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孤独の再利用  作者: 七賀ごふん
芰形優來

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2/22

#2



元号が変わって間もなく、社会に馴染めない若者の孤独死が社会問題となった。

人との関わりを極端に恐れ、まともに会話することができない。誰とも関わらないから、生きてる意味が分からない。そんな曖昧模糊な理由から、薬で命を絶つ若者が現れた。


若い世代の危機的状況を打破する為、政府はある法律をつくった。法律制定直後は酷い反乱が起こったそうだが、問題の渦中にいる若者達の反応が存外良かった為、デモはすぐ鎮火されたらしい。その法律は現在も人々を支えている。

若者だけでなく一番上は五十代まで、この法律の恩恵を受けていると言っていい。この先は六十、七十代まで、「唯一無二の理解者」を手にすることになるだろう。


“あなたはひとりじゃない”。


国民ひとりにつき一台支給される携帯端末を起動すると、一番に表示される言葉だ。すべて平仮名なのは、十歳から与えられるからだろう。とはいえ十歳なら「一人」や「独り」ぐらい読めると思うが、そんな些細なことを誰かと討論したことはない。

自殺を防ぐ為なら、ほとんどが取るに足らないことだ。


今や全ての子ども達に、心の支えとなるシステムが普及されている。


孤独に苦しむ人の為に制定された法律に則り、今日も私は「唯一無二の理解者」とやり取りする。


孤独者支援法なんて一昔前なら笑い飛ばされていただろう。けど今では国の存続に関わる事態だ。国民は半ば強制的に、この世でただひとりの「サポーター」を与えられる。

サポーターは国民自ら選ぶことはできず、全て政府が決定する。年齢、性別、出身、能力。ありとあらゆるものを考慮して構成されるらしいが、詳しいことは明かされていない。

ひとつ確かなのは、「サポーター」はこの世にいる誰かだということ。しかし会うことは禁じられている。自らの素性を明かすような発言、行動も同様だ。このルールを破った者は二度と支援を受けることができず、家族や近しい者達のサポーターも解除される。


この制度の最大の目的は精神的サポート。孤独を感じないよう、辛い時にすぐ吐き出して、それを聞いてくれる者がいるという安心感を与えるものだ。お金で雇った者ではなく、子どもの時から関わりがある者の為、信頼関係はそれなりに強くなる。

SNSは必ずしも反応が返ってくるわけではないし、不特定多数の攻撃的な意見も飛び交う為、最終的には悪影響だ。その点このサポーターは、相手を否定、批判することはルール違反としている。


面識はなくとも、同じ時間を共有した者同士の結束ができる。おかげで優來は陽葵と出逢ってから毎日やり取りをし、些細な喜びや悲しみを共有できる仲になった。現実の問題が解決せずとも、自分は独りではないと認識できることで様々な困難に立ち向かうことができた。


この制度のメリットは他にもあり、サポーターと二人で「特別記念日」を決めると、子どもなら学校、大人なら会社を休日にできる。さらにはお互い無償でプレゼントを送ることができる。限度額や品物は限られているものの、それは国からのプレゼントということになるので、ちょっとした楽しみでもあった。優來は陽葵と出逢った「九月六日」を記念日にしている。去年は政府のサイトから新作のゲーム機を選んで陽葵に送った。陽葵からは最新のワイヤレスイヤホンが送られてきた。


毎日やり取りをして、毎年プレゼントを送り合う。これは全ての国民の楽しみとなった。連絡の頻度も関わり方も、大抵はサポーターと暗黙の了解ができあがっている為、不満に感じる者は少ないようだ。


だから皆、ただひとつのルールを守る。

「互いの素性を明かさない」こと。それさえ守れば、死ぬまで良き友、良き理解者を手に入れられる。不満もデメリットもない、素晴らしい制度だ。




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