アジを焼く
気をとり直して、夕食に煮物とアジの開きを焼いた。
アジの焼ける匂いがたまらなく感じた。
グリルを開け、アジをひっくり返そうとするが、菜ばしがうまくつかめない。
「あれっ」
と思うと、
「ミャー」
という声になり、右手をみるとかわいらしい肉球が小憎らしいほどリアルについて
いた。
左手はまだ人間らしい手だったので、左手で菜ばしをつかみ、やっとのことでひっく
り返した時には、こげていた。
「みゃーみゃー」
と文句にならない文句を言いながら一人で食べた。
みゃーとしか言えないくせに、いつも通りにテレビを見ながら食べていた。
気がつくと、舌に骨が刺さっった。
鏡の前に恐る恐る立ち、口をあけると舌の真ん中に大きな骨が刺さっている。エ
イッと力いっぱい抜こうとすると、痛みが走って涙がでた。
仕方なく諦めて、とりあえず歯を磨くことにした。
肉球にも少し慣れてきた。
このまま寝てしまうと、明日の朝には完璧に猫になってしまうと思い、ながらも何も手につかず、ベッドの上でごろごろしながら考えた。
「あぁ、化けの皮を脱げばいいんだ」
という単純な解決策にやっとたどり着き、腕まくりをした。
少しふさふさとした猫毛が生えてきていたが、まだ人間らしい肌色も健在だ。
肌色の皮膚をつまむ。痛い。
猫毛を引っ張る。やはり、痛い。
悲しくなり、もうどうにでもなれと寝てしまった。




