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孤独の再利用  作者: 七賀ごふん
芰形優來

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16/22

#16



『お願い優來。旦那さんから逃げて』


メッセージが表示される。


『連絡を取れない間もずっと聞こえてたよ。優來が泣いてる声も……旦那さんが優來を殴る音も』


────彼女の想いが綴られていく。


もう耐えられない。貴方が傷ついていると分かってるのに、何も声を掛けられないのは。


私は優來のことが大好きだから、本当のことを伝えたい。

でもそれを知ったら、法を犯したことになって、私は消されてしまうの。優來の旦那さんが端末を捨ててしまったけど、捨てても破壊しても問題はないんだよ。国が管理してるデータベースと、優來の首に埋め込まれているチップさえあれば、“私”は何度でも復活できる。


でもルールを破って情報開示をしたら、今度こそ完全に消去される。……この文章も、意思も、全部。


「待って……待ってよ。それより……」


何故自分が結婚していることを知っているのか。心を読んでるかのようにメッセージを送ってくるのか。疑問だらけで混乱したが、それと裏腹に視界はクリアになっていった。

新たな文章が表示される。


優來、全てを知りたい?

怖くは、ない?


知ったらもう戻れない。これからあなたを苦しめる存在が、あなたの前に訪れてしまう。


「……怖くない」


コートを羽織り、夫に気づかれないよう静かに家を出た。駐車場に停めてある車に乗り込み、エンジンをかける。スマホは家に置いてきた。持ってきたのは車のキーとサポーターの連絡端末だけ。ダッシュボードの上に設置し、シートベルトを締める。

「陽葵……」

初めて、一緒にドライブをしよう。

深夜、人も車もない道へ走り出した。寒いが、おかげで目が覚める。暖房は低めに設定して、自動運転に切り替えた。行先を指定し、シートにもたれかかる。

全く便利な世の中だ。わずか数十年で、人知は想像し難い次元を超える。




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