#8
たまたまなのか、大学生になったからなのか、女友達はサポーターに対する意識が軒並み低かった。
サポーターを二、三日放置してるなんてザラ。
四六時中端末を見ている優來は明らかに浮いている。日常の会話に陽葵のことを口にしてしまうほどには……。友人達は最初こそ仲良いんだね、と感心していたが、次第に優來を冷めた目で見るようになった。それに気付いてようやく、陽葵の名前を口にしないよう努めた。
小さなルールさえ守れば“普通”に戻ることは容易く、すぐにいつもの日常に帰った。しかし優來は、たまたま自身のサポーターについて楽しそうに語っている少女を見つけてしまった。
大学の食堂で、意外なことに周りも興味津々で耳を傾けている。ちょっと羨ましいと思った。
立ち聞きをするつもりはなかったものの、少女とばっちり目が合ってしまった。軽く頭を下げてきたので、優來もわずかに会釈する。微笑まれたが、さすがに笑い返す気はしなかった。初めて会ったのに変人だと思われる。
その場は通り過ぎて、一日をいつも通りに過ごした。サークルもないので帰ろうとすると、不意に声を掛けられた。
「あ。待って、さっき食堂にいたでしょ?」
高い声に、短いスカート。身長は決して高いわけではないが、脚の長さがよく分かる格好だった。
まさか声を掛けられるとは思わなかったので、警戒しながら頷く。
「さっき私のこと見てたよね? なにか用でもあった?」
慌ててかぶりを振る。用はない。強いて言うなら、
「サポーターの話……してたでしょう」
「うん。それがどうかした?」
「すごいなと思って。私がサポーターの話をすると、皆引いちゃうから」
肩を竦めて苦笑いすると、彼女は腕に持っていたリュックを背負い直した。
「あれ。……ていうか、あなた……芰形優來さん、じゃない?」
「えっ!」
突如名前を呼ばれ、頭が真っ白になってしまう。どうして自分の名を知っているのだろう。
困惑している優來に気づき、彼女は困ったように自身の顔を指さした。
「覚えてないかな? 小学六年の時に同じクラスだった、平賀眞由。中学で離れちゃったけど、何回か一緒に家に帰ったことあるよ~」
彼女には申し訳ないが、フルネームを聞いてもピンとこなかった。しかし、そういえば、六年生の時に自分のサポーターの話をよくする子がいた。そんな子は優來を除いて少なかった為、クラスの中では悪目立ちしていた気がする。それにその子は確かクラスの男子達から苛められていたような……。




