エンドロール前の寄り道
……旅立ち言うてもな。
いきなり転生ガチャ回されるとか、
白いトンネル一直線とか、
そういうんちゃうかった。
まず通されたのが――
草原。
めっちゃ広い。
めっちゃ静か。
風が気持ちいい。
……え、ここ天国?
「思ってたより地味やな」
私が言うと、
「派手さは生者の娯楽だ」
横から声。
さっきの光の存在や。
まだおったんかい。
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「ここは“魂の待合”」
「待合!?」
「正式な旅立ちの前に、整理を行う場所です」
整理て。
引っ越しか。
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エドウィンとユリウスも、きょろきょろしてる。
「ママ、ここ寒くないね」
「せやな。暑くもない」
「……妙だな」
エドウィン、警戒心仕事しすぎ。
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草原の奥に、ぽつぽつと人影。
近づくと分かる。
……知ってる顔。
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村のおばちゃん。
焼けた家の隣の、パン屋のおっちゃん。
途中の街で助けた旅人。
影の傭兵団との戦いで倒れた、名も知らん人たち。
みんな、穏やかな顔してる。
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「……あ」
ユリウスが声を上げる。
「村長さん」
立ってた。
あの、頑固で優しい人。
目が合った瞬間、笑ってくれた。
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「よう、坊主」
「……村長さん」
ユリウス、泣かん。
強なったな。
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村長さんは私らを見る。
「ええ顔しとる」
「そらもう」
私、胸張る。
「全力で生き切りましたから」
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光の存在が告げる。
「ここにいる者たちは、全て“やり残しを持たない魂”です」
「……へぇ」
「戦い、守り、選び、納得して終えた」
それ、私らのことやな。
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「選択肢は三つ」
突然、光が増える。
一つ目。
「完全なる消滅」
静かに、終わる。
二つ目。
「転生」
別の人生。
別の世界。
記憶は基本、リセット。
三つ目。
「同行」
……ん?
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「同行?」
私が聞き返す。
「魂の旅を、家族単位で続けることです」
「……それ、アリなん?」
「極めて稀です」
でしょうね!!
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エドウィンが、私を見る。
「どうする」
即答。
「同行一択やろ」
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「また一緒におるん?」
ユリウス、目キラッキラ。
「当たり前や」
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光の存在、しばらく黙る。
……判定中か?
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「条件があります」
きた。
「何?」
「次の世界では、平穏は保証されません」
「はいはい」
「再び、戦う可能性もあります」
「知ってる」
「苦難も――」
「セットやろ」
遮る。
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「でもな」
私は三人分の手を握る。
「それでも、家族一緒なら、だいたい何とかなる」
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……長い沈黙。
そして。
「承認します」
光が、柔らかくなる。
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草原が、ゆっくり溶ける。
風が、流れを変える。
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「……エドウィン」
「何だ」
「次も、結婚しよな」
一瞬、固まる。
「……当然だ」
真顔。
ほんま、こういうとこやぞ。
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「ママ!」
ユリウスが手をぎゅっと。
「今度はどこ?」
「さあな」
笑う。
「でも」
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「どこ行っても、
おばちゃんはおばちゃんや」
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光が、弾ける。
意識が、遠のく。




