助けたら増える仲間は仕様です
アルトゥリアを出て、三日目。
街道沿いの森を抜ける途中で、
私たちは完全にアウトな光景に出くわした。
――黒い外套。
――血の匂い。
――剣戟の音。
はい来た。
「……またか」
エドウィンの声が低くなる。
嫌な予感、的中率百二十パーセント。
「影の傭兵団?」
私が聞くと、
元副官(もう語り部って呼ぶのやめた)が、静かに頷いた。
「小規模部隊ですね。
おそらく、偵察か……掃除」
掃除って何!?
人をゴミみたいに言うな!?
森の奥。
開けた場所で、三人が追い詰められていた。
兄弟やった。
一番上が二十代半ばくらい。
真ん中が十代後半。
一番下は、まだユリウスと同じくらい。
全員、剣は持ってる。
けど、動きが荒い。
――訓練不足。
でも、必死。
「……逃げろ!」
長男らしき男が叫ぶ。
「次男、三男、森に入れ!!」
うわ、完全に死亡フラグ台詞!!!
「エドウィン」
私が名前を呼ぶ前に、
もう、動いてた。
……ほんま、早い。
一歩。
二歩。
三歩目で、世界が変わる。
剣を抜く音すら聞こえへん。
次の瞬間――
影の傭兵団の一人が、地面に転がってた。
「は?」
敵も、味方も、同じ反応。
「な……っ!?」
「何だ今の――」
遅い。
エドウィンは、もう次の間合いに入ってる。
剣閃。
最小限。
無駄ゼロ。
倒す、じゃない。
無力化。
「……五秒」
元副官が、ぽつり。
ほんまに五秒後。
全員、地面。
……はい優勝。
三兄弟は、完全にフリーズしてた。
「……あれ?」
「終わった……?」
「生きてる?」
分かる。
その反応、めっちゃ分かる。
私も初見で見た時、
「この人ほんまに人間?」って思ったもん。
⸻
助けた三兄弟は、
この近くの村の出身やった。
数日前、影の傭兵団に襲われ、
村は焼かれ、家族とはぐれた。
……聞き覚え、ありすぎる。
「……俺たち、もう帰る場所ないんです」
長男が、歯を食いしばって言う。
「だから、せめて……
同じ目に遭う人を減らしたくて」
正義感。
無謀。
でも、嫌いじゃない。
というか。
「また被害者増えてるやん!!!」
影の傭兵団、ほんま洒落にならん。
エドウィンは、しばらく三人を見てから、言った。
「名前は?」
「……カイル」
「……ロアン」
「……ミカ」
順番通りやな。
覚えやすい。
「お前たち、これからどうする」
沈黙。
答え、分かってるくせに聞くの、ずるい。
「……行く場所がないなら」
エドウィンが、続ける。
「俺たちと来い」
私、横で目ぇ見開いた。
え?
ちょ、相談は!?
「影の傭兵団と、戦うことになる」
三兄弟の目が、揺れる。
「命の保証はない」
それでも。
カイルが、一歩前に出た。
「……それでも、いい」
ロアンも、ミカも、頷く。
うわー。
決断早っ。
「ちょっと待って!!」
ここで私が口挟む。
「うち、今、
焼け出された一家+子ども一人+元副官一人で
既にキャパオーバーやねんけど!?」
家計的にも!
精神的にも!!
「これ以上人増えるの、どう考えても――」
「レミ」
はい来た名前呼び。
「助けた命だ」
……くそ。
正論、ぶつけてくるのやめろ。
私は、ため息ついて、三兄弟を見る。
「……覚悟あるん?」
「あります」
即答。
「途中で逃げへん?」
「逃げません」
「死にかけても?」
「……それでも」
……ほんま、昔のエドウィン見てるみたいや。
「はぁ……」
負けた。
「分かった。
ただし」
私は指を一本立てる。
「死ぬ気で生きろ」
三兄弟は、深く頭を下げた。
⸻
こうして。
私たちの旅は、
一家三人+元副官+三兄弟
という、謎の大所帯になった。
……なにこのパーティ編成。
RPGでももうちょい考えるやろ!!!
でも。
この出会いが、後に――
“燕の傭兵団”の核になるなんて。
この時の私は、
まだ知る由もなかった。




