#18
優來はコンビニの駐車場に車を停めた。煙草とライターだけ購入し、一服した。
少し冷えるので上着を羽織り直す。煙草に火をつけ、久しぶりに肺の奥まで吸い込んだ。
最後に吸ったのいつだっけ……。
四方には山の黒い稜線しか確認できない。赫々と灯る先端を眺めていると眠くなる。なるべく明るい場所を見ることで心を落ち着けていた。
小学校のとき、友人がいた。
その女の子は自分と同じくサポーターを親友か家族のように思っている子で、ツールを肌身離さず持ち歩いていた。あまりにも大切そうに持っていたから、クラスの男子がそれをからかって端末を学校の池に投げ捨てた。
当然先生達に知れ渡り、男子は学校に保護者を呼ばれ、半泣きで女の子に謝っていた。私はそわそわした。てっきり女の子は悲しみ、ひどく傷ついているだろうと……。
でも予想に反して、彼女はとても落ち着いていた。帰り際、こそっと後をつけて声を掛けた。
「端末壊れちゃったんでしょ? 大丈夫?」
「大丈夫。また、新しいのもらえるから」
故障や喪失の場合は、申請すれば代わりをもらえるのだと、彼女から教わった。そして彼女は、届出をするのが初めてではないようだった。
「でもこれで二回目になっちゃう。前もね、走ってる時転んで、地面に落としたら壊れちゃったの」
「え、大変だったね」
「うん。でもいいの。何回壊れても、またやり直せるもん」
彼女の台詞の意味は、その時は分からなかった。
正直訊くのが怖かった。極力「サポーター」の話を人としない、というのが暗黙の了解で、それは親にもきつく言われていたから。
そうだ、あの子だ。……大学で再会した、平賀眞由。
スマホを取り出し、眞由に電話を掛けた。時間も遅いので早々に諦めようと思ったが、三コールちょうどで彼女は電話に出た。
『もしもし』
「もしもし、眞由? ごめんね、こんな夜中に」
煙草を吹かし、冷たい外気を吸い込むと咳が出た。電話の先から心配そうな声が聞こえる。
『大丈夫だけど……久しぶり。どうしたの? 外にいるの?』
「よく分かったね。そうそう」
辺りを見回す。駐車場には優來の車しか停まっていない。目の前の国道を通るのもトラックばかり。それだけ鄙な場所にいた。しかしこれから、さらに山深い道に入ろうと思っている。そしたらきっと電波は届かない。




