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生と死の狭間で  作者: 美紗埜 穂美
始発の彼方
4/4

終末

Prologe


 ヴァンパイア達が飛び去ってゆく。

 紅いその彼らが去った後には、なんともいえない殺風景な風景があった。

 灰色で埋め尽くされた世界。

 遠く聳え立つ塔。

 どれをとっても、コレまでいった世界とは比べ物にならないくらい純色で、暗く、寒い世界だった。

 その世界は開放的な用であり、とてつもなく硬く閉ざされていた。

 透けて向こうが見える、硬く、強靭な門が広い大地の中にあった。

 その門の横から伸びた壁が、その塔の周り半径数100mを取り囲むようにしてあった。

 そして、その門の周りには無数の魔物が・・・・・・。

 

 僕は呆然とその光景を眺めていた。

 その時だ。

 灰色の雲に覆われていた空から一筋の光が差し込み、雲が裂け、その裂け目から巨大な尾がのぞいた。それは、巨大と言う言葉で表現してもいいのか、と思うほどに大きく、また威厳に満ちていた。すうっと、僕の瞳が紅く染まってゆく。あの尾を・・・、威厳に満ちた神々しいモノを、僕は見たことがある。ずっと昔、そして、つい最近。セズンと勇があらっそっているときに見た。

 そう、時空龍だ。

 巨大な尾に続き、後ろ足、前足、そして、貌というふうに時空龍の全貌が見えてくる。そして、彼の全てが出終えたとき、灰色に染まっていた世界が一変した。眩しいほどの光に包まれ、世界が渦を起こす。

「時空龍・・・・・・、今頃何のようだ?」

 優が敵意をあらわにしてその神龍に訊ねる。

『勇を消しに行くのか?』

「あぁ、そうだ」

『よかろう。今のお前では決して勝つことが出来ないけれどもな』

「ほぅ、それじゃぁ、勝つための手段でもくれるってのかいぃ?」

 優がセラセラと笑う。

『欲しいか』

「冗談のつもりだったのに、マジでくれる気かい?」

『初めからそのつもりだった』

「・・・・・・」

『キオクを返却する』

「ッ!?」

 驚きの目をした優を残したまま、時空龍は再び空の彼方へと消えていった。

 世界は、再び灰色に飲まれた・・・・・・。

 彼が飛び立った後には、一つの丸い玉が浮いていた。

 優はそれを手に取ると、嬉しそうに笑ってそれを自分の身体へと押し込んだ。

 破滅のキオクが入ったそれを、優は自ら受け入れたのだった・・・・・・。


____________________________________________________________________


ONE

3神


 由の号令と共に、白の軍隊がいっせいに行進を始める。

 最初の計画は、終末の世界に着くと同時にその世界を滅ぼすという事だったが、それは無理そうだ、と由が判断したのだ。世界の中心はあの門であり、あの門の内部で術を使わない限り、勇が死ぬことはないだろう、という事が分かったからだ。

 門から200mぐらい離れたところにつくと、その行進が止まり、皆一斉に駆け出した。

 忽然とする魔物の群れに向かって、幾重もの狩人たちが殺到する。

 一人みんなの列から離れて優だけが魔物など見向きもせずに門のほうへと向かっていく。

 僕は、次々と襲い来る魔物の群れを回転して切り裂き、走りながらも、その優の方を凝視していた。

 これだけの魔物がいるのに、どの魔物も絶対に優の方へは近寄らないのだ。

 彼女を中心として半径2mに、まるで見えない結界があるかのように魔物が避けて通るのだ。僕らの前では殺意むき出しの魔物も、優の前に来ると頭をたれて、一切の気配を消して通る。優に近づくと死ぬ。魔物たちはそれを本能的に感じているらしかった。

 僕は、羽を伸ばし、飛び、ヴァンパイア達のときと同じように空中から攻撃を仕掛け始める。

 空高く飛んでも。優の姿は目を引いたが、別の意味で目を引いたのは優とそっくりな一人の少女だった。

「すごいすごーい!ハハハッ」

 遠く安全なところで手をたたき笑いながら、幼稚園児が動物園に遠足に行ったときのように喜んでいるその少女、友美は、少なからず僕の心を苛立たせた。

 僕は空中から大声で怒鳴る。

「友美ッ!!おまえ戦えよな!」              

「ん?聞こえなーい。キャハハハ!」

 ちょうどその時、友美の背後から狼に似た魔物が彼女に向かって飛び掛った。

 ヤベッ

 そう思い、波動を出そうとした、その時だった。

 飛び掛ったそのままのその位置で、その魔物が動きを止めた。

 空中にだらしなく浮かんだ状態でいるその魔物の胸板を貫いているのは一本の鋭利な水晶。

 地面から急に伸びたその水晶が、友美の死角から襲ったはずの魔物を、正確に捉えていた。

「勲ー、安心してねー。もう波動なんて使わなくていいからぁ~」

 軽快な口調で友美がそう言った直後、そのままのふざけた友美の周りの空気が重くなる。

「みんな死んじゃえーっ!必殺、クリスタルパラダイスぅー」

 僕が波動のことについて反論しようとしたその時、友美の口から軽ーく呪文が放たれた。

 そして、その軽さ、呪文の名前とは裏腹の、すさまじい殺戮が起きた。

 ズガ、ズズズガガガガガガズガズガズガズガッ!!

 壁の周りを囲むようにして無数の水晶が高々と伸び、魔物はおろか、急な出来事に驚き対応し切れなかった、戦いで鎧が脱げてしまっている味方の狩人までもを貫いたのだ。

 まだ鎧が無事だった味方は、水晶の上へと上げられ、突然の出来事に驚いている。

 門に向かっていた優の周りにも水晶が生えていた痕跡はあるのだが、綺麗に根元から粉々にされている。きらきらと宙を舞う水晶の欠片が、優のその美しさをより引き立てている。

「どこがパラダイスじゃっ?!!」

 思わず、友美にそう突っ込みを入れてしまった。

「えへへー、やりすぎちゃった」

 友美はかまわずそう返す。



 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

 突如、大きな地響きが生じて、大地が揺れ、僕はまた羽ばたいた。

 その地響きの原因と考えられることはただ一つ、優が、門に手をかけたことだ・・・・・・

 門の手前に大きな穴が三つほど開く。

 あわてて優が飛びのき、その直後、その大穴から黒く、大きな何かの頭がでてきた。

 その頭は、バイキングのような角の生えた兜で覆われていて、目元もまともに見えなかった。

 それから、同じく黒く、鎧で覆われた胴体、巨大な斧、そして、黒く鎧で覆われた足。それぞれが出てきて、三体の同じような巨大なシルエットが現れた。

『我は邪神』

『我は剋神』

『我は死神』

『『『我らは、この地の守人。守り神。去れ、愚か者ども、滅ぼされたくないのなら、今すぐ立ち去れ・・・・・・』』』

 これは・・・・・・、

「何が神だ、木偶人形の癖してよ。滅びるのは、お前らだろーがよ」

 純痲がいう。

『死にたいか・・・・・・、ガキ』

 剋神と名乗ったそのシルエットが言った。

「殺せるもんならさ、殺してみなよ」

 純痲がそう宣戦布告した瞬間,漆黒の斧が彼に向かって振り下ろされた。

 間一髪。

 純痲はギリギリのスレスレでその斧をかわした。

 その地面に深く突き刺さった斧は,その斧の先は,不運というか,何というか、残念なことに優の目の前にあった。

 

 空気が,ダークに染まった。


「ナニ,コレ?」

 優が目の前の斧をつかむ。

 途端に,それは霧散しそのまま剋神の体もろとも蒸発してしまった。

「あぁ,優が切れちゃった☆」

「懐かしいな・・・・・・」

 え?切れた?沸点低くね?

「うぅん,キオクがまじで戻ってきたって感じだな」


 剋神が消されたと見るや邪神が一歩前に出て破壊光線的なものを打ち出してきた。


「優には逆効果だって」


 地面に巨大ミミズが這ったような後を残して過ぎ去った破壊光線の後には,何事もなかったかのように優がいた。

 ぽっかりとあいた地面の上に,無傷で,煙ひとつあげず浮いている。

 優が手を前に出した。

 そこに闇が集結し,渦を巻き,一筋の閃光となって弾き出された。

 瞬間、邪神の脳天を一瞬黒い光線が貫いたかと思うと、邪神は剋神と同じように霧散した。

 それに貫かれた邪神は,剋神と同じように霧散した。

 友美があはあはは、と、いとも楽しげに笑っている。


『貴様・・・、グレイマスターか』

 残った死神が問うた。

 

 ジャッ


 無言で闇の光線炸裂。

 ルール違反だろおぃ、いぁルールもくそったれもねぇんだけどよ・・・。

 

 だが、光線が当たる間際、誰もが終わったな、と確信した瞬間、死神はかっ消えた。

 光線は、空しく宙を過ぎてゆく。

『遅い』

 いつの間にか優の後ろに回っていた死神が、優に向かって手にした斧を振り下ろす。

 衝撃。轟音・・・、はしなかった。

 斧を失った死神が立ちすくんでいた。

 優は、相変わらず浮いたまま、片手で斧を持ち上げていた。

 自分の体の何倍もあるそれを、こともなざげに刃の部分を持って。

 次の瞬間、斧は霧散していた。

「ジャマ」

 地面から不意に黒い柱が、いや、太い光線がほとばしり、死神を跡形もなく消していった。

 

 敵が何一つとしていなくなったそこで、僕は何をするわけでもなく呆然としていた。

 圧倒的すぎる、グレイマスターの力。

 記憶とともに帰ってきたその力。

 優。


「さぁって、この扉どうやって開けようか」


 由が場違いに明るい声を出す。しかもにこりと笑いやがりながら。


「開ける必要はないよ。俺がこっちからで向いてきてやった」


 さらに場違いな闖入者。勇だ。

 しかしどうも、何というか。

 感覚で何となく勇ということはわかるのだが、理解はできても納得がいかない。

 その姿、声は何をどうとっても勇じゃないからだ。

 ロングのツインテの黒髪、整った女の顔立ち、高めの声。

 何をどう見ても、塔を囲むその城壁の上にたっていたのは勇ではなかった。

「驚いてるかい?無理もないね☆勲の体じゃぁさ、やっぱいくら龍の血が流れてたって、優には勝てそうにないんだよね。だからさ、もっといい血統のこの体をさ、ちょっとかりちゃった」

 ちょっとかりちゃった?ふざけんな。僕だけでなく、無関係なこまで巻き込みやがって。

 てめぇのせぇでいったいドンだけ迷惑したか分かってんだろうな勇。

 終わりにする。この手で終わらせてやる。おまえだけは。

「ウルサイ」

 はたまたばちがいな声。

 こんどは優だ。

 おまけに光線付きで。

 しかし、亜音速のそれを少女の姿の勇は、軽く体をひねってかわす。

「どうやら・・・、話が通じないようだ」

 そういうが早いか城壁から飛び降り、俊足で優に迫る。

 優は迎撃。無数の闇の光線を雨あられと勇に浴びせかける。

 次々に迫り来るそれを勇は進みながら、まるでステップを踏むように、軽々と交わす。

 そして・・・、

 ジャキっ

 湿った音とともに優の右腕が飛んだ。

 ボタっと、それは優の左隣に落ちた。

 優の腕を落とし優の背後にいた勇は、跳躍しまた優の眼前に戻る。


 ギギィ・・・


 城壁があいた。無数の魔物がひしめく気配が伝わってくる。

 そして・・・、数え切れないほどの魔物が塔内からあふれでてきた。

 それらは、けして走らずゆっくりと僕らの方に近づいてくる。

 

 コリッ


 いやなおとがした。

 

 魔物に気をとられてみていなかったが、優は拾い上げた自分の右腕を、


 コリコリコリッカリ

 

 食べていた。

 ジャーキーでもかじるように、無感動で、かじりついていた。

 そのおぞましい食事に、僕の産毛が逆立つ。

 なんなんだあれは。なんなんだあれは。

 

 コリコリコリ、グチ、コリコリ


 優は右手をくわえたまま、右肩から血をぼたぼたと流しながら、勇の方へ近づいていった。

 断面の方から食べ始めた腕は、もう関節がないほどまでに食べられている。

 灰色の地面に、紅いラインができる。

「ゆ・・・、優、おまえは・・・」

 さすがの勇も困惑している。

 そりゃそうだ。 


 カリカリコリコリ


 後は中指だけとなった。自分の腕だったものを、優はまだ食べ続けている。

 

 カリカリカリリ・・・コリ


 刹那、それは起きた。

 優が自らの腕を食い終えるとともに、優の右肩から流れた血から無数の、腕腕腕腕腕腕腕腕腕腕腕腕腕腕腕腕腕腕腕腕腕腕腕腕腕腕腕腕腕腕腕腕腕腕腕腕腕腕腕腕腕腕腕腕腕腕腕腕腕腕腕腕腕腕腕腕腕腕腕腕腕腕腕腕腕腕腕腕腕腕。

 それはもう言葉にもできないような光景だった。

 血から生え出た腕の手のひらはぱっくりと裂け、そこからサメのような幾重にもなった歯がのぞいている。

 それらは勇の方へ向かい、勇を無視して通り過ぎ、その後ろにいた魔物らに食らいついた。

 まるで魔物が至上もグルメだとでも言わんばかりに、魔物らにむさぼりついている。

 腕の通った後には血の線ができていて、そこからまた腕が生え出てくる。

 次から次へと。とどまりなく。

 飛び散る肉片。聞こえる咆吼。魔物の悲鳴。

 逃げようとした魔物も、腕に足をつかまれ、ついでに足を食われ、倒れたところにさらに腕がその体を食いちぎる。

 優の右肩から流れ出る血は止まらず、血が地面につく前に腕が生えてくる。

 そして・・・、魔物の全軍を食い尽くした腕の新たなるえさは・・・、決まってる。

 勇だ。そして・・・、僕たちだ。

 ヴァンパイア軍からも上がる悲鳴。由の軍からも聞こえる絶叫。

 方向を180°転換した腕は、こちらに向かって、突進してきた・・・・・・。

 勇の背中から翼が生えた。そのまま滑空する。「ZERO」のものかもしれない。

 僕もみんなには悪いと思うけど、翼を広げ、上空に避難する。

 死にたくはない。

 それに・・・、せっかくの勇を殺れる一大チャンスだ。 

 見ると、優は自分の足下を過ぎていく腕を一本、無造作につかみ、無理矢理自分の右肩に押しつけた。

 初めのうち腕はあらぬ方向にベキベキと暴れていたが、やがて落ち着いて、完全に優の体の一部となった。

 優の背中から闇がほとばしる。

 それは翼の形をとり・・・

 まさか。

 まさかだった。

 闇でできた翼で優は飛んできた。

 そして僕もいるってのにあの闇の光線を乱射する。

 その光線について優は光速で勇に近寄り、いつの間にか剣をもっていた左手で勇のはらに斬りつける。

 きわどいところで勇は交わす。

 しかし、もう一方から迫った右腕はかわせず、

 

 シュッ


 優の右手は勇の脇腹に軽く触れただけのように見えた。

 だが、勇の腹からはとんでもない出血。

 みると、優の右手は今し方引きちぎった勇の肉を・・・、食っていた。

 まだあったあの歯が、グチャグチャと勇の肉を食っていた。


 ゴクリ


「うぅ・・・、俺は、俺は死を司る神!終末の世界の王だぁあぁああ」

 勇が絶叫する。

 そして、勇が優の方に手を向け、その手のひらをぎゅっと握りしめる。

 プチン、と糸が切れたみたいに優の動きが制止した。

「ア・・・、アァアァアアア・・・・・・・・・」

 ぴくりとも体を動かさない状態で、優が苦痛の声を上げる。

「・・・、なぜ死なないっ?!」

 勇の驚愕と焦りが混ざった声。

 そこに・・・、

「勇ゥウウウウウゥウゥゥゥゥゥゥウウウウウウゥウウウゥウゥウウウゥゥゥウウウウウウ」

 信じられない跳躍力で、跳んだ純麻が、下から勇に斬りかかる。

 勇はそれを軽く一瞥。

 そのまま手のひらを純麻のほうに向け、握る。

 とたん、分かった。

 何が起こったのかということを。

 カクンと首をもたげ、慣性の法則でさらに上に上がっていった純麻は、その手には剣がない。

 握っていたのを急に落としたのだ。

 勇がすっと場所を移動する。勇のすぐ横を通った純麻は、落体の法則に従って腕のまっただ中に真っ逆さまに落ちていった。

「これが・・・、終末の覇王・・・」

 僕は思わずつぶやいていた。

 死を司る神。

 生き物の生死を好きなように操れる。

 純麻は、殺された・・・。

「ああああ・・・、勇ーーーーーーーーーーーーーー」

 《JUSTICE》をがむしゃらに振り回し、いくつもの波動を生む。

 手にした『ZERO』で、勇はそれを粉砕し、僕に斬りかかってくる。

『さぁ、私にすべてを預けなさい』

 『ONE』が話しかけてくる。

『アレに勝つためにはそれしかないわよ』

 「・・・わかった」っと心の中で返事をする。

 突如、何かが変わるのが分かった。

 自分が、自分を見ていた。

 上下左右、360°。

 いろいろな方向から、同時に自分を見ていた。

 自分ととたかっている勇の姿も見える。

 あぁこれって神の視点なのかもな。場違いながらそう思う。

 自分の目が徐々に金色に染まっていくのが見える。

 『ONE』の目の色と、おなじ黄金に。

 勇の暫激を、勝手に動く僕の手にもった《JUSTICE》が受ける。

 そのまま波動で勇のどうを凪ぐ。

 とんぼ返りで勇はそれを交わし、再び『ZERO』で斬りかかってくる。

 そこまで見ていてようやく、何か違和感を覚えた。

 勇がいまいち本気を出していないようだし、殺そうというよりはどちらかといえば腱などを狙って動きを封じようとしているように見える。

 さらに常に勇の方が下側についていて、下の手の大群の中に僕が間違って落ちないようにしているように見える。

 さらに、僕に波動が後ろで硬直したままの優に行くような微妙な角度で。

 つまり勇には優にとどめを刺すほどの余裕はなく、僕には死んでほしくない。

 それに、あの圧倒的な死の神の力を使わないのはどういうことだ?

 

 気がついた。


 「『ONE』お願い。体を戻して」心でつぶやく。

『あら、どうして?』

 「わかったから」

『何がかしら』

 「なにもかもが」

『クスクスクス、おもしろい人間の男の子いいわよ、もどしてあげる』

 瞬間、神の視点は戻り、自分の、僕の視点になった。

 よし。

 覚悟は決めた。

「勇!!!」

 自分の喉に《JUSTICE》を突きつけ、僕は叫ぶ。

『ちょ、正気?!』

 『ONE』が慌てたように叫ぶ。

「いまここで終わらせる!僕は・・・、僕は自分の日常を取り戻すんだぁっ」

「勲、やめろぉおおぉおぉぉぉっっっ!!!」

 勇が慌てたように僕の元に飛んでくる。

 だが、間に合わない。

 「ねぇ『ONE』、優、勇を倒したら、いつもの日々が戻ってくるよね。楽しかったあの頃が・・・」心のつぶやきは誰もとどかない。

 「さよなら」

 

 ザッ


 喉に焼け付く痛みを感じる。

 《JUSTICE》を握っていた手が離れる。

 喉から、血を流したまま、僕は落ちていく。

 自分の、日々の日常へと向かって。

 普通という名の、楽園エデンに向かって・・・・・・。


後一話です。

お楽しみにw

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