、世の中はすでに冬になっていた…orz…

「最近何にも起きなくて暇ですわ」

 

 ぽつりとそうこぼしたのは、いつものようにお茶会に乱入してきたセルニア国王女アマリーアです。金髪碧眼のビスクドールのような美少女が、つまらないと呟いて足をぶらぶらさせる姿は、彼女が8歳であったと再認識できる年相応な姿ですね。

 あ、なぜか睨まれました。


「あなたはお顔に考えが出るんですのよっ」


「キュキュキュキュキュッ」


 むにーっと頬を引っ張られました。結構痛いです。

 

「何か面白いことはなくて? 闘技大会のような」


 アマリーアは意外と血沸き肉躍る大会が好きなのでしょうか? 思わず下からのぞきこんでいると、べちっと顔を叩かれました。

 バイオレンスです! いや、ひょっとしたら反抗期かもしれませんね。ここはひとつ大人の視線でおおらかに接してあげねばなりませんよ。


「さぁ、お姉さんの胸に飛び込んでくると良いのです!」


 ばば~んと胸を逸らして腕を広げます。


「胸よりお腹の方が大きくてよ」


 ずぅぅ~ん…と撃沈しました。

 一番気にしているところを突かれましたよ…。怖いですね、子供の反抗期…(違います)。


「で、人の話は聞いていたのかしら?」


「むぅぅぅ~。聞いていましたよ。イベントですね」


「イベントというの?」


「はい。時々発生する様々な行事、催し物を言います。時にはラブハプニングもある美味しいイベントもあるのですよ」


 むっふっふ~と笑えば、気持ち悪いと返されました。

 再びがっくしと床に手をつきましたよ。やはりお腹がつかえて最後は転がりましたけどね…。




 さて、気を取り直してイベントがないかということでしたね。


「最近涼しくなってきましたし~」


 そうなると紅葉を見に行くとか、美味しいものを食べに行くとか…。

 考えたところで私は首を横に振りました。どちらも城にいてすぐできることなのです。


 紅葉は飛龍に乗ってお出かけすれば眼下一杯に広がる姿を眺められ、空から見た風景というのを楽しめますし、美味しいものは城にいれば大抵のものが出てきます。さらなる食を求めれば、太ってしまうという恐ろしい罠となりかねません。


 そうなると…芸術の秋、食欲の秋と来ましたから、残りは一つですね。

 古竜が最も不得手とするモノ。それは…


「運動の秋です!」


「で、具体的には何をしますの?」


 突っ込み早いですね…ですが、口に出した時点でアイデアは浮かんでおりますよっ。


「そこはお任せくださいお嬢様。必ずや私が素晴らしいイベント計画を立てて見せますとも!」


 びしぃっとこぶしを握った右手を空に掲げ、勝利のポーズをとると、アマリーアからぬる~い拍手がわきました。

 その表情には


「あまり期待いたしませんけど頑張ってくださいませ」


と。

 …表情を読んだばかりだったのに、表情から読んだ台詞をズバッと言われてしまいました。


____________________


「というわけなのです」


「ほほぉ」


 今回は騎士団の皆さんと計画を立ててからの提案ではなく、直接国王様に提案してみました。どうせなら皆さんをあっと驚かせたいですからね。


「だが、それだと不利なチームができるのではないか?」


 国王様のお茶の時間を狙っての突撃は成功し、今はにこにこ微笑む王妃様も交えて悪巧み・・・げふんげふん、計画中です。


「ですので、競技内容をいくつか変則的にして、どのチームにも難しく、かつ容易いものを選ぼうと思います」

 

 誰にでもできて、女性子供にも不利とならないようなものを考えていますと、椅子の上で背伸びをしつつ、プルプル震えながらも上半身だけは必死に優雅さを保ってお茶を飲むという水鳥のごとき苦労をしながら、セレブなお茶会で意見します。

 いつもならテーブルに乗せられるか抱っこされるのですが、王妃様が見えますのでマナーを守りますよ。たとえ横からその滑稽な姿が見えようとも!


「でしたら私、女性に有利な針に糸を通すなどの家庭的な競技がよろしいと思いますわ」


 王妃様はにっこりにこにこ。

 この世界の女性は針仕事などはちゃきちゃきとこなしてしまうため、確かに針や糸に触れない男性には厳しい内容です。ですが、王妃様…


 それは古竜にも厳しすぎるのですよっっ


 ガクリと椅子に手を付き、短すぎる指をじっと見つめてみました…が、この指では難しすぎるのです!


「何をお考えかよくわかりますので一言言わせてくださいませね。人の姿ならば問題ありませんわ」


 おぉぉぉぉ! 確かにそうですっ。


 私はガバリと身を起こしました。

 そのつもりでいたのについつい忘れてしまうのはこの竜の姿に慣れ過ぎた証でしょうかね。


「となると、競技内容は短距離走、障害物リレー、玉入れ、玉ころがし、糸通し…」


 いやいやいやいや、王様、明らかにおかしいですから最後。糸通しのみの競技は地味すぎです!


「糸通しは障害物リレーに混ぜましょう」


 慌てて軌道修正します。


「王妃の意見だ、できれば単体の競技にしたかったが…」


 どんだけ愛妻家なんですか国王様っ。いくらなんでも糸通しを単体ではさせませんよっ。


 なんだかんだと意見を交わしあい、騎士団の皆に最近国王の部屋に通いづめていると変な目で見られながらも、こっそりと文官の方達を引きずり込んで…(国王様は本当に財務官さんなどをこっそり闇討ちして部屋に引きずり込んできましたよっっ)…半日行方不明になる人が現れるという王城七不思議のような事態を引き起こしつつ、その日を迎えることができました!


「題して」


「「異種対抗 秋の大運動会~!」」


 国王の一言の後、私と国王が声を張り上げると、広~い王城の草原部分の敷地に、ファンファーレが鳴り響きました。


 



 …楽隊まで用意したんですね、王様…。



 


 


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