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君が好き? Round 1

リーリアVSウィルシス 婚約までのあくなき戦い…

 私は今隠れています。

 

 そろそろと城の角の壁から廊下を確認し、次へ進むという行為はホラーかアドベンチャーといった感じでしょうか。

 

 実は先日、竜王セルヴァレートと長老のオジーちゃんズからとある打診がございまして、その時から約一名の動きが恐ろしいのでございます。ちなみに、恐ろしいと感じるのは私だけですが。

 

 抜き足差し足忍び足、と短い足では人間の一歩ほどにしかなりませんが三歩進んでほっとする日々です。


「なにしてる?」


「ピギュッ」


 驚きすぎて飛びあがり、振り返ると、そこにいたのは赤竜隊隊長レイファスです。

 ここは王族の住まう場所に近いので出会うのは普通ですね。

 

 ほっと息を吐き、胸を抑える。


「実はアルバイトに向かうところなのです」


「あぁ、ギルドだったな」


「はい。なのですが、悪の組織に追われております。王族の多い所の方が合う確率が低いのです」


 組織というか、一名なのですがね。とっても恐ろしいのです。

 そこで考え出したのがすれ違わない道を選ぶという方法なわけです。


「・・・・・今日は無理じゃないか?」


 何がでしょう? 

 首を傾げ傾げレイファスを見上げれば、彼は私の背後を指さします。

 ぎくりとしてゆっくり、それこそゆ~~~っくり振り返れば、そこにはずずんと立ち塞がる銀の悪魔が!


「キュワワワワワッ」


 慌ててレイファスの脚の後ろに隠れ、そろそろと顔を出せば、先程よりも恐ろしいオーラを纏った銀の悪魔が腕を組んで立っている!

 

「リア、どうして隠れるのかな?」


「それは、秘密ですっ」


「ふぅん」


 銀の悪魔こと、ウィルシスが目を細めると、レイファスがため息を吐きつつ私を掴み、持ち上げました。

 この動きは私を引き渡そうとしてますねっ。そうはさせまいとがしっと腕に全身でからみつき、ウィルシスの方は見ないようにします。

 

「仕事ができないんだが」


「国民を守るのが騎士の務めですよっ」


 訴えます。

 お願いだからこの手を離さないでほしいのですっ(リーリアがしがみついているだけです)。

 キュウキュウ泣きながら訴えておりましたが、ばりっと引きはがされました。


「じゃあ」


 レイファスは去っていきます。

 私っ、私も行きますっっ

 ウィルシスに翼の付け根を掴まれておりますが、必死に犬掻きします。しかし、そのまま私は連れ浚われてしまうのです。


 この世界に大魔王に浚われるお姫様を救う王子様というのはいないのですか!


 ・・・・私、竜だから倒される方でしたね…ぐすん。


_____________

 

 浚われたお姫様は塔に閉じ込められました…。


 塔というか、いつものウィルシスのお部屋です。

 ぽ~いっとベッドの上に投げられ、そのままぼふんっと気持ちよいふわふわの布団の上に落ちました。このまま寝てもいいですかね?

 

「リア、現実逃避してるよね?」


「してませんよ?」


 目は明後日の方を向いてお布団にしがみ付きます。あえて地雷は踏まないのが正しい女性の在り方だと思うのです。

 

 よ~く、考えましょうね。

 この部屋にあるのは天蓋付きのキングサイズのベッド。まぁ、他にも小さなテーブルとイスだとか、趣味のいい小物だとかもありますが、それらは脇に置いて、ベッドのある部屋で、男と女(古竜ですが)。さぁ、ここから逃げ出す方法は次のうちどれでしょう。


 1 ひたすら誤魔化す

 2 ひたすら逃げる

 3 昼寝する


 3以外ですね。3以外で何とか逃げ切ってみましょう!


「逃がさないって言ったよね」


 くるりと仰向けにされ、ちっさな両手がウィルシスによりベッドに縫い止められます!

 メーデーメーデー!

 様相は昼ドラですよ!

 昼間のドラゴン!…じゃなくて、お昼のドラマ! こてこての恋愛劇です!


 パニックを起こしつつピッキョピッキョ言いながら暴れます。

 私、最近こんな飢えた野獣に追われている意味が分かりません!


「逃げてませんよっ。ウィルシスは何が言いたいのですかっ!」


「花婿候補って何?」


 その話題は嫌~!! きっと地雷~!


 ますます暴れますが、振りほどけません。

 ウィルシスの瞳は怒りで深い真紅に変わっています。


 ココココココ、コワ!


 ぶわっと風が私の身を包んだかと思うと、長い白い髪がふうわりと浮き上がったのが横目に見えます。

 人間の姿にされました!

 まっぱです!


「俺ではいやか?」


 低い声が切なげに耳元で響き、ドクリと心臓が鼓動を打ちます。

 恐怖とは違った何かが背をぞくぞくさせ、ウィルシスの目から目が離せませんっ。


「リーシェリア」


「ふあっ」


 真名を呼ぶとは卑怯ですっ! 

 真名を呼ばれると気持ちいいわよ~とかリアーナが言ってましたが、このことですねっ。全身真っ赤で思考がふわふわしますっ。

 危険度up!


「俺の(つがい)になって」


 顔が近づき、心臓は破裂しそうですっ。

 唇接触まであと一ミリ、というところで


 バンッ!


「総隊長!お邪魔しま…」


 ナイスお約束です!


 入室してきたのは資料を片手に持った金髪碧眼の黒竜隊副長ケイン君。

 ベッドで密着し、今にも唇が触れそうな男女を見た後、顔を真っ赤にして叫んだ。


「お邪魔しました!」


 私はその隙にウィルシスを蹴り上げ、シーツをぶんどって体に巻くと、ケイン君にダイブした。


「ケイン君助けてっ」


 涙目で訴えれば、顔を真っ赤にしながら狼狽えるケイン君。


「そ、そそそ、総隊長っ、また後できますっ!」


 ケイン君は私を抱えて部屋から逃亡してくれました! ナイス連れだしです! 


 本日逃亡成功ですよ!


 一人残されたウィルシスがぽつりと


「あいつは半殺しだな」


と呟いたとは、もちろん二人は知らない…。


______________


 リーリア対ウィルシス 本日リーリアの逃亡により、リーリア勝利



 翌朝、再び何者かに一晩中追われたケイン君が、黒竜隊隊長ヴァンの執務室の床に、ばったりと倒れ伏していたのが発見された・・・・

 

リーリア一勝です! 逃亡成功は1勝になります!


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