再会とか最悪のタイミングで来るもんやって話
村を出て、どれくらい歩いたやろ。
森を抜け、街道を避け、
「人がいそうでいない場所」を選んで進む旅は、
想像以上に体力をごっそり持っていかれた。
ユリウスは頑張ってた。
ほんまによう頑張ってた。
文句も言わんし、泣き言も言わん。
その代わり、ぎゅっと私の服の裾を掴んで離さへん。
……そらそうや。
昨日まで「家」やったもんが、全部燃えたんやから。
エドウィンは、寡黙やった。
怪我はしてる。
してるけど、本人は「問題ない」の一点張り。
いや問題しかないわ!!!
肩の血、止まってないし!!
歩き方おかしいし!!!
でも、この人がこういう時に無理するの、知ってる。
止めても無駄なやつ。
だから私は言わへん。
言わへん代わりに、横に立つ。
家族って、そういうもんやろ。
⸻
数日後。
辿り着いたのは――
アルトゥリア。
……は?
いや待って。
あの?
金印ぶっ壊れて、騒ぎになった、あの街???
「人が多い場所の方が、紛れやすい」
エドウィンの判断は正しい。
正しいけど!!!
フラグ立ちすぎちゃう!?
この街、呪われてへん!?
城壁をくぐった瞬間、
懐かしい匂いが鼻を突いた。
香辛料。
焼き菓子。
人の声。
平和や。
……腹立つくらい、平和や。
「ママ……ここ、前に来たとこ?」
「せやで。
ほら、変な光ってる金印が――」
言いかけて、止まる。
……あ。
もう、ないんやったな。
⸻
市場の端。
人通りの少ない広場。
そこで――
見覚えのある背中を、見た。
色褪せたマント。
竪琴。
肩から下げた、古びた革の書物。
「…………」
嘘やろ。
いや待って。
こんな都合よく再登場する??
物語の都合か???
男は、こちらに気づいた瞬間、
静かに目を細めて笑った。
「おや」
やめろその顔。
全部分かってる顔すな。
「無事だったようで、何より」
……は?
「なあアンタ。
もしかしてやけど」
私が一歩前に出るより早く、
エドウィンが、男の前に立った。
剣は抜かない。
でも、完全に戦闘態勢。
空気が、変わる。
男は、ため息をついた。
「……やはり、隠しきれませんか」
そして。
竪琴を下ろし、
マントを外し、
まっすぐエドウィンを見て――
静かに、頭を下げた。
「久しぶりです」
その声は、
語り部のそれじゃなかった。
「元・王国騎士団所属。
あなたの部下でした」
――元・副官。
空気、凍結。
……は?????
ちょ待て待て待て。
「え、上司???
元上司???
語り部って何???」
脳内ツッコミが追いつかん。
エドウィンは、しばらく沈黙したあと、
低く言った。
「……生きていたのか」
「ええ。
あなたが“いなくなった”あとも」
その言葉に、
エドウィンの指が、わずかに震えた。
語り部――いや、元副官は、続ける。
「影の傭兵団は、今も動いています」
来た。
来たでこれ。
「そして――
団長は、あなたを探しています」
ユリウスが、私の服を掴む。
「ママ……」
大丈夫。
大丈夫やけど。
これは。
もう、逃げるだけの旅やない。
私は、深く息を吸って、
心の中で叫んだ。
……あーもう!!!
平穏とか、再建とか、
そんなもん夢やったわ!!!
こうして。
私たちは、
過去と正面から向き合う旅に、
巻き込まれていくことになった。




