エンディング
目を開けたら、風の音がした。
さっきまでの草原とも、
燃えた村とも、
血と剣の戦場とも違う。
ただ――
「始まり」の匂いだけがした。
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「……なあ」
私が声を出す。
「これ、ほんまに次の世界?」
「おそらく」
隣でエドウィンが答える。
相変わらず落ち着きすぎや。
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足元は、白い光。
空はまだ色が決まってない。
キャンバスみたいな世界。
「ママ、なんもないね!」
ユリウスがはしゃぐ。
「せやな」
私は笑う。
「せやけど――」
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「ここから、また作るんや」
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遠くで、何かが芽吹く音がした。
世界が、息を吸う。
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「記憶はどうなる?」
エドウィンが光の存在に問う。
「完全には消えません」
「……そうか」
彼は、ほんの少しだけ、安心した顔をした。
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「じゃあさ」
私が言う。
「また剣振って、魔法覚えて、
ご飯作って、喧嘩して、笑って――」
ユリウスを見る。
「また“家族”やな?」
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「うん!!」
即答。
元気すぎ。
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光の存在が告げる。
「これより、魂の定着を開始します」
「定着て」
ほんま単語だけ聞くと事務的やな。
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体が、少しずつ重くなる。
でも、不安はない。
だって――
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エドウィンの手が、そこにある。
ユリウスの体温が、そこにある。
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「なあ」
私、小声で言う。
「最後に一つだけ言わせて」
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「異世界転移して、
即結婚して、
即出産して、
村焼かれて、
戦って、
死んで、
魂で旅立つ人生――」
一拍。
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「情報量、多すぎやろ!!!!」
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ユリウス、爆笑。
「ママ、うるさい!」
エドウィン、肩を揺らす。
……あ、今、笑ったな?
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光が、世界を包む。
「では――」
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「行ってらっしゃい」
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落ちていく感覚。
でも、怖くない。
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次は、どんな世界か。
どんな名前で生まれるか。
また剣と魔法の世界か。
それとも、平和すぎて退屈な場所か。
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でも、一つだけ確かなことがある。
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どの世界でも、
私たちは、きっと――
全力で生きる。
⸻
――END
(※この物語は、どこかの世界で、たぶんまだ続いている)




